風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

初めての夏の陽強し目開けぬ子 【季語:夏】

2019年06月08日 | 俳句:夏 時候
晴れ上がった日
朝の早いうちに
子供を連れて散歩に出かけました

太陽の日が随分と眩しく感じられたので
乳母車に日よけをつけて
準備万端で出かけました

乳母車を押していると
心地よかったのでしょうか
子供たちは直ぐに眠ってしまいました

それからしばらくは静かだったのですが
目を覚ますと退屈したのでしょうか
身をよじって泣き騒いでいます

しかたが無いので
抱き上げると
初めて迎える夏の陽射しが
強すぎたのでしょう
顔に日が当たっている間は
ずっと目を閉じていました

仏にも初夏の風にも千手あり 【季語:初夏】

2019年06月01日 | 俳句:夏 時候
初夏の風が頬に触りました
まるで柔らかないくつもの手が
優しく撫でて行くようでした

そのときには確かに
風の中にたくさんの手が
見える気がしていました

まるで千手観音に
たくさんの手があるように

風の中の手は僕に触れては
何か言葉を授けていき

けれど僕の耳はそれを聞き取るには
あまりにも無力

ただ柔らかく撫でつけられながら
風の中を歩いて行くだけでした

鼻たらし逃げる子速し初夏の空 【季語:初夏】

2019年05月25日 | 俳句:夏 時候
風邪の割には元気一杯の子供たちをつれて
公園へと遊びに行きました

乳母車から解き放つと
蜘蛛の子を散らすように駆け出す二人
各々の遊びたいところに走って行くので
どちらを追いかけようか迷ってしまいます

まだ風邪が治っていないせいもあり
くしゃみをすると勢い余って
鼻水も出てくるので
それを拭いてやろうと追いかけると

遊びだと思っているのか
面白がって駆け出す子供たち

その逃げ回る背中が
初夏の明るい空の下で
躍動していました

手の上に初夏の光りと観覧車 【季語:初夏】

2018年05月26日 | 俳句:夏 時候
友人と話しながら道を歩いていました
住宅の間にところどころ畑がある土地
畑の緑もすっかりと濃くなっています

少し離れた山の方には観覧車が見えました
僕も一度ぐらいは行ったことのある
遊園地がある場所

観覧車を見ていると
少しづつですが動いています

僕は友人を笑わせようと
目の錯覚を利用して
観覧車を自分の手の上に
載せているように見せました

友人はクスリと笑いながら
眩しそうに僕の手の上の観覧車を眺めていました

溜息も哀しさ帯びぬ熱帯夜 【季語:熱帯夜】

2017年07月29日 | 俳句:夏 時候

夜も遅い時間
それでも暑さが和らぐ気配はなく
寝転がっているだけなのに
汗が湧いてきます

窓を開けても
風が吹く気配もなく
カーテンは微動だに動かないまま

その日の出来事を考えて
自己嫌悪に陥る溜息も
熱を帯び少しも
物思いの憂いを伝えません

そのうち考えることが
馬鹿らしくなり
シャワーを浴びるため
立ち上がりました

哀しみが似合わない熱帯夜です


引越しの労をねぎらう月涼し 【季語:涼し】

2017年07月08日 | 俳句:夏 時候
引越しをした時のこと
あまり荷物もないだろうなと思っていたのですが
予想以上のダンボールの数

やはり住んでいるうちに
色々と買い込んでいるものだなと
その積み上がった箱の数を見て思っていました

昼間の間汗を流しながら作業をし
最後の掃除まで含めると
終わったのはもう夜の10時を過ぎていました

食事をしようと外に出ると
もうすっかりと涼しくなった風と
空に輝く丸い月
今日一日の慌しさを労ってくれているようでした

野良猫も乾く暇なし梅雨の入り 【季語:梅雨の入り】

2017年06月03日 | 俳句:夏 時候
天気予報でも雨のマークが続く
どこかうっとおしい梅雨の季節

家の近くには
よくみかける野良猫がいるのですが
その毛並みも濡れていました

普段はきっと軒下辺りにでも
身を潜めているのでしょうが
一日中そこにいられるわけでもなく

外を歩けば
雨に濡れてしまう野良猫に
同情してしまいます

短夜やあれやこれやで深まれり 【季語:短夜】

2016年07月16日 | 俳句:夏 時候
日が長いことを実感します

夕方、窓の外を見ると
まだこんなに明るいんだと
驚くこともあります

人は明るい間は活動的になるのでしょうか
頭の中にあれもやろう
これもやろうと
普段ついつい先送りにしている物事が
次から次へと浮かんできます

もちろんその一割も
やることはできないのですが
ついつい手足を動かし
気が付くと
短い夜の深まりの中にいたりします

目覚めたくなき初夏の朝空遠し 【季語:初夏】

2016年06月19日 | 俳句:夏 時候
つらい毎日が続いた夜
まどろみながら
もう目が覚めることも
なければいいのにと思っていました

けれど初夏の明るい陽射しは
窓辺一杯に押し寄せて
僕を眠りから抱き起こしました

僕はそのまぶしさに抵抗するように
しばらくは布団の中で横になっていたのですが

今日やらなければいけない出来事が
次から次へと頭に浮かび
仕方無しに立ち上がりました

窓を開いて外を眺めれば
空は遠いところにあり

それはまだ先の見えない僕の生の行く末を
暗示しているかのようでした