「冬の思い」
# 1
いつからか 雪は降り
ボタン雪となって 終わりなく続いた
幼いときに見た 夢の続き
真っ白な舞台の 一夜限りのおとぎ話
声無き 影絵の始まりのように
ストーブの前の椅子 赤い毛布をかけて
あなたは眠ってしまった いつの間にか
本降りの雪の 様子など知らず
さっきまであんなに はしゃいでいたのに
# 2
雪はどんな祈りを 心の真ん中に埋め
降りてくるのだろう 長い長い旅路を
巡礼者のように 敬虔に
壊れやすい結晶の 姿をして
時折は この部屋の灯りに
誘われるものもいて
窓辺に顔を寄せては
透明なガラスに張りついて
とけていく せつなさ
まじわれない せつなさ
―雪は どんな祈りを僕に
捧げに来たのだろう
# 3
やがて大地は 祈りの言葉で
満たされて 静寂を増す
明日の朝になれば 大地から
きっと消える雪は 遠い夢物語として
かなわない祈りは 空に帰り
また降る時を 待つのだろう
# 4
雪の降るよりも 微かな吐息で
まどろむ あなたの頭に
僕はそっと 頬を寄せる
溶けることなく 温もり伝わるあなたに
さわれることの うれしさ
きえてしまわない たしかさ
胸に湧く言葉を
綺麗な結晶にみがき
あなたに届けたいと
ささやく雪を 真似たくて
静かに 窓の外に 耳を澄ませた