風のささやき 俳句のblog

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冬の午後に【詩】

2024年12月26日 | 

「冬の午後に」

冬の午後は暮れるのが早い
陽射しは淡い化粧のように
顔の濃淡を塗りつぶす

みんなこの世のくびきから
解き放たれたようだ
悔いも捨てやることを終え
空に帰る準備をした顔だ
もう焦ることもない
身ぶりもゆったりとしている

きっと指先を空に差しだせば
シャボン玉のように体が泡立ち
空に昇ってゆく

 ようやく帰れるね
 寄り添うように、鳥が見送ってくれる

  でも、君たちの羽ばたきは
  空に限られているから
  もうお別れだ

 それなりにここは、楽しかったよ
 でも、もう戻ってくることは
 ないと思う

  でもあなたには会いたい
  その顔にこの手で、もう一度触れて
  頬をなぞりたい、まだお覚えている
  黒子の位置も、その涙をぬぐったことも

未練を残さないものは
やはりいない
それでも満足をした
穏やかな笑いが空に木霊する

夕映えはますます赤らんで
ささやかな悔いを一緒に燃やす

やがて今日の悔いの薪も尽きて
境目なく空と地上とが闇で一つになる

明るい星を見上げ 白い息を吐いて
昨日と今日と
何を変えることができたろう
何を身に収め 何を捨てたのか
自分の出入りも もう分からないで
後悔を貯めるばかり
空にはとても昇れそうにない

みんな同じなのかな
冬空に一人立っていると
人がやけに温かいことを知る



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