新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

専門外でも診断義務:TIA→15日後脳梗塞ではないのかな?

2012-04-17 20:57:34 | 医療

最後に、最初の記事に関連しますがこの記事を紹介します

 

非専門医にも診断義務 脳梗塞の前兆発作で福岡地裁判決

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E3E4E2E1818DE3E4E2E6E0E2E3E09191E3E2E2E2;at=ALL
2012/4/17 0:56

 脳梗塞の前兆の発作を医師が見逃し治療を怠った結果、脳梗塞で半身まひなどの後遺症を負ったとして福岡市の70代女性が、救急搬送先の同市の村上華林堂病院側に約8千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は16日までに440万円の支払いを命じた

 消化器などの担当医が対応したため、専門外でも脳梗塞を疑う発作と診断する義務があったかが争われ、増田隆久裁判長は「発作は一般的な医学文献に載っており、非専門医でも診断すべきだった」と判断した。判決は3月27日に言い渡され、確定した。

 判決によると、女性は2009年3月、飲食店での支払時に硬貨を何度も落としたため、店主が脳梗塞を疑って119番通報し搬送されたが、同病院の医師は発作と診断せず、15日後に別の病院で脳梗塞と分かった

 判決は、発作だと診断していても脳梗塞を完全には防げないとしたが、重篤な後遺症の発生を免れた可能性はあったと認定した。

 病院側は「十分な診療をしたと考えているが、紛争の長期化を避けるため控訴しないことにした」とコメントしている。〔共同〕

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15日後に判明した・・・という期間はよくわかりませんが、またいろいろ問題になりそうな話です。

 

脳梗塞と疑い適切な処置をしたか…、専門外であっても重要な病気を見逃してはいけないということになるのでしょうか

 

少し気になるのは恐らく「脳梗塞かもしれない」という触れ込みできた患者さんに、その時点では発作ではないと考えたのであれば一過性脳虚血発作(TIA)のような一過性のものだったのかもしれません。診察時に所見がない。画像検査でも疑えないなど。

たぶん、15日という期間を考えるとTIA→脳梗塞の方が理解しやすいのですけどね。

 

患者さんの家族が半身まひになった状態で半月放っておいたのであれば、「確かにこの時点で脳梗塞だったのだろう」と思いますが、そうでなかったのならこの病院もかわいそうですよね。逆に訴えが「TIAの可能性を考慮し、専門機関への受診を指示しなかった」というのであれば、訴えに関しては納得。僕が担当医だったら、すいませんとしか言いようがない。

 

しかし、15日という期間を考えると、「おかしい。あの時点では麻痺はなかった」としか言えないのですよね。

個人的にはTIAが少しでも疑われた患者さんは、翌日専門家に紹介してますけどね。訴えられたくはないですし、万一の可能性を排除するには翌日に再診するのが症状もわかりやすくなっているかもしれないし(当日呼ぶこともありますよ。可能性が高いという判断なら)

それよりも・・・・

 

この病院が控訴をしない→今後、専門外は診療すらしなくなる

 

という流れにならなければいいのですけど。

 

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医師ユニオン、勤務医の労働実態把握へ:今の医師数では根本を変えなくては崩壊すると思う

2012-04-17 20:10:30 | 医療

さて、もう少し続けます

 

勤務医の労働実態把握し、改善策提言- 医師ユニオンが調査実施要領を発表

 全国医師ユニオン(植山直人代表)は15日、年内にまとめる「勤務医労働実態調査2012」の実施要領を発表した。5月中旬から調査を開始し、10月にも結果を発表する。植山代表は、「単にアンケートの結果発表でなく、労働実態が改善されていなければ、具体的な提言を要請していく」と述べた。各医療団体などにも協力を要請し、全国規模のアンケート調査を目指す。

写真ニュース
左から、本田氏、植山氏、中原氏(15日、東京都内)

 今回の勤務医労働実態調査は、これまでの診療報酬改定などを通じた勤務医の負担軽減策の効果を検証するため、日本医療労働組合連合会(医労連)が5年前に実施した「医師の労働実態調査」をベースに質問項目を作成する。アンケート調査の対象は、3000人程度を目標にしている。

 このアンケート調査の質問には、▽夜間、休日の救急医療や重症者対応の勤務体制▽宿直明け後の勤務の有無▽医事紛争の経験の有無▽精神的なストレスについて▽特定看護師制度に賛成か反対か―などが盛り込まれる見通し。

 全国医師ユニオンは同日に、このアンケート調査の実行委員会を立ち上げた。同実行委員会の世話人には、植山代表の他に、本田宏氏(済生会栗橋病院院長補佐)、中原のり子氏(中原過労死裁判原告)、住江憲勇氏(全国保険医団体連合会会長)らが名を連ねている
 
 
 
 
 
 
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ということで、医師ユニオンに関してはこちら
 
そのサイト内にある「医療現場の労務管理についてhttp://www.shakaihokenroumushi.jp/social/integrated-research-mechanism/pdf/21_honda_iryou.pdf
から、一部抜粋します
 
 
医師の絶対数不足は現場の医師に長時間労働を余儀なくさせることになった。厚生労働省の毎月勤労統計調査平成23 年6月分結果確報の「就業形態別月間労働時間及び出勤日数」によれば,月間総実労働時間は製造業174.9 時間,卸売業小売業175.7 時間,医療福祉が165.8 時間であるが,平成18 年の「第12 回医師の需給に関する検討会資料」によると,病院常勤医の1 週間平均労働時間は70.6 時間で(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/03/s0327-2d.html),月間労働時間(30 日)に換算すると302.6 時間となっている。
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実際に一時期は週に100時間を超える労働時間は当たり前だと思っていましたので、この結果は驚くに値しないのですが、」実際いろいろな労働環境の方がいると思います。同じ職場でも遅くまで働いている人もいれば、早く帰る方もいると思います。
 
仕事に関して「仕事中毒」の方もいれば、人生の中心は家族とレジャーで仕事はそれをするための手段という方もいると思います。
 
ですので、一概に医師であれ、他の職業であれひとくくりにはできないと思います。
 
ちなみに先日m3のサイト内をROMしたところ、この「医師不足」に関しては「そんなに働いていないし、この先も医師不足は来ない」と書いている方もいたりで、医師の中でもいろいろな考えの方がいます。当たり前ですがw
 
ただ、本当に「患者さんの生死」にかかわる診療科に関してはプレッシャーも大きいですし、人も少ないですし、実際時間も足りません。僕も多分忙しく働くことになるでしょう。そのほうが僕の性に合っているかもしれませんがw
 
そうだなぁ。病院に行ってもできるだけ夕食は一緒に食べるとかはするようにしたいなぁ・・・。移動は面倒でも、そのほうが家庭は円満になりそうだし。できればですけどね。
 
 
 
また、引用です。今度は広島国際大学医療経営学部教授の江原明先生の文章です。
 
むすびにかえて
勤務医の疲弊の原因は,朝から夜までの通常の勤務時間が長いことではなく,「当直」と呼ばれる翌日の非番のない夜間の通常勤務をはさんだ32 時間を超える連続勤務であると考えられる。しかし,「当直」勤務に対しては,宿日直勤務の定義を満たさないにもかかわらず,多くの都道府県立病院は労働法規に準じた時間外割増賃金の支給がなされていなかった。医師不足により,法定労働時間の週40 時間では,医療の需要を満たせないとしても,36協定の締結を行い,また,超過勤務に対しては法に基づいた割増賃金を支給することが不可欠である。さらに,医師の疲労は医療事故の増加につながる危険性(江原朗,2006b)もあり,病院における適切な労務管理の徹底は不可欠である。
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ちなみにうちの大学、4月から内科系で当直を一人ということでしたが、やはりバックアップはつけざるを得ないみたいですね。言った通りと言えばそれまでですがw
後輩たちは一応当直回数は減ったといってましたが
 
僕は24時間On call状態になっていれば疲弊していくと思います。もちろん、当直明けにそのまま働くのもしんどいですが。
 
 
 
もちろん、この文章の中にいるような医師ばかりではないと思う。なんか読んでいて、「これって誰だろう」と思ったりするところもありますしね。しかし、そういう医師がある程度の数いるというのも確かな事実です。逆に余裕のある医師がいるのも確かなのだと思います。
 
もし、M3に書いている(一部の)医師がいうようにうまく振り分けたら、現状でもキープできるかもしれません。ついでに言うとM3の記事

Vol.1◆深刻なのは病院勤務医の不足
単なる医学部定員増では問題は解決せず

Vol.2◆なぜ医師数論議だけが表に出るのか
医療提供体制を含めた総合的議論が必要

Vol.3◆医師不足の「診断名」はいかに?
マニフェスト「医師養成数1.5倍は最大値」

Vol.4◆「新構想の医学部新設を」、矢崎氏
「医師の全体総数は今が妥当」、梅村氏

Vol.5◆今の医学教育は「老化」状態
医学教育改革の議論なければ埒明かず

に書かれている内容も、あまり納得がいかないところがあります。

 

基本的に今の体制を維持したいのか、それとも根本的に医療を変えていいのか。国民はどういう体制を望んでいるのか

 

今の医師数で医療を成り立たせるのであれば、「医師の集中運用」をして、「交通網を整備」するほかないと思う。

 

基本的にある程度の病院にそれなりの医師がいれば対応不能ということはないかもしれないが、患者の数に対して医師が少なければ「ランチェスターの法則」のようなもので・・・医師の疲弊は加速する。

 

今、救急病院の医師数が少なくて、多くの患者さんを一般的に支えている病院の医師数が足りている(ようには僕には見えないがw)のであれば、医師を確かに集中運用するのが良いだろう。その代り近くの病院の医師数が少なくなったり、近くの病院で救急医療を行わなくなったとしても、それは仕方がないことだと思ってもらうしかない

 

今みたいに近くの病院でもとりあえず救急医療、初期治療でも引き受けてもらいたいと思っているのであれば今の医師数では足りないのではないだろうか

 

僕が計画的に医療を作るなら、大都市(東京とかは触らなくてもいいかな?)にある程度医師や病院機能を集中させて、その近傍にヘリポート。そこから救急車がいつでも搬送できる体制、そして2次救急の病院にもある程度の医師。一定以上の人口密度がない場合や、人口自体が少ない地域にある病院はすべて統廃合・・・かな。

 

そのくらいやらなければ、今言っていることなんてできはしないと思う。

近くに病院がないと不安だというならば、今の医師数では結局のところ各個撃破されてすべて壊滅するだけだと思うけど。もしくは本当に東京周辺など、病院が集中しているところだけ何とか生き残る。
 
そんな気がする。
 
 
 

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専門外患者への対応:どの対応も正しい、背景にある考えが違うだけ

2012-04-17 19:36:23 | 医療

こんばんは

 

今日は昨日までの疲れからか、何をしてたのだろうと思うくらいの一日でした。そうか朝一番に、またヘルニアの患者さんが出たんだっけ?

そのあと午後からうちの大学の学生に少し話をしたような・・・。疲れているなぁw

 

こういう時には補中益気湯・・・・

 

ないし・・・

 

ちなみに何を話していたかと言えば、僕がともかく言いたかったのは

場所が悪いとか、条件が悪いから学べないということはない。そこで学べるものは確実にある。学ぶことができるかできないかは、その人次第である

ということだけ。

 

ちなみに持ち時間30分にもかかわらず、45分しゃべっていた人(汗

(質疑応答で伸びたというのもあるのですが・・・・)

少なくとも僕の話から何かを得ることができる人もいるだろうと思っています。

 

そこで話した内容にも通じるところがありますが、まずはこちらの記事を紹介します

 

 専門外の疾患の患者が来院した際、約2割の医師が、患者の経済的な負担などを考慮し、診察の前に専門の病院を教えていることが、メドピア(東京都港区)が行った調査で分かった。同調査の回答で最も多かったのは、診察はしても、無用な検査をせずに専門の病院へ紹介状を書く医師(36.0%)だった。

 メドピアは3月9-15日、膠原病などの専門的な疾患だったり、標榜する科目からかけ離れていたりするなど、専門外の患者への対応について、同社の運営する医師限定のコミュニティーサイト「MedPeer」の会員を対象に、インターネット調査を実施。2649件の有効回答を得た。

 それによると、「無用な検査はせずに、専門の病院へ紹介状を書く」が36.0 %で最も多く、以下は「自院でできるだけの検査をして、その結果を添えて専門の病院へ紹介する」(30.1%)、「患者の経済的負担も考えて、自院での診察前に専門の病院を教える」(17.9%)、「可能な限りの精査・加療をする」(9.1%)などの順だった。

 また、自由に意見を求めたところ、診察前に専門の病院を教えると答えた医師からは、「初診料を含めて負担になるので、受診前に情報を与える。それでも希望される場合は診療する」「自分で診て診断できなかったら医療費の無駄」といった金銭的な理由のほか、「自分の専門領域の患者を専門外の先生から紹介される場合を考えると、そのまますぐに紹介していただいた方が良い」などの意見があった。
 無用な検査はせずに紹介状を書くと答えた医師からは、「紹介先でも再検査するなら、何もしない方が患者のため」「検査も専門病院にお願いするべき。場合によっては二度手間や、手遅れになることもある」といった声が出た。

 一方、自院で検査した結果を添えて専門の病院に紹介すると答えた医師からは、「何でもかんでも専門医に送り、専門医を疲弊させることは避けるべき」「専門医の手を少しでも煩わせない配慮をした上で、紹介状を書くのが礼儀」などと専門医の負担について指摘があった。

 可能な限り自院で対応すると答えた医師からは、「当院は都会から離れた地域。できる範囲を説明して(患者が)納得できれば、できる範囲でしている」「田舎の総合病院なので、できるだけ自分のところでしている。特殊なケースは大学病院へ送ることもある」などと、地域性を理由に挙げる意見などが寄せられた。
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これはどれも正しいのだと思います
 
患者によりけり。
 
一つは患者さんの考え方。先日、医師会かどこかの報告書にもありましたが、受診したにもかかわらず紹介状を渡されて診察もされなかったという訴えが出ることもあります。これは医師側としては「無駄な検査をして、お金や時間を無駄にするよりはいいだろう」と思ったのだと思います。
 
逆にこのような処置をされて、ありがとうという方もいると思います。
 
まぁ、説明しているかいないかが大きいのだと思いますが。
 
全くの専門外でもある程度の診療はできるというのはあります。ただ、初期治療だけを行って専門家にお願いした時に初期治療のために検査結果が良くわからなくなる可能性もあります。ですので検査だけならともかく、紹介をするなら治療はしないかもしれません。
 
もしくは「これはほっといたら死ぬな」と思った時に死なないための治療をしながら救急部に…というのは1回しかないなw
何で単科の当直に低体温+ショックを送っているのかわからないが、あれも当直から頼まれて僕が行ったしなぁw
 
いずれにしてもどの対応が正しいとか、間違っているということはないのだと思います。あえて言うならどの対応も正しい。
 
その背後にある「考え方が違う」だけ
 
だから患者さんがその考え方に納得できるのであれば、どの対応でも正しいのだと思う。
 

皆様はどう思いますか?
 
 

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