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勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

早過ぎるリーダー・ラスト作 ・・・・・ TROMPETA TOCCATA / KENNY DORHAM

2021-09-12 | ジャズ・tp

 

1972年12月5日、腎臓病を患っていたドーハムは騒がれることなく48才の短い生涯を終えた。口の悪い連中から「長持ちドーハム」と揶揄された割には早死にであった。だが、、本作を録音した64年、40才にしてドーハムは既にジャズ・ミュージシャンとしての生命に終止符を打っていたと言っても過言ではない。ええっ、と思うかもしれないが間違いなく本作がドーハムのリーダー作のラスト・アルバムである。残りの8年間はプレスティージ、ストラタ・イースト等へ数本、サイドマンとして参加しているにすぎない。

このマイルスの僅か2才、年上のビ・バップからの名トランペッターが何故、本作以後、突然こうした状況に陥らなければならなかったのか定かではないが、それなりの理由が有ったのだろう。しかし、少なくともジャズシーンの急激な変化に彼が置いてきぼりにされたという憶測は当たっていない。何故ならば、本作のドーハムの演奏からは、時代に乗り遅れ、立ちつくしている様子は微塵も感じられない。ただ、本作の暫く後、ドーハムはDB誌でディスク・レヴーを担当し、例えば、ある同じtp奏者のアルバムに3.5星を付け、その理由を聞かれると、ドーハムは”TROMPETA TOCCATA”が同じ3.5星だったので・・・・・・と会心の出来を高く評価されなかった悔しさを滲ませ、他にもかなり辛口の評を残している。憶測ですが、それがマイナスに働いたかもしれません。ある意味、相反する立場を一人二役で熟すのは、そもそも無理が有ったのではないか。

それは兎も角、この”TROMPETA TOCCATA”はドーハムの約20年に亘るバップ・トランペッターとして最後の力を振り絞った命懸けの作品であったのではないかと思います。勿論、後付け論法ですが、この後の8年間のドーハムの姿を見るとそう思わざるを得ない。

かなりの好評を得た前作「ウナ・マス」に続く本作は全4曲、名演、しかも名曲揃いです。リーダーだけでなくサイドメンも素晴らしいプレイを聴かせ、タイトル曲でのトミフラは聴き手の予測を超えるミステリアスなソロを展開し、聴きものです。
しかし、何といってもラストナンバーの‘The Fox’がハイライト。ここでのドーハムはまるでこれがリーダー作として最後のプレイと予知していたかの如き美しくも激しく燃え尽きる 。
恩人とも言えるドーハムの心情を察知したのか、ジョー・ヘンダーソンがこれまた畢生の名ソロを展開する。聴き終えた後、なんだか目頭が熱くなってきます。

あまり話題に上ることのない本作はトランペッター・ドーハムの実力を見事に凝縮している。

1964. 9. 4

 

”Bluespirits”(2004. 2. 23)



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