新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

再生医療の可能性;新たな可能性が増えるのはいいことです

2012-04-18 20:49:41 | 医療

さて、つづけます

 毛の根元にある2種類の幹細胞を採取して培養し、合わせて移植する方法で毛髪をほぼ完全に再生する技術が開発された。東京理科大と昭和大、北里大の研究チームが17日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。マウスの実験で移植した毛が周期的に生え替わったほか、男性型脱毛症患者の幹細胞などをマウス皮下に移植し、毛を生やすことにも成功した。
 男性型脱毛症は現在、毛が残った頭皮を一部切り取り、小分けにして毛がない部分に移植する治療が行われている。新技術と組み合わせれば、毛の本数を増やし、密度を高めて頭髪全体を再生できると期待される。
 東京理科大の辻孝教授は大塚化学の子会社「オーガンテクノロジーズ」(東京都千代田区)、男性型脱毛症治療の第一人者である北里大の佐藤明男特任教授らと臨床応用を目指している。 
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 生まれつき重い心臓病を持つ子どもへの心臓の幹細胞移植に、岡山大学病院新医療研究開発センターの王英正教授(心筋再生医学)らのグループが成功した。

 既に6人で心臓機能の向上を確認、5月にも厚生労働省に高度医療の承認を求めて申請する。子どもの心臓移植が進まない中、新しい治療法として注目される。

 全身へ血液を送る左心室が小さい「左心低形成症候群」が対象で、患者の心臓から幹細胞を取り出して培養後、カテーテルで戻して心筋を増強する。自分の細胞を使うため、心臓移植のような拒絶反応もなく、手術の負担も軽いとされる。

 王教授らは、2010~11年、中国地方在住の女児(当時1歳)に、18歳未満の子どもとしては初めて治療を実施、11年5月の検査で、心臓のポンプ機能が約10%アップしたことを確認した。

 その後、同じ病気の子ども6人(5か月~3歳10か月)に実施。このうち、手術後3か月が経過した5人への超音波検査で、血液を送り出す心臓のポンプ機能が最大23%向上し、心筋が増えたことを確認した。

 王教授らは学内の倫理委員会に諮った後、7人目の結果が出る5月中旬にも厚労省に申請。認められ次第、2年かけて乳幼児40人に幹細胞移植を行う計画だ。
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 有毒なアンモニアを生まれつき肝臓で分解できない重い肝臓病の新生児に対して、さまざまな細胞に成長できる胚性幹細胞(ES細胞)を使って治療する臨床研究を、国立成育医療研究センターの梅沢明弘再生医療センター長らが計画していることが18日、分かった。

 動物実験で安全性や効果を確かめ、数年後に治療を始めたいとしている。実施されれば、ES細胞を使った国内初の臨床研究になるとみられる。

 計画中の治療は、ES細胞からつくった肝臓の細胞をへそから注入するもので、肝臓移植ができるようになるまでの間、症状の悪化を防ぐのが目的だ。

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どの治療も臨床を通じて多くの患者さんに貢献していくのでしょうね。
 
素晴らしい話だと思います。ES細胞での肝臓の補充、心臓幹細胞移植は「生死」にかかわる疾患の患者さん・家族に将来の可能性を広げるものです。こういう発見が次々と行われていけばいいですよね。
 

ただし、臨床に直結する研究(Translatinal research)は医師が患者さんを実際に見て考えて出てくるのだと思っています。実際の患者さんたちを知っているから、研究をして患者さんの治療に直結していくのだと思います。
 
ただ、今の医師数では今後どうなっていくのか。昨日も東大や京大など主要な大学の論文に関して記事が出ていましたよね。

論文引用数、東大は世界16位 京大34位 阪大44位

 米国の学術情報サービス会社トムソン・ロイターは17日、論文の引用回数をもとにした世界の研究機関ランキングを発表した。4899機関中、東京大は16位。昨年の13位、一昨年の11位からさらに後退した。

 調査は2001年以降の引用数を集計した。ほかに100位以内に入ったのは京都大(34位)、大阪大(44位)、科学技術振興機構(61位)、東北大(69位)。上位となった分野別では、材料科学=東北大3位▽物理学=東大3位▽化学=京大4位▽生物学・生化学=東大3位▽免疫学=阪大4位などだった。

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今後どうなっていくのでしょうね。

 

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基本領域の専門医が大都市に集中:この話を聞き医師不足を思う

2012-04-18 20:26:37 | 医療

こんばんは

 

最近はどんどん暖かくなって、春らしい気候になってきましたね。今日はうちの職場から大学の後輩がいろいろ頑張っているのが見えましたが、これも春の風物詩というところでしょうか(笑

 

さて、今日はまず紹介から。

 

2012. 4. 16

大半の医師が臨床研修後4~6年で専門医を取得

基本診療領域の専門医が大都市に集中、専認機構調査

久保田文=日経メディカル

 日本専門医制評価・認定機構(専認機構、理事長は池田康夫氏)は4月10日、学会が認定する専門医の都道府県別の分布などを調べた調査研究の報告書を厚生労働省に提出した。

 専認機構は、国内の専門医を基本診療領域とサブスペシャリティ領域の2段階の構造にし、基本診療領域のいずれかの専門医資格を取得した上で、必要に応じてサブスペシャリティ領域の専門医資格を取得する仕組みにする方針。今のところ基本診療領域には、日本内科学会が認定する総合内科専門医、日本外科学会の外科専門医、日本小児科学会の小児科専門医など18領域が決定している。

 調査研究では、これら18領域の専門医数、都道府県別の分布を調べた。その結果、16領域で専門医の分布が、東京都、大阪府、神奈川県の順に多いことが判明。例えば、外科専門医は東京都では3164人、大阪府では1761人、神奈川県では1256人となった。

 また、残りの2領域についても、放射線専門医は、東京都、大阪府、福岡県、神奈川県の順で、リハビリテーション専門医は東京都、神奈川県、大阪府の順で多く、どの基本診療領域でも専門医が大都市に集中する現状が浮き彫りになった。

 さらに専認機構では、2004年の新医師臨床研修制度導入後に認定された各領域の専門医が、専門医取得までにかかった年数についても調査。18領域のうち、データなどがなかった小児科専門医、臨床検査専門医、精神科専門医を除く15領域について調べた。その結果、麻酔科専門医を除く14領域では、臨床研修の修了後4~6年で専門医を取得していることが判明。麻酔科専門医では5~9年と、専門医取得までに時間を要した医師が一部いることが分かった。

 同調査研究は2011年度に、厚生労働省の「各診療領域における専門医に関する調査研究」として専認機構が実施したもの。

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多分、現時点で内科学会に関しては基本領域は「内科認定医」であって、総合内科専門医ではないのだけど。もし、今後総合内科専門医を基本領域にするのであれば、かなり大変だろうな。内科に関しては階段が3つできることになるから

 

それとも、認定医を止めてしまう?そうすると総合内科専門医を今持っている方々(僕もだけど)が、結構苦労してとっているにもかかわらず・・・ってなりますしね

 

だから、多分内科の基本領域は内科認定医のままだと思いますが。どうするつもりなんですかね(笑

 

まぁ、それはさておき基本領域の医師が大都市に多いというのは人口密度を考えると当たり前のような気がするので、それ以上もそれ以下もないですね。ただ、各専門医取得が医師としては6~8年目に取得している人が多いことを考えると、今後医師を増やそうと思っても大学6年+6~8年は必要なわけです。

これもいまさらいうことではないかもしれませんが。

ということで、この話から医師不足の話に移っていきます。

 

 

Twitterで東京大学の上教授が、

一部のお医者さんとの議論で思うこと。「不勉強を棚に上げ、感情的な反論を繰り返す」。特に医師不足について。こんな連中が生き残れるのは、医師が少なく競争がないからだと思う。数が増えれば淘汰される。情けない

と書いていらっしゃるけれども、医師が足りないというのは現場にいる医師は実感していると思います(Twitterを読み続けていると、いろいろなことがあるようですが。福島で何が起こっているのだろう。・・?)。

 

現場にいる医師というのは「第一線(病院勤務医であろうと開業医であろうと)」で働くゆえに様々な知識が日々更新されていくことを知っています

それをすべて補うには情報があまりにも多くなりすぎました。

 

昔の医療では知りえない情報をもとに細分化して治療を行う。そのことによる労力の増大を認識している第一線の医師は恐らく「医師不足」を認識しているのではないだろうか…と思う。その医師が露出してくる余裕はほとんどないんですけどね。僕は今大学病院から外れているので時間がありますが、戻ればまた忙しくなるでしょうし。昔のように夜中の2時に帰ってもBlogを書くような元気はないかもしれませんw

 

また・・・「専門医」という肩書があったからと言って、物をよく知っているとは限らない。日本の大学入試と同じで一度取得すると維持するのは簡単なため、取得した時期に最新の知識があったことを保証はしていても、今最新の知識があることを保証しているわけではない

専門医という肩書でも「おぃおぃ」という人もいる。それは事実である。もちろん、多くの医師は技能や知識をアップデートしているわけですが。

 

だから僕は最新の知識をアップデートし続けていきたいと思う。ただ、それを行うには幅が広くなりすぎている。

 

自分の診療する範囲をある程度決めておかなくては、患者さんに貢献することが難しくなってきている

 

わかりますでしょうか。

 

仮に総合内科専門医という肩書があっても、例えば僕は高血圧のガイドラインは2009年のものまでしか知りません。基本的なところは同じかもしれませんが、これから血液臨床を中心にやっていくのであればアップデートしていくのは大変です。知識はあっても実際に患者さんを見る機会が少なければ「実学」にはなりません。エコーの機械が新しくなっていって「○○」というものを測定することで『××』も知ることができるようになった・・・としても、その知識がなければ機械の使い方、測り方を知らなければ患者さんのためにはなりません。

 

これだけ知識が広く、深くなっていったためそれをすべて行うというのはかなり難しいのです。もちろん、自治医大の医師や自衛隊医官はそれを求められているところもあるのでしょう。しかし、当たり前ですが限界があります。その限界を自分で設定して、ここまでを守備範囲と決めてしまえば・・・そこに自由を得ることができるかもしれません

 

家庭医(開業医)の先生やある程度の中核病院の医師がカバーする範囲、専門病院・大学病院がカバーする範囲をある程度決めておかなくては「総合医だから何でもできる」という幻想を持っていては(たぶん、国民全体の期待でしょうけど)いけない。

説明が難しいのですが

「総合医の先生はここまで診てくれればいい。もしくはRare caseであっても専門家のところに紹介できる(振り分けができる)。専門医に紹介するまで最善の方法で紹介する(救急対応中なら、初期治療をしながら専門家へ)」

「専門医はその深い知識・技能で専門分野の対応を行う」

でないと対応が不可能。

 

昨日紹介した専門外でも診断義務:TIA→15日後脳梗塞ではないのかな?という記事

何でもできるようになるというのはかなり大変です。それほど知識が増えたということを認識しなくてはならない

 

 

ともかく、広く深くなりすぎています。僕は今は血液臨床の内容よりは一般的に「診療所」で見るような疾患に関しての知識を深めています。患者さん集団がどのあたりにあるかというのを考えて、その集団に対して貢献できるように知識を持っています。

そういう風にしていかなくてはいけないのですが、それを全面的に行うには医師は足りない。つまり、消化器内科の医師が消化器内科以外も診るような形の状況では「最新の知識」で対応などというのは無理なのである。

まぁ、上の記事は多分TIA→脳梗塞であり、TIAであれば2009年には治療の義務はないのですけどね(僕は最近は治療しなくてはいけないというのは初めて知りました。脳梗塞につながるから予防をして紹介くらいに思っていましたが、初期治療が必要なのか・・・って。)

全ての領域の最新の情報を追い続けるのは、ほとんどの医師には不可能だと思います。少なくとも僕は無理です。だから自分で限界線、自分が必要な領域に絞って知識や技能を集中して持っているわけです

 

それゆえ、医師不足は必ず発生するといいたい。僕は国民の事だけを考えるなら、医師不足を認めて動いてほしいと思う。まぁ、国民の事だけを考えないなら、今までも書いてきたように犠牲をできるだけ少なくする考え方でやるしかないと思っていますが・・・。

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神奈川県、医学部新設へ

2012-04-18 05:11:24 | 医療

おはようございます

 

少し気になる記事があったので紹介します

 

神奈川知事、医学部新設を検討 臨海部特区に設置

http://www.asahi.com/edu/news/TKY201204170409.html

 神奈川県の黒岩祐治知事は17日、大学医学部新設の検討を始めると表明した。横浜・川崎市臨海部の「ライフイノベーション国際戦略総合特区」につくる予定。医学部は1981年以来、新設されていない。

 文部科学省は医学部新設を認めていないが、特区を活用し、「国際的な医療人材の育成」の拠点として現存する医学部と差別化をはかる。外国人医師の講義や、付属病院への外国の患者受け入れも検討している。同県の人口あたりの医師数は全国39位。医師不足対策として打ち出した。

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差別化も面白いですが、千葉・神奈川・埼玉の東京周辺の県(茨城も)は医学部新設は必要だと思います

 

その動きをポリオ不活化ワクチンに続いて、神奈川県の黒岩知事が動いているのが面白いですね。どうなるのでしょうか。

頑張ってほしいところです。

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