旧型Vmaxのウィークポイントでもあるスタータークラッチの交換です。当時とすると普通の設計ですが、部品の構成とすると、XZ550という中型クラスの車種と同じです。
正常なバッテリーで使用していれば、破損は無いようですが、弱ったバッテリーで、無理矢理回そうとしたり、セルモーターが劣化して、回転トルクが弱っていたりすると、セルモーターで、クランクシャフトを回しきれず、クランクシャフトが逆回転することにより、スタータークラッチ本体に打撃が加わり、ガチンという音が出ます。スタータークラッチ本体に衝撃が何度か加わると、3本のボルトが緩み始め、本体がギアに対して斜めになるため、回転が遅いとうまく噛まないので、異音がします。このまま使用したとすると3本のボルトが順次折れていき、最終的に空転するので、始動できなくなります。
スタータークラッチ破損例
今回は、バッテリーが弱っているときに異音がし、バッテリーが元気なときは、異音がしないケースです。分解してみると、ボルトが少し緩み始めていましたので、初期症状です。
よく質問があるのが、マグネットローターが外れないので、どうしたらよいかと聞かれます。ポイントとするとヤマハ純正の工具を使用し、必ずクランクシャフトの端とプーラー先端の間に、専用のアダプターを入れることが基本です。
このアダプターが無いとクランクシャフト先端の破損の可能性があることと、クランクシャフトを真っ直ぐ押せないからです。プーラーの装着に際して3本のボルトで引っ張りますが、必ずローターとプーラーの間隔を等距離にして下さい。3本のボルトを入れるところに切り欠きが有りますが、この部分とローターの距離を3ヶ所で、ほぼ同じにして下さい。この理由については、力を真っ直ぐに掛けたい為です。この状態でもなかなか外れないことが多いですが、引っ張り側にテンションが掛かっている状態で、プーラー先端に軽くショックを与えると、クランクシャフトとローターの円錐部分の勘合が外れる場合があります。ただ、鉄ハンマー等を使用すると工具及びクランクシャフトを破損するので、プーラー先端より柔らかい材質の物で、ショックを与えると外れる場合があります。また、勘合部分をヒートガン等で、暖めても効果があります。外れる際は、瞬間的に外れて、落ちますので、ローターの下側に、クッションになるものを引いた方が良いと思います。
今回は、あまり損傷していませんが、本体とギアに打痕が有りますので、全て交換します。
外れないからといって、無茶をすると、クランクシャフトや、ローター、エンジン本体を破損する場合があるので、慎重に作業した方が良いと思います。くれぐれも鉄ハンマー等で、叩くことはやめて下さい。お客さんの車両で、修理で開けてみるとマグネットローターを叩いた打痕があることがたまにあります。おそらく他店で修理の際、外そうとしたものと思います。影響があまり無い場合は、お客さんに説明の上、マグネットローターを再使用する事はありますが、出来れば、交換したいと思っています。
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