新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

がん幹細胞を直接たたく道が開けるか:未来に期待します

2012-04-03 21:29:46 | 医療

さて、軽くいくつかの記事を紹介します。

 

それにしても・・・久々に引用せずに記事を書いたなぁ。昔は結構、自分の言葉で書いていたんですけどね。

では、こちらの記事を紹介します。

 がんのもととなり、体内でがん細胞をつくり続ける「がん幹細胞」は、生き残るのに必要なタンパク質を自ら分泌していることを、東京大医科学研究所の後藤典子准教授(がん生物学)らのチームが見つけ、2日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した。この仕組みを妨害すれば、がんの再発防止につながる可能性があるという。

 現在のがん治療は、投薬や放射線などによって、がん細胞を死滅させるのが主流。しかし、がん幹細胞が生き残れば、がん細胞が再び増殖することも多い。

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がん幹細胞は10年くらい前から注目されている話です。白血病幹細胞というのもあります。というか、ここからすべては始まったw

 

要はこいつを一つ植えたら、白血病になってしまう「おおもと」のやつです。一般的に幹細胞というのは、増殖速度はそれほど速くないです。まぁ、子孫がいっぱいいる間は眠っていて、「眠っている」間は抗癌剤の影響は受けにくいです。抗癌剤は細胞が増えているときに作用したりするので・・・。白血病の増殖速度は尋常ではありませんが、それだけ抗癌剤が効きやすいということです。

 

白血病幹細胞も最初のうちは頑張って増えますが、そのうち

「まぁ、いっぱい子孫ができたから、任せておくか」

と眠ってしまいます。こうなるとなかなか死んでくれません。

 

そしてこのおおもとのやつは、すべてをもう一度作り直す力があります

 

平たく言うとがん幹細胞は「赤ちゃん」です。赤ちゃんの可能性は無限で、どんな細胞にもなれます。

 

しかし、僕のような医師が今から「弁護士になるんだ」と言ってもなかなか難しいように(無理ではないです。そういう先生もいらっしゃいますし)、ある程度発育すると未来が制限されてきます。そんなイメージです。

 

こいつはそういうことで多分化能(いろいろなものになれる能力)と自己複製能を持っているわけですが、その特徴がわかれば「狙い撃ちができるかもしれない」ということなんです。

 

この記事だけだとよくわからないので、こちらも紹介します。

がん幹細胞維持の仕組み解明=根治法開発に道―東大医科研など

時事通信 4月3日(火)5時10分配信

 通常の細胞と同様に、がん細胞にも元となる「がん幹細胞」があるが、東京大医科学研究所などの研究チームは2日までに、このがん幹細胞が体内で増殖能力を維持する仕組みを解明し、米科学アカデミー紀要電子版に発表した。抗がん剤などでがん細胞を死滅させても、残った幹細胞が増殖してがんを再発させる例も多く、研究成果はがんの根治療法開発につながると期待される。
 東大医科研の後藤典子准教授と日野原邦彦特任助教らの研究チームは、患者から摘出した乳がんの幹細胞を培養し、どのような分子が増殖能力を左右するかを調べた。その結果、細胞膜にある受容体に結合するたんぱく質「HRG」が増殖能力に大きな役割を果たすことが分かった
 さらに、HRGが結合した後の細胞内の反応を調べると、酵素の活性化を通じて最終的に炎症や細胞増殖に関与する「NFκB」と呼ばれるたんぱく質を働かせ、これが幹細胞に増殖能力を維持させていた。 
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多少専門用語が入ってきましたが、いい話ですよね。すべてのがん幹細胞にHRGというたんぱく質があるかどうかはわかりませんが、調べたらあるかもしれません。全く同じでなくても似ているものはあると思います。機能が同じとか。
 
そうやって医療って発展していくのですよね。
 
僕もそういうところに早く携わりたいと思っています。
 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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TPPと医療について考える

2012-04-03 21:23:34 | 医療

こんばんは

 

今日はすごい風ですね。職場を出るタイミングでは雨が降っていなかったので、今のうちと思って急いで帰ってきたら、雨が再開傘をさした瞬間に傘が折れました(汗

 

一瞬びっくりしましたが、仕方がないのでずぶぬれで帰ってきました。

 

さて、本日は先日のTPPの勉強会で伺った話から、少し考えてみたいと思っています。

 

先日のTPPの話で、いろいろ勉強させていただいたのですが一言で書いてしまうと

TPPの狙いはアメリカの陰謀というよりは、「アメリカの一部の大企業(1%のグループ)」が「自分たちの利益を上げるため」に経済をボーダレスにしたいということだということです

多国籍企業といわれる大企業が富を集中させていますが、彼らがさらに儲けるためには国境と取っ払ってしまうことが最も良いアメリカ国内だけではなく、できるだけ広い範囲で同じような制度で経済が動けば多国籍企業は活動をしやすくなる。アメリカの・・・というよりは多国籍企業によって首根っこを押さえられている政治家(まぁ、どこの国でもそういう部分はあるのでしょう)が…という話でした。

簡単に書きすぎですかね?要点はこういうことだと思うのですが。

その過程で一番恐れていたのは「混合診療の導入」です。これは僕も今までに書きましたが、混合診療が導入されれば「都心部に病院が集まり、医療を受けられない人が出てくる可能性」「儲けが多い自由診療部分に医療の供給が集中する可能性」「それらを含めてお金持ちは医療を受けることができるが、裕福でない場合は医療が受けられなくなり、最終的に国民皆保険が崩壊」という話です。

 

僕も全くの同感で、それ故に混合診療には反対であるとしてきました。しかし、混合診療さえ入ってこなければ、どうにかなるのではないかと思っていました。今もいろいろ考えているのですけど。

 

この勉強会で色平先生や堤さんは「すぐに混合診療は行わないかもしれないが、それが絶対とは言い切れない。TPPが始まったら世界が注目する日本の国民皆保険が崩壊したといわれたら、アメリカも困るだろう。制度には手を加えなくても、大企業としてどうにかしたいのは薬価である。新しい機器の値段である。もし、公的保険がそのままで高価な薬剤が入ってくれば、最終的に医療は崩壊する」というお話をされました。

 

僕なりの解釈(+メールのやり取りでいろいろご教授いただいて)で書きますと、上記のことが発生しますと

 

1、「医療費」は大きく変わらないのに、薬価などが莫大に膨れ上がる。そうすると削れるのは人件費などしかなくなる。

2、そうすると医療費を上げる必要が出てくるが、公的保険は保てなくなり、最終的には+αをするための保険が必要になったり、混合診療解禁という形になってしまう

 

ということなのだろうと思います。

 

確かに制度をいじくらなくても、国民皆保険が壊れる可能性はある。そう考えます。

 

ちなみに営利企業が「利益だけ」を追い求め、「人の不幸を食い物」にして、発展しているのが今のアメリカだと思います。少なくとも医療分野に関しては、この会でも「シッコ(札幌でみました)」の話なども出ましたが・・・医者と患者の間に保険会社が入ってきて、保険会社のためにまともな診療が受けられなかったり、破産したりする人がいます

 

堤さんがご自身のお友達の話をされていましたが、職場で倒れたものの検査をしても何もなかったために医療費を保険会社は払わず(理屈は、検査で陰性だったのだから、そもそも病院に行く必要はなかった。にもかかわらず病院に行ったのだから、保険会社としてフォローする必要はない)、100万円の医療費が必要だったという話、アメリカの保険に加入した時に「医師の指定」があったことなどを話されていました。

 

ただ、僕はこうも思うのです。営利企業が利益を追い求めるのはある意味自然である。ただ、それが度を過ぎているのに問題がある。本来新しい薬や新しい機器が、もしかすると新しい保険が日本に入ってくることで何かが良くなる部分もある。そこにアメリカの企業が「人のために尽くす」過程のなかで、人が幸福になっていく過程の中で中間マージンを取って、それをもとにさらに人のために尽くすという形であれば、全く問題はないのですけどね。

全ての人を食い物にしてしまっては…そのあと企業がどうやって発展するのやら・・と思っています。企業は人を幸せにする過程で、人が儲けるのを手伝う過程で儲けなくては、自分の足を食べながら生きているようなもの

人は自分だけでは当然生きられず、その集団である企業も同じ。ほとんどの人がモノを変えない状況になったら、大量生産した製品を誰が買うのやら(笑

 

今の状況を突き詰めていくと笑わざるに入られません。

僕は全員が納得できる何かがあるのではないかと本当に思っています。日本の国民皆保険が維持でき、新薬や新しい機器が入り、アメリカ側としては新しい市場として日本で「ある程度の利益」を出すことが可能になる。それが日本側も同様に、アメリカに車をはじめ様々なものを売り込み、その製品でアメリカの人が利益を得る。

 

本当に新たな市場が欲しい。それによって利益を得たい

 

というのが目的で、それ以上でなければお互いのメリットも出そうな気がします。ただ、今のままではTPPが良いとは言えません

 

ただ、TPPに参加するすべての人にメリットがあるような、そういう制度にならなくては「アメリカだけ」とか「アメリカと日本だけ」「アメリカ、日本、オーストラリアだけ」が勝つとかではなく、参加する限りすべての国と地域、そこに住む人にメリットがなくてはいけない。

それができなくては、それを考えようとしなければ、政治家が政治家をしている必要はないと思う。

 

TPPの延長は「地球の統一」ということになるのでしょう。本当にそういうことを考えるのであれば、すべての国と人を幸せにする方法を考えるつもりでやってほしいものです。

 

僕は知恵、知識、経験が足りないため、医療に絞っていろいろ考えてみようと思います。

 

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