Vee-Jayレーベルに”FANTASTIC”に続く第二作目を吹き込みながら(1960年)、お蔵入りし、1977年に日本でのみリリースされた作品。その後、LPの再発も限りなく無かったと思います。蔦とレンガ、そしてランプとノスタルジックさを醸すカヴァが聴く前から中身の良さを暗示している。as+リズム・セクションと言うオーソドックスながらその実力を問われる編成で、メンバーは”FANTASTIC”に見劣りするもStrozierのアルトは断然、こちらの方が鳴っている。まず、「連日連夜、君を想い、君に逢いたい・・・」という熱烈なラブ・ソング”Day In Day Out”をテーマはラテン・リズムに乗せ、アドリブはフォー・ビートで一気に吹き切り、続く、シナトラの名唱でも知られる”Nice & Easy”ではシナトラに負けず劣らず堂々と歌っている。まだ題名が決まっていないオリジナル曲”Blues”も「ブラック・コーヒー」風にややハスキーなトーンで素晴らしいブルース・フィーリングを聴かせている。
Strozierのasは、少し軽く、線が細いけれど、このレコードはリーダーとして、グループをひっぱり、実に朗々と吹いている所が立派ですね。カートリッジをM44Gで音に厚みを持たせるとイイ感じになります。
なお、ストロジャーは60年代初頭、asの逸材と期待され、Vee-Jayにモーガン、ショーターと共にフロント・ラインを張った”THE YOUNG LIONS”を吹き込み、二人に位負けしないパフォーマンスを残している。また、一時期、録音の記録はないけれどマイルスのグループに在団していた。
もう一枚は14年ぶりにSteepleChaseに吹き込んだそのタイトルも、何と”REMEMBER ME”、泣けますね。1962年に録音した‘March Of The Siamese Children ’(JAZZLAND 70)以来です。デビュー当時は、やや童顔であったストロジャーも、それなりに男ぽっく写っている。作曲の才もあり、ここでも7曲中、5曲を提供し、asとflを吹き分けています。
では、早速、タイトルとなった‘Remember Me’を聴いて参りましょう。いきなり無伴奏でストロジャーのasでスタート、14年間の不遇を吐露するシビアな演奏と思いきや軽いボサ・ロックのリズムに乗った軽快な演奏が始まり、良い意味でいなされた感じがする。だが、2曲目、‘Kram Samba’は一転してモーダルでアップ・テンポ、スリリングな力演に変わり、このプログラミング、なかなか上手いですね。ストロジャーのasが実にエモーショナルだ。
50年代後半に、シカゴからMJT+3でデビューしたスロトジャーのasは、多くのas奏者同様、パーカーをベースにしながら、早くからコルトレーンの影響を受け、その透明感ある音色と共に異色のスタイルとしてかなり注目を浴びたが、やや線の細さにより次第に、第一線から遠ざかってしまい、その後は、ロイ・ヘインズ・グループ等のレコードで健在を知る位であった。でも、この‘Kram Samba’の熱さで14年の間のジャズとの関わり方が窺われます。
それを更に証明する演奏がB-1のオリジナル‘For Our Elders’。カルテットによる演奏。これは僕だけが感ずることかもしれませんが、ストロジャーのアドリブ構成は独特で、前半と後半ではかなり趣が変わり、ここでも後半、ギアを一段シフト・ダウンして、細かな音をググッと押し込みながら、徐々にテンションを高めていく展開、スピリチュアルで聴き応えあります。
続く、C・ポーターの‘Get Out Of Town’はもともとスタンダードをうまく料理する力量を持ち合わせているので、76年に相応しい解釈で聴き手を楽しませてくれます。よくある懐古趣味に陥っていない所が良く、以前より音色が太く逞しくなっている。
「14年ぶり」のこの新録は見逃しがちですが、なかなかどうして、上等と思います。