こんばんは
最近はどんどん暖かくなって、春らしい気候になってきましたね。今日はうちの職場から大学の後輩がいろいろ頑張っているのが見えましたが、これも春の風物詩というところでしょうか(笑
さて、今日はまず紹介から。
2012. 4. 16
大半の医師が臨床研修後4~6年で専門医を取得
久保田文=日経メディカル
日本専門医制評価・認定機構(専認機構、理事長は池田康夫氏)は4月10日、学会が認定する専門医の都道府県別の分布などを調べた調査研究の報告書を厚生労働省に提出した。
専認機構は、国内の専門医を基本診療領域とサブスペシャリティ領域の2段階の構造にし、基本診療領域のいずれかの専門医資格を取得した上で、必要に応じてサブスペシャリティ領域の専門医資格を取得する仕組みにする方針。今のところ基本診療領域には、日本内科学会が認定する総合内科専門医、日本外科学会の外科専門医、日本小児科学会の小児科専門医など18領域が決定している。
調査研究では、これら18領域の専門医数、都道府県別の分布を調べた。その結果、16領域で専門医の分布が、東京都、大阪府、神奈川県の順に多いことが判明。例えば、外科専門医は東京都では3164人、大阪府では1761人、神奈川県では1256人となった。
また、残りの2領域についても、放射線専門医は、東京都、大阪府、福岡県、神奈川県の順で、リハビリテーション専門医は東京都、神奈川県、大阪府の順で多く、どの基本診療領域でも専門医が大都市に集中する現状が浮き彫りになった。
さらに専認機構では、2004年の新医師臨床研修制度導入後に認定された各領域の専門医が、専門医取得までにかかった年数についても調査。18領域のうち、データなどがなかった小児科専門医、臨床検査専門医、精神科専門医を除く15領域について調べた。その結果、麻酔科専門医を除く14領域では、臨床研修の修了後4~6年で専門医を取得していることが判明。麻酔科専門医では5~9年と、専門医取得までに時間を要した医師が一部いることが分かった。
同調査研究は2011年度に、厚生労働省の「各診療領域における専門医に関する調査研究」として専認機構が実施したもの。
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多分、現時点で内科学会に関しては基本領域は「内科認定医」であって、総合内科専門医ではないのだけど。もし、今後総合内科専門医を基本領域にするのであれば、かなり大変だろうな。内科に関しては階段が3つできることになるから。
それとも、認定医を止めてしまう?そうすると総合内科専門医を今持っている方々(僕もだけど)が、結構苦労してとっているにもかかわらず・・・ってなりますしね。
だから、多分内科の基本領域は内科認定医のままだと思いますが。どうするつもりなんですかね(笑
まぁ、それはさておき基本領域の医師が大都市に多いというのは人口密度を考えると当たり前のような気がするので、それ以上もそれ以下もないですね。ただ、各専門医取得が医師としては6~8年目に取得している人が多いことを考えると、今後医師を増やそうと思っても大学6年+6~8年は必要なわけです。
これもいまさらいうことではないかもしれませんが。
ということで、この話から医師不足の話に移っていきます。
Twitterで東京大学の上教授が、
一部のお医者さんとの議論で思うこと。「不勉強を棚に上げ、感情的な反論を繰り返す」。特に医師不足について。こんな連中が生き残れるのは、医師が少なく競争がないからだと思う。数が増えれば淘汰される。情けない
と書いていらっしゃるけれども、医師が足りないというのは現場にいる医師は実感していると思います(Twitterを読み続けていると、いろいろなことがあるようですが。福島で何が起こっているのだろう。・・?)。
現場にいる医師というのは「第一線(病院勤務医であろうと開業医であろうと)」で働くゆえに様々な知識が日々更新されていくことを知っています。
それをすべて補うには情報があまりにも多くなりすぎました。
昔の医療では知りえない情報をもとに細分化して治療を行う。そのことによる労力の増大を認識している第一線の医師は恐らく「医師不足」を認識しているのではないだろうか…と思う。その医師が露出してくる余裕はほとんどないんですけどね。僕は今大学病院から外れているので時間がありますが、戻ればまた忙しくなるでしょうし。昔のように夜中の2時に帰ってもBlogを書くような元気はないかもしれませんw
また・・・「専門医」という肩書があったからと言って、物をよく知っているとは限らない。日本の大学入試と同じで一度取得すると維持するのは簡単なため、取得した時期に最新の知識があったことを保証はしていても、今最新の知識があることを保証しているわけではない。
専門医という肩書でも「おぃおぃ」という人もいる。それは事実である。もちろん、多くの医師は技能や知識をアップデートしているわけですが。
だから僕は最新の知識をアップデートし続けていきたいと思う。ただ、それを行うには幅が広くなりすぎている。
自分の診療する範囲をある程度決めておかなくては、患者さんに貢献することが難しくなってきている。
わかりますでしょうか。
仮に総合内科専門医という肩書があっても、例えば僕は高血圧のガイドラインは2009年のものまでしか知りません。基本的なところは同じかもしれませんが、これから血液臨床を中心にやっていくのであればアップデートしていくのは大変です。知識はあっても実際に患者さんを見る機会が少なければ「実学」にはなりません。エコーの機械が新しくなっていって「○○」というものを測定することで『××』も知ることができるようになった・・・としても、その知識がなければ機械の使い方、測り方を知らなければ患者さんのためにはなりません。
これだけ知識が広く、深くなっていったためそれをすべて行うというのはかなり難しいのです。もちろん、自治医大の医師や自衛隊医官はそれを求められているところもあるのでしょう。しかし、当たり前ですが限界があります。その限界を自分で設定して、ここまでを守備範囲と決めてしまえば・・・そこに自由を得ることができるかもしれません。
家庭医(開業医)の先生やある程度の中核病院の医師がカバーする範囲、専門病院・大学病院がカバーする範囲をある程度決めておかなくては「総合医だから何でもできる」という幻想を持っていては(たぶん、国民全体の期待でしょうけど)いけない。
説明が難しいのですが
「総合医の先生はここまで診てくれればいい。もしくはRare caseであっても専門家のところに紹介できる(振り分けができる)。専門医に紹介するまで最善の方法で紹介する(救急対応中なら、初期治療をしながら専門家へ)」
「専門医はその深い知識・技能で専門分野の対応を行う」
でないと対応が不可能。
昨日紹介した専門外でも診断義務:TIA→15日後脳梗塞ではないのかな?という記事
何でもできるようになるというのはかなり大変です。それほど知識が増えたということを認識しなくてはならない
ともかく、広く深くなりすぎています。僕は今は血液臨床の内容よりは一般的に「診療所」で見るような疾患に関しての知識を深めています。患者さん集団がどのあたりにあるかというのを考えて、その集団に対して貢献できるように知識を持っています。
そういう風にしていかなくてはいけないのですが、それを全面的に行うには医師は足りない。つまり、消化器内科の医師が消化器内科以外も診るような形の状況では「最新の知識」で対応などというのは無理なのである。
まぁ、上の記事は多分TIA→脳梗塞であり、TIAであれば2009年には治療の義務はないのですけどね(僕は最近は治療しなくてはいけないというのは初めて知りました。脳梗塞につながるから予防をして紹介くらいに思っていましたが、初期治療が必要なのか・・・って。)
全ての領域の最新の情報を追い続けるのは、ほとんどの医師には不可能だと思います。少なくとも僕は無理です。だから自分で限界線、自分が必要な領域に絞って知識や技能を集中して持っているわけです
それゆえ、医師不足は必ず発生するといいたい。僕は国民の事だけを考えるなら、医師不足を認めて動いてほしいと思う。まぁ、国民の事だけを考えないなら、今までも書いてきたように犠牲をできるだけ少なくする考え方でやるしかないと思っていますが・・・。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。