小さな旅、大きな旅の写真物語(Virtual trips/travels)

京都や東京を本拠地として、自然の中や町を歩きながら、撮った写真をどんどん掲載します。いっしょに歩いているように。

再び台湾の旅

2024-06-16 19:50:35 | 旅行
再び台湾の旅
2024-5-19~5-22
最近の円安の影響(原因はこれだけではないかも)で海外旅行はバカ高く、家内は海外旅行のチラシを見て、海外はしばらく忘れましょうといいつつ、台湾ならいけるかもという考えになる。当方は、富山の居酒屋で海の幸を肴にお酒を飲んだ方が楽しいことは間違いないのだが、時にはあちらに合わせて、時にはこちらに合わせてもらうやり取りが自然の流れ。台北は以前行ったが、南の方は行ったことがない。南の高雄まで行って、新幹線で台北に戻るという3泊4日のツアーを選択。このツアーは新幹線以外に高雄で高雄圓山大飯店、台北でグランドハイアット台北という高級ホテルに泊まることが売りになっている。家内はここに魅かれたらしい。当方はこの旅にどういう意義を見出すか不明のまま旅に出た。
しかるに、カメラは徹底的にシンプル。Fujiilm X-T5 + Zeiss touit 32mm一本で押し通しました。わずか数ショットはZeiss touit 12mmをつかっています。観光写真は極力撮らずに、街の風景を撮ろうとしたのですが、フリータイムが殆ど無くて、バスの汚い窓からの撮影ばかりになりました。スナップにはZeiss touit 32mmが抜群に素晴らしいはずなのですが、見せ場もありません。しかし、この組み合わせはよく状況に対応していると思いますよ。



この写真は旅行の最終日のわずかなフリータイムの時訪ねた、台北の眷村(軍人村)の跡地、四四南村(スースーナンツン)から 101階建て台北101ビルを望む写真。この写真の意味を述べることで、この旅行の旅行記にしましょう。台湾の観光地はもう皆さんご存知でしょうから書いても面白くないでしょう。ザクっと台湾を知るための基本情報から始めます。つまらんと言わずに読んでください。後できっと役に立ちますよ。
しかし、ずいぶんと地味な旅行記になったもんだよ。当方にとっては数日で丸っと台湾を理解し、有意義な時をすごしたと自負しているのですが?


台北101 2004年12月31日オープン、509.2メートル、地上101階+地下5階、内69階分はオフィス。かつては完成建築物として世界一高いものだった。


台北信義区 四四南村
台湾の重要な年次、1949年に蒋介石は中国本土から台湾に中華民国を遷移する。その時の軍人の村、眷村の一つ四四南村がちょっとばかりリノベーションして観光スポットに変身したのです。

台湾とはどうとらえていいか、困ってしまう不思議な国なのです。
先住民族の時代(マレーポリネシア系先住民族 1624以前)
オランダ占領時代(1624-1661)
中国時代(鄭氏がオランダを駆逐、その後清国領、1661-1895)
日本時代(1895-1945)
中華民国(1945- 日本敗戦後中国は中華民国であったが、1949に中国本土は中華人民共和国となり、中華民国は台湾に逃げる)

つまり、この四四南村はスケールこそちいさいけれど、ボストン近郊のイギリスからアメリカに逃げたピューリタンらが上陸したプリマス・プランテーションの再現村 Plimoth Plantationに等しいのです。




マサチューセッツ州Plimoth Plantation(2020年からPlimoth Patuxet Museumsと改名)

ここでは当時の服装の人達が当時の言葉で、プリマス・プランテーションを再現している歴史村なのです。我々は以前、ここを訪れて、とても印象に残っています。現在も同じように運営されているかは不明。
プリグリム・ファーザーズが現在のアメリカ合衆国に発展するのです。四四南村から 101階建て台北101ビルを有する台湾に発展しました。台北の故宮博物館には蒋介石が移動させた中華民国の膨大な栄華資産が展示されていますが、台湾にはここで生まれた文化は80年くらいの歴史しかないのです。むしろ日本時代に台湾の近代化に向けた色々な仕掛け(農業、工業、商業etc)が現在の台湾の元になっています。四四南村の建物も旧日本陸軍倉庫を改修して住居としたものです。しかし、そんな過去の日本との関係を知らない若い世代に台湾は移行しています。これから台湾はどうなる、日本との関係はどうなる。

次は台湾新幹線(高鉄)




行政区    面積(km2)    人口(2019年5月末)
台北市 Taipei City   271.7997     2,658,615
新北市 New Taipei City 2,052.57     4,003,294
桃園市 Taoyuan City   1,220.95     2,232,623
台中市 Taichung City  2,214.90     2,809,545
台南市 Tainan City   2,191.65     1,882,624
高雄市 Kaohsiung City 2,951.85     2,773,026

台北市は一番大きな都市と思っていましたが、人口的には最北端の新北市がダントツに人口が多く、台北は台中、高雄に続く4番の都市でした。しかし、経済、政治、文化の最大の中心としてあることは間違いありません。最近人が増えているのが台中で、最近の一番人気らしいです。台北観光の定番、今回も訪ねた十分、九分は新北市です。ちなみに台湾の面積は九州よりちょっと小さいくらいです。
日本の東京や、韓国のソウルみたいにやたら一極集中とならないところが不思議です。日本や韓国の一極集中を生み出すなにものかが諸悪の根源と考えている当方にとって、台湾がそうならない理由が知りたい。
高鉄の駅名で、南湾は台北市であり、左営は高雄市です。桃園は国際空港がある街です。高鉄は平野の多い台湾の西側を走り、中央山脈に接する東側はこの前、大地震がありました。こちら側に新幹線が通ることはないでしょう。移動手段としてはこれも西側の南北に3本の奇数番号の高速道路(快速公路)と東西方向にいくつかの偶数番号高速道路があります。国道は全て有料高速道路となります。西側に比べると東側はずいぶんと不便なようです。

当方にとって台湾は2度目ですから、興味は観光地でなく、高鉄沿いの、台湾西側の都市がどんな状態なのか、どんな特徴があるのか雑駁な印象を手に入れることにあります。何故なら、台湾有事が起きた時に、日本はどうするか、その時自分はどういう考えで行動するかの根拠となるのが、この印象にあると思うからです。

行きにはバスで台中、嘉儀によって、高雄に行き、帰りは台南から高鉄で一気に台北に戻ったのです。

まずは高雄の街
台北よりずっと離れた南の街なので、南国風の街かと思いきや、工場や学校の集まる活発な産業都市でした。
まずは、観光ツアーで必ずたずねる蓮池潭(レンチタン)




高雄、蓮池潭(レンチタン)龍虎塔 現在修理中


修理前はこんな具合。(ネット情報)

蓮池潭は淡水人口湖です。何故か津波注意という立て看板があるので変だと思ったら、蓮池潭風景区から西に1kmほどで海でした。南に5kmほどで高雄港のクルージング出発点にでます。ここから台湾海峡をクルージングできます。現在、のんきにクルージング出来るのか知りません。当方はただ台湾海峡が見たかったと思うのです。

今回の旅で、黄色、紫色、赤色の花をつけた街路樹をよく見ました。台湾は一年中、花が咲いているそうです。

これは赤い花の一つ、 ホウオウボク(鳳凰木)の花です。卒業シーズンに咲く花であることから、卒業式に咲く花、卒業生の門出を見送る花として知られています。台湾の赤い花はもう一つノウゼンカズラ科の 火焔木(カエンボク)の花があるようで、これも道すがらよく見ていると思うのですが、写真はありません。



車中から何度も見る黄色い花。ゴールデンシャワーと呼ばれるナンバンサイカチの花、中国名は[阿勃勒(アーボーロー)]だそうです。なかなか魅力的なゴールデンシャワーです。



問題はこの紫色の花、あちこちに咲いている。帰って調べればすぐわかると思ったのに、ネットで調べてもわからない。薄紫の花というとジャカランダは三大街路樹として有名なのでネットにいっぱい出てくるけれど台湾であちこちに咲いているかはわからない。生成AIに聞いてみたが、やっぱりよくわからない。なんということか。ネットで何でもわかると思ったら大間違い、見当違いだとまったく情報が得られない。だけど台湾のネット情報というのはとっても偏っている。誰か教えてください。



あと街路樹で有名なのはカジュマルとマンゴー。カジュマルは沖縄でよく見るのと同じ、台湾にいっぱい存在します。街路樹のマンゴーはちゃんと熟して、むしろ落果が危険と言って市が採取作業するらしい。

高雄の夕食は海鮮中華

大きな伊勢海老の看板なので、エビが売りのようです。


蒸しエビ、1人2匹に決まっています。美味しいのではあるが2匹ではしょうがない。



蒸し海老とシシャモ(?)のフライ烏賊と野菜を甘酢炒め等々。この魚はシシャモみたい、まさか台湾でシシャモが出てくるとは。調べてみると日本で普通に食べるのは北海道の本物のシシャモでなく、カナダやロシアなどから輸入される類似品。いずれにせよ北の魚。台湾の人はポピュラーに揚げて食べているらしいが、どうみても輸入品。ここの料理はマイルドな味付けで、おいしさもマイルド(普通程度)。このツアーの料金は驚くほどリーズナブルなので、豪華な料理は期待する方がおかしい。といって、絶望というわけではありません。そこそこでまとめるところはたいしたもの。



台湾の料理屋でお酒といえばこの台湾ビールしか出てこない。アルコール度が低くて間違いなくおいしい。我々ツアー客はたった7人。男性は当方ともう一人だけ。この方は結構飲む方なので、シェアというわけに行かず。当方はいつも一人一ビン飲む羽目になる。

夕食後は高雄観光定番の美麓島駅へ。

高雄、美麓島駅。高雄地下鉄駅、世界で最も美しい駅2位、世界最大のステンドグラスアート。イタリアのアーティストと日本の技術者の合作らしい。




構内のコンビニを探検


日本のお菓子が並びます。


地下鉄、美麓島駅上部の光景


お馴染みの台湾、バイク群れの光景。



高雄では高雄圓山大飯店に泊まります。

高雄圓山大飯店外見拝見。Fujifilm X-T5のレンズはZeiss touit 32mm(実質48mm)一本で押し通しているので、一部しか映っていません。すみません。


ホテル、ロビー拝見。


ホテルからの町並み拝見。


ホテル部屋バルコニーの眺め



圓山大飯店は台北の方が上だとツアー客がブツブツ言う。そんなこと最初からわかっていることで、なにをブツブツいうか。



これは台北から帰りの飛行場へ行く途中で撮った、台北の圓山大飯店。こちらは500室、9階建て。高雄の圓山大飯店は107室、5階建て。(この写真が、本台湾旅行の最後の写真)
なんせ、夜8時30分頃にホテルについて、朝7時30分には出発ですから、台北と高雄の圓山大飯店の良し悪しなどどうでもいい話で。このツアーでは町を散策するチャンスが全くありません。翌朝バスから必死に街を撮影しますが、このバスの窓が超汚い。必死に修正しますが、これが限度でどうしようもない。このバスの窓の汚さのおかげで、大半の写真が汚くて、本当に、本当にすみません。

今日はここまで、次回は高雄から台中までの旅。
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New アート考察9 <金沢、富山の陶芸・ガラス工芸を追う> その2 能登島・国際ガラス展2022

2022-12-28 20:44:45 | 旅行
New アート考察9 <金沢、富山の陶芸・ガラス工芸を追う> その2 能登島・国際ガラス展2022

<金沢、富山の陶芸・ガラス工芸を追う>その2が一つも進みません。その理由はこの日の能登島・国際ガラス展2022の内容が、当方にとって異常に魅力的でなかったからどうしても筆が進まないでいるのです。

前回初めてこの展覧会に参加したのは2019年、大きなインパクトを受けて、その後の当方の陶芸活動に大きな影響を与えました。この展覧会は最初金沢で開催されて、次に能登島ガラス美術館に移動します。3年に一回開催ということで、国際ガラス展2022は久しぶりです。今回もタイミング的にまたもや能登島に出かけることになりました。
能登島ガラス美術館は、七尾線の七尾またはその先の加賀屋で有名な和倉温泉からバスで島に渡ります。今回も前回も七尾からバスで、金沢から鈍行で行くと全行程2時間ちょっとかかります。能登島の旅は苦になりません。能登半島の海が見られるからです。


能登島ガラス美術館





能登島ガラス美術館は内部も外の庭もそれなりに楽しめる場所です。和倉温泉に遊びに来たついでにこの美術館を訪ねるという方々が来館者の多くを占めるかもしれません(我々みたいに東京からこの美術館だけを目当てに来る人は珍しいかも)。




能登の海が見えます。



後ろに見える道の駅が開いているか閉まっているかで楽しみは雲泥の違い。ここの海鮮丼は美味しいらしい。我々は海鮮は金沢の最後の夜にとっておくので、ここでは食さず。



道の駅の裏にはガラス工房があります。当方が以前お世話になった自由が丘のガラス工房の先生、由水氏のお父さんが開いた工房だそうです。


ガラスショップが併設されています。

なかなか本題の国際ガラス展にはいりませんね。 さて頑張りましょう。

大賞、金賞、銀賞その他いくつかの入選作品を2022年と2019年を並列して載せてみます。この2つの展覧会が当方にとってあまりに印象がちがうのであえてそうします。 (以下参考文献から引用ですから小さい写真にしています、すみません)。


2019年大賞、胎動‘1-3 津守秀憲 セラミックとガラスの混合材料を使った混合焼成・キルンワーク(引用文献1)

ガラスに陶土を混ぜて作った作品。これは当方に大きなショックを与えました。津守さんは今年も入選しています。こういう新しい勇気のあるアプローチこそ大賞に値すると思います。


2022 大賞 切々、憧憬 田中里姫(引用文献2)

若手の作家さんで、先日訪れたギャラリーのガラスにも詳しい女性店主が東京で見たといって誉めていました。当方の感想はいいと思うのですが、見た目からだけいえば苦労してあえてガラスで作る必然性がありますかね?その辺のプラスチックを集合すれば簡単に同じ見た目に出来るのではないかと思ってしまう。


2019年金賞、散華 田上恵美子・拓 (引用文献1)

この写真では良さが分からないので田上恵美子さんの他の作品をネット情報で載せます。この方の美的センスはうれしい。拓さんは息子さん。


田上恵美子


2022年金賞 癒しの間 Jiang, Guimei (China) (引用文献2)
悪くはないが、当方にとって特にインパクトがあるわけではない。


2022年金賞 泉185469 磯谷晴弘(引用文献2)
理屈から出来上がった感じ、 よくできましたという感じ。


2019年銀賞、Natural Verse 塚田美登里 フュージング、サギング、コールドワーク
(引用文献1)

これは当方のやりたい方向。塚田さんの教室に弟子入りしようと思ったほど(遠いから無理)。


2019年銀賞、色がある壁、張慶南 (引用文献1)

これは意外性のある作品。大きめのガラスブロックをパートドベール風に窯で癒合させる時に境界に部分的に色づけするとこうなるのだろう。透明なバックにはっきりしたパターン、アイデアが面白い。


2022年銀賞 Waiting for the Rain Stoilova Desislova (France)
(引用文献2)
何が面白いのかわかりません。


2022年銀賞 明日にR2011 張 慶南(引用文献2)

よくあるフォルム物で陳腐と思うのですが。


2022年銀賞 植物の記憶/忘れじの庭 佐々木類
(引用文献2)

ガラスに実際の植物を閉じ込めたのかな?新しい流れとは思いますが、なんとなく
よくあるレジン作品のガラス版みたいだ。


2019年入選 Blue Fish, Klein Vladimir
(引用文献1)
チェコスロバキア生まれ


2019年入選 Sakura Leaf, Masitova Ivana
(引用文献1)
チェコスロバキア生まれ

当方が最も気に入ったアプローチ。完全透明なガラスブロックを削りによりアクセントをつけて行く。自分でもこの方向で、ガラスと陶器のクロスオーバー作品が作りたいと思っています。


2022年入選 箱舟 宮下真巳(引用文献2)

この手のアプローチはチェコのVladimirやIvanaの日本版と見えます。作品としては立派なものだが、コンセプトとしてはこれまでの流れに乗ったもので斬新とは思わない。



2019年入選 The Rising Sun, Borkovics Peter
(引用文献1)
この作品の作り方には感服しました。海外礼賛ではないですが、こういうぶっ飛んだ斬新さが日本人にもあるといいのですが。


2022年審査員特別賞 Windows to the World Borkovics, Peter (Hungary)(引用文献2)

作り方がよくわからないですが、方向としては面白いと思います。この作品には一票いれます。


2022年奨励賞 息を織る April 2021 小曽川瑠那(引用文献2)

写真とガラスのクロスオーバー作品。日付順にレーヤーされた記録写真が組み込まれているそうだ。当方はこういう能書きの多い方向は好きでない。


2022年奨励賞 Vestige 藤掛幸智(引用文献2)

このような、細密なガラス集合体による不定形なホルムを売りとする作品がなんと7点も入選しています。 一つ一つのいい悪いというよりは同じようなコンセプト作品がこれほど多いとはいったいどうしたのだろうか?


2022年奨励賞 Vestige 藤掛幸智(引用文献2)


2022年入選 R-VX II 大木春菜(引用文献2)


2022年審査員特別賞 Interface 12 佐藤静恵
(引用文献2)


2022年入選 Transition-442 武岡健輔(引用文献2)


2022年入選 Drop 朴 Park Youngho (Republic Korea)
(引用文献2


2022年入選 Metamorphosis Shilling Cathryn (United Kingdom)
(引用文献2)


2022年奨励賞 変貌 西野瑠華(引用文献2)

同様に極限まで細密なガラス細工が入選しています。


2022年入選 Tender Flower 岡崎彩香(引用文献2)

これなんて、ただの超絶技巧作品と思ってしまう。


2022年審査員特別賞 ゆりかご 木下結衣(引用文献2)

今回で、数少ない変わったアプローチの作品。 この入選作品は当方の海物カテゴリーですから見逃せません。サンゴのミミック。この方向なら、この方向でいいのですが、海物の専門家としていわせてもらえば、ただのゴタマゼでもう少し何とかならないのか?

以上、今回の国際ガラス展は異常です。3年後も同じような傾向なら、訪れる必要は無いと思っています。この異常の原因は、コロナ禍で選考を選考委員が一同に介さずに精密写真で
ネット上で行われたこと、ロシア・プーチンの異常行動の影響で、海外からの応募に障害があったかもしれないこと。作家さんがコロナで家にとじこもったから、心のダイナミズム、心の生命力が消滅し、頭で作品を作った為の3点が考えられます。選考委員はネット選考でもうまくいったと自画自賛していますが、当方の感覚からではアートの壊滅的崩壊と思われます。一言でいえば<心が無い>。選考会の為に、選考に勝つために作られた作品に結果が集中した。家内いわく、<技巧を競う展示会だ>。 写真では心は伝わらない、技巧ばかりが全面に出る。写真ですむならわざわざ展示会に足を運ぶ必要はないことになります。

この展覧会に多摩美客員教授 武田厚氏が<美しいガラスあるいは美しくないガラス>という寄稿をしていますが、どちらでもいいから<心>が必要だと思うのです(当方個人の本心としては工芸とは美しくなければ面白くもなんともないと思っています。) 当方は作品を作るときにはいつも<作品は見た目だ、見た目だ、見た目さえよければいい>と唱えながら作っています。ごたごたした理屈や能書きはどうでもいい、見た目が魅力的でなければ意味ないと呪文をとなえているのです。


国際ガラス展金沢2019はちょうどコロナ禍が始まったタイミング、それから世界中の創作活動は大変だっただろうと思います。やっと開いた国際ガラス展金沢2022をただ非難するのは申し訳ないとは思います。しかし、ダイナミックだったガラス工芸が、陶芸みたいに硬直してしまったら困るのです。

現代アートは絵画、彫刻、写真いずれも美しいというより、いかにコレクターの注意を引くかが目的になっています。京都国際写真展のブログでグレイン・ペリーの<みんなの現代アート>という本をご紹介した時にこれを議論しました。工芸は特にガラス工芸は、素材の持つ美しさに感動することから始まったと思うのです。武田厚氏の寄稿<美しいガラスあるいは美しくないガラス>でガラス工芸が近年美しくないガラスへ変貌することが書かれています。ガラス工芸が現代アートに飲み込まれているのです。最後の砦と思っていたガラス工芸が美しくないアートになってゆくのは悲しい。
人は人、当方は<作品は見た目だ、見た目だ、見た目が魅力的でなければ意味ない>と言いながら作品を作ります。

気分を変えるために、常設展示のピカソとシャガールが手がけたガラス作品を載せておきます。


魚―かご エディオ・コンスタチーニ(パブロ・ピカソのデザインに基づいて) (引用文献3)


新郎新婦―アンフォラ エディオ・コンスタチーニ(マルク・シャガールのデザインに基づいて) (引用文献3)

引用文献1:The international Exhibition of Glass KANAZAWA 2019
引用文献2:The international Exhibition of Glass KANAZAWA 2022
引用文献3:石川県能登島ガラス美術館 Postcard


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日光の旅 2021-10-12 その3 なんと東武ワールドスクエア―に行く

2021-10-20 19:48:11 | 旅行
日光の旅 2021-10-12 その3 なんと東武ワールドスクエア―に行く

予想通り、今日は雨。東照宮、平成の大修理の出来を見に行きました。

今日はFujifilm GFX100S + GF50mmがメインです。Fujifilm GFX100S + GF50mmは特に楽しくないのが不思議。雨のせいかな?


Fujifilm GFX100S + GF50mm


Fujifilm GFX100S + GF50mm


Fujifilm GFX100S + GF50mm 見ざる言わざる聞かざる


平成の大修理、かなり明確に修理したというので、ひどいことになっているのではと心配したのですが、うまい具合に修理されており、良かったのではないでしょうか。こういう修理は、最初のケバイ状態に戻すのがいいか、年月が経った趣を大事にするのがいいか議論になるものです。家内は当初の状態に戻すこと、当方は落ち着いた経年状態を大事にすることと意見が分かれます。奈良薬師寺の東寺がいいか、西寺がいいのかということです。 見た所はちょうど良かったのですが、ネットではすでに剥げてきたという指摘があり、技術的に昔の技術に追いついていないのかもしれません。


Fujifilm GFX100S + GF50mm 陽明門


Fujifilm GFX100S + GF50mm 陽明門右の塀


Fujifilm GFX100S + GF50mm  唐門


Fujifilm GFX100S + GF50mm 眠り猫


Fujifilm GFX100S + GF50mm 奥宮(奥の院)への階段
入り口の眠り猫を見落として、先にあるのかと思って進み、奥の院への階段を上がり始めたのが失敗だったのか、幸運だったのか? 雨の中、滑りやすい階段207段を上り下りするのは結構リスキー。ありがたくも徳川家康公のお墓があるパワースポットだそうで、これが徳川家康公お墓への最初で最後のお参りになるかも。

写真は小さな子供を連れた外人夫婦の挑戦です。

奥の院で時間切れ、 東照宮を後に、東武日光駅から東武日光線で下今市へ、乗り換えて東武鬼怒川線で5駅、東武ワールドスクエア駅へ。東武鬼怒川線は単線で、普通電車の駅すれ違い待ち合わせ時間が驚くほど長い(特急を待つ時は大変)、結局40分くらいかかったかな。もっとかかる時もあるそうな。

東武ワールドスクエアは家内が昔から行きたがっていた所。しかし、ネット上では東武ワールドスクエアに対する全く面白くないという酷評とそれを打ち消して東武ワールドスクエアを擁護するコメントがいっぱい乗っています。当方は家内がこういった類の所が好きなことは知っているので、付き合うことにしました。一つだけ共通の目的がありました。コロナ禍が明けて海外に行けるようになったら、どこに行くかを東武ワールドスクエアで考えようということです。

当方は結果として、東武ワールドスクエアは面白かった。その理由は① 建物の周辺に置かれた人や車のミニチュアがとっても楽しい。建物も含めて驚異的な精巧さで作られており、 本物を表現しようとするとんでもないマニアックな根性がすばらしい。② 有名な建物を3Dで上空から俯瞰するチャンスなぞそうあるものでない。そうか、こういう全体像をしていたのかとびっくりである。つまり知っている建物の方が面白く。日本の建物の方が面白い。
海外旅行の件は、エジプトのピラミッド、アブ・シンベル大神殿や敦煌の莫高窟や、行きにくい所はここで見たからもう行くのはやめよう。ここもパス、ここもパスと言っているうちに、特に行きたいところが思い浮かぶこともなく終了となりました。海外では皆が知っている有名な所はもういいや。 日本の有名なところはまた行きたい。なにしろ全体像を知ってから訪ねたら面白いと思うから。

皆さんにも、意外なことに東武ワールドスクエアはお薦めです。


Fujifilm GFX100S + GF50mm 東京駅


Fujifilm GFX100S + GF50mm


スマホ


Fujifilm GFX100S + GF50mm 東京スカイツリータウン


Fujifilm GFX100S + GF50mm 迎賓館


Fujifilm GFX100S + GF50mm  迎賓館


Fujifilm GFX100S + GF50mm 東京国立博物館 表慶館


Fujifilm GFX100S + GF50mm ふじ丸


Fujifilm GFX100S + GF50mm ワールド・トレード・センターとエンパイア・ステート・ビル
ゴジラの気分になれます。


Fujifilm GFX100S + GF50mm エンパイア・ステート・ビル前

眼の悪い方には本物に見えるでしょう?


Fujifilm GFX100S + GF50mm スフインクスとピラミッド


Fujifilm GFX100S + GF50mm


Fujifilm GFX100S + GF50mm アブ・シンベル大神殿


スマホ


Fujifilm GFX100S + GF50mm  バチカン・サンピエトロ大聖堂

例外的にここにはいってみたい。家内は行っているが、当方は行ってない。


Fujifilm GFX100S + GF50mm  エッフェル塔


Fujifilm GFX100S + GF50mm  故宮とワールド・トレード・センター、エンパイア・ステート・ビル、タージ・マハル、ミャンマー・アーマンダ寺院と後ろの山が一緒に見えるところがすごい。


Fujifilm GFX100S + GF50mm このあいだ本物が焼けてしまったノートルダム寺院
スタッフが一生懸命補修中。この園の展示物は毎日手入れしているそうです。台風の時はどうするのですかと家内が質問していました。



Fujifilm GFX100S + GF50mm 法隆寺


Fujifilm GFX100S + GF50mm 春日大社


スマホ 火事で大半が焼失した首里城 これは貴重です。


スマホ

園内で遅い昼食。湯葉うどんが1600円で高いと思ったのですが、おいしい天ぷらがいっぱいついてきて、結構でした。ここのレストランはネットでの評判もよろしい。東武ワールドスクエアは楽しい所ですよ。

下今市で特急に飛び乗って、1時間50分、浅草で夕食用のちらし寿司弁当を買って、日光の旅はこれでおしまい。

追記
後でワールドスクエアのパンフレットを読んでみると、2万本の本物小型盆栽が使われており、ウメ、サクラ、モミジ、イチョウ、法隆寺の周りにはカキが植えられ、ちゃんと花や実をつけるそうです。人形の靴ひもやベルトも独立してしっかり作ってあり(すべての人形かは?)、感嘆します。施設当たりのミニチュア数とかで、ギネスブックに申請したらどうでしょうか?
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日光の旅 2021-10-11,12 その1 秋の湯ノ湖を歩く

2021-10-18 19:29:47 | 旅行
日光の旅 2021-10-11,12 その1 秋の湯ノ湖を歩く
緊急事態宣言が解除されました。コロナ禍霧の晴れ間に、本格旅行の準備運動です。勝手知ったる所でのんびりしましょう。前から目をつけていた、日光湯元の休暇村をクリックしたら、10月中に2日だけ空いていました。紅葉は10月初旬から始まるというので、ラッキーと10月11日(月)から一泊を予約しました。
お天気は月曜は午前中晴れ、火曜は雨の予報でした。落ち着いて調べてみると今年の日光の紅葉は遅れていて、湯元の紅葉ははじまったばかりとのこと。ちょっと赤いのがあれば、まあいいかと大きな期待もせずに出かけました。
日光の奥の奥、湯元に出かける時はいつも東武フリー切符を使います。電車の往復と、バスが乗り放題で4600円。 特急を使っても交通費はトータル一人8000円であがります。
そうか、皆さんマイカーで行くんだ。当方の旅行はいつも電車とバス。


Fujifilm GFX100S + GF110mm

休暇村に着いたのが、11時半だったか、天気は上々。


Fujifilm GFX100S + GF110mm

今日は湯元の湯ノ湖周辺一本に絞って、ちらほらの紅葉と、水面の撮影です。機材はFujifilm GFX100S + GF110mmがメイン。
現在進行中の陶絵画のバックに水面パターンを使うので、今日の水面撮影は当方にとってとても重要なのです。いつも満足できる水面が撮れるとは限らないので、Fujifilm GFX100S + GF110mmの力でなんとか使える絵が撮りたい。


Fujifilm GFX100S + GF110mm


スマホ

Fujifilm GFX100S + GF110mmは2kgになり、右手の腱鞘炎が治らない状態で、きつい撮影です。


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm

湖畔の東側の遊歩道路を湯滝に向かって歩きます。西側は結構足場が悪い所があり、家内が湖に落っこちて引き上げるなどということになると面倒なので、東岸だけを歩きます。


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm

水面撮影はうまい具合に紅葉が写る場面を見つけることが出来ませんでしたが、陶絵画に使う可能性を持つ絵をかなり収集することができました。


Fujifilm GFX100S + GF110mm

皆さんは水面なぞ興味ないでしょうが、当方にはじっと見ていると絵が浮かんできて、楽しくてしょうがないのです。


Fujifilm GFX100S + GF110mm 湯ノ湖のでっぱり、兎島


スマホ

水面撮影に没頭しています。


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


Fujifilm GFX100S + GF110mm


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実は、湯元について食事をしようと思ったら、全く食事を出す店がありません。最も食事が出来そうな湖畔の日光湯本レストハウスに行ってみると、支配人風のおじさんが一人でコーヒーだけを店頭販売していました。聞いてみると、コロナ禍で従業員をみな解雇してしまって、緊急事態が解除になってもすぐにはレストランを再開できない。このあたりは皆同じで、食べる所は当分ないとのことでした。無論コンビニは無いし、食べ物を手に入れる所は皆無です。当方は湯滝の下の茶屋で食べ物にありつけそうな予感がして、そちらに向かいます。

続きは明日。


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Newアート考察3 伝統工芸に<革新>はあるか? 必要か? その10 第8回菊池ビエンナーレ展 現代陶芸の<今>  そして総括

2020-04-16 19:46:33 | 旅行
Newアート考察3 伝統工芸に<革新>はあるか? 必要か? その10 第8回菊池ビエンナーレ展 現代陶芸の<今>  そして総括

第8回菊池ビエンナーレ展 現代陶芸の<今>
2019-12-14~2020-3-22
菊池寛実記念 智美術館主催の公募展です。この美術館は実業家、菊池寛実の娘、菊池智さんの収集した近代陶芸作品を収蔵し、常に新しい陶芸作品を見つめてきた日本を代表する美術館です。


大賞 中村清吾 白磁鉢 引用文献1


青瓷ぐい呑 22000円 ネット情報

1975年
佐賀県有田町に中村清六の孫として生まれる
1998年
九州大学経済学部経済工学科卒業後、有田焼、高麗庵清六窯にて修業
佐賀県無形重要文化財陶芸白磁の保持者
受賞多数
高麗庵清六窯で活動

中村清六は高麗庵清六窯を作った白磁の大家で、人間国宝を断ったということ。

確固たる伝統の上に立脚した作品ですね。こういう作品は、どうころんでも当方には出来ないので、ただ見てるだけです。


優秀賞 森山寛二郎 切り継ぎー廻― 引用文献1


森山寛二郎 ネット情報

1984
福岡県小石原に生まれる、森山元實氏の長男
2007
国立佐賀大学 文化教育学部 美術・工芸課程卒業
2008
福岡県小石原に戻り作陶
森山實山窯

ずっとこのようなアート作品を作って、一貫しているのがいいですね。

ここに載せた方々のほとんどが、自分のいつも作っている方向の一つを出品し、たまたま賞をとったという感じ、展覧会用に賞を狙って変わったことしているのではないのがいい。


奨励賞 伊藤公洋  志野彩文盤 引用文献1


伊藤公洋(いとうこうよう)ネット情報
1965年愛知県高浜市生まれ
美濃焼/志野焼 高浜の窯元「丹鏡窯」の五代目

<私は一つの器の中に幾つもの釉薬を入れることに挑戦しています。土も複数用います。3種の土を使い、6種の釉薬をかければそれだけで非常に複雑な色を生み出すことができます。>と語っていました。

志野から色を追求するとは、いいですね。まだまだこれから発展させてほしいですね。


奨励賞 中里浩子(なかざとひろこ)Flower Scapes 
引用文献1
1966横浜に生まれる
1990京都市立芸術大学工芸科陶磁器専攻卒業
1992京都市立芸術大学大学院美術研究科陶磁器専攻修了
小田原市で活動


中里浩子 ネット情報


中里浩子 ネット情報
このヒトの作品はほんま好きやわ!
この展覧会の作品のなかで一番惹かれました。


星野友幸(ほしのともゆき) figure 引用文献1


星野友幸 ネット情報

1976年 山梨県甲府市出身
1999年 横浜市立大学商学部卒業 株式会社パソナ入社(平成16年3月退職)
2005年 京都府立陶工高等技術専門校 成形科 修了、猪飼祐一氏に師事
2006年 東京都国分寺市にて独立

これはちょっと賞狙いという感じがしますが、頑張ってます。


大石早矢香(おおいしさやか)  秘めリンゴ(black) 引用文献1


大石早矢香 ネット情報


大石早矢香 ネット情報


大石早矢香 ネット情報

1980年 京都府亀岡市生まれ
2004年 京都市立芸術大学美術学部工芸科陶磁器専攻卒業

とってもユニーク。いいですね、どんどんこの線を追求してほしいですね。


ロクロ・ワークでなさそうな作品を多めに選んで載せました。
今回の入選は54で約6割弱がロクロ・ワークと思われる作品です。例えば下のような作品です。


田島正仁(たじましょうに)彩釉鉢 引用文献1


田島正仁 ネット情報


田島正仁 ネット情報
1948年石川県小松市 生まれ
人間国宝 三代徳田八十吉 ( 故人 ) を師とする、九谷焼作家


市野秀作 灰釉彩鉢 引用文献1


ネット情報
市野秀作
1986年兵庫県丹波篠山市生まれ
2009年龍谷大学卒
2010年京都府立陶工高等技術専門学校卒
丹波焼省三窯


岡田泰(おかだやすし)淡青釉鉢 引用文献1


ネット情報

岡田泰
1976年 山口県萩市生まれ
2002年 山口県重要無形文化財岡田裕さんの長男
2003年 東京造形大学美術学部彫刻科卒業
2005年 京都府立陶工高等技術専門校成形科修了
京都市工業試験場陶磁器専修科終了
萩焼

いずれも代々陶芸家の流れをくむ、伝統工芸そのものという感じです。

現代陶芸の<今> といわれると、その通りには違いない。なにか万遍無くピックアップされたという感じがします。応募者平均年齢48.9才 入選者平均年齢47.4才。


引用文献1:Kikuchi Biennale VIII 菊池寛実記念智美術館

総括

当方はただの生命科学研究者で、美術を研究しているわけではないので、ただ直感的に思ったことを総括してみます。
まず、アートとは西洋文明なのだ、日本の根っこに流れる文明とは別もんなのだと思うのです。アートを芸術と日本語に訳しても両者は違うものと思います。この違いの大きさは時代により近づいたり遠ざかったりしているのでしょう。安土桃山時代、江戸時代に比べて、現代はこの違いがむしろ拡大しているような気がするのです。
新型コロナ危機の中でドイツやイギリスなどの西洋諸国は<アートは生命維持に必要>として対応しています。アート⇒人の生命活動そのもの⇒新しい命/革新こそ、その存在価値がある。これが欧米一般の人の常識なのです。
当方がベンチャー・ビジネスをやっていた時、新卒学生を採用しようとすると、お母さんが<お願いだからベンチャーにはいかないでくれ、大企業に入ってくれ>というのだそうです。アメリカでは大企業の社長よりベンチャーの起業者のほうが尊敬されるのです。失敗したって、よくやった、もう一度がんばってくれと言われるだけです。MIT(マサチューセッツ工科大学)卒業者の優秀な人はベンチャーを立ち上げ、普通の人は大企業にはいるのです。ある東京のバイオ企業支援組織の理事が<この組織に資金を出してくれているのは大企業だ、ベンチャーに投資したって費用対効果がいいわけない。政府がやれというから仕方なくベンチャー支援のふりをしているのだ>、当方がベンチャーの一員としてこの組織のアドバイザーのほんの一角を頼まれた時に、そんなに真剣にやってくれては迷惑だといわれたのです。これが日本の根底に横たわる本音なのです。
2、越前焼、九谷焼、日本の陶芸は完璧です。人の自然に対する憧憬と実用をバランスさせた完成品なのです。日本伝統工芸展、菊池ビエンナーレ、それでいいのです。偉い先生たちが応用芸術からアートまで織り交ぜてバランスよく日本人のその時の感覚に合わせて賞を与える。現代陶芸の<今>として、日本人の芸術として。当方はそれはそれでいいと思うのです。
西洋文明起源の<アート>はまったく別の方向から動かす方がいい。日本文化に根差した芸術をこわして西洋起源のアートを無理やり入れ込もうとすることは無駄であり、徒労です。
イタリア現代陶芸の、ニノ・カルーソやカルロ・ザウリ、イタリア現代ガラス工芸のリノ・タリアピエトラが日本に一石を投じたって、その波紋はどんどん日本の芸術としてアートから離れてゆくのです。日本の根底に横たわる日本の本音の中に拡散してゆくのです。リノ・タリアピエトラのように天才はそんな根底も覆す力があります。
でも当方が何気なく書いた文、<ガラスでは素人であったアーティストがガラスの世界に侵入し職人が長い間培ってきた技術の一部を使ってアートを作り始め、伝統工芸に逆流し影響を与える>これが我々がやるべきことだと思うのです。大石早矢香さんのように、アートから発想して、陶芸の技術の一部を使って自由な作品をつくる。こんな流れが大きな流れになって、伝統工芸に逆流し影響を与える。中村清吾の白磁にも影響を与えるでしょう。すでに与えているかもしれません。この逆流があって初めてリノ・タリアピエトラの作品が生まれ天才がうまれたのです。この逆流は必須なのです。
アートから発想して、伝統工芸の技術の一部を使って自由な作品をつくる。技術は、岡崎乾二郎さんが行っているように、何かに固定しないのです。私は陶芸家とかガラス工芸家とか彫刻家とか言うことはないのです。アートが出発にあるのです。アート⇒人の生命活動そのもの⇒新しい命/革新を追って自由に自分を表現すればいいのです。伝統工芸にこだわる方はこだわればいい、アートにこだわる方はこだわればいい。伝統工芸からアートへの流れとアートから伝統工芸への流れの双方が別々に自由に動くことが、双方に革新をもたらすと思うのです。勝手にうごけばいいのです。勝手にうごかねばならないのです。

ガラス工芸は素材や技術の革新がまだ続いていて、ずっと生き生きしています。まだまだ陶芸のように完成していない。その一部でいいのです、取り入れましょう。ガラス工芸で吹きガラスの達人にならなくてもいいのです。陶芸でロクロの達人にならなくてもいいのです。
なりたい人はなればいい、アートの達人になりたいひとはそうすればいいのです。

東京にはニューヨークのソーホーやイーストヴィレッジ(これは数10年前で、今はチェルシー、 ローワーマンハッタン、ブルックリンのようですね)のような自由闊達なアートの活動地がない。フィフスアベニューのような出来上がったものを、権威の確定したものを扱うところはあっても、未熟な胎動がうごめく、アート⇒人の生命活動そのもの⇒新しい命/革新がうごめく拠点が無い。大企業の本社は東京に集中しているのに、ベンチャーの集積地は無いのと同じ。日本の本音が3強さえ押さえておけばうまくゆくという考え、3強とは大企業、大都市、アメリカ。その中心が東京にある。日本の本音の中心地なのです。当方は海外の真似をするのはきらいですが、それでも、東京に自由闊達なアートの活動地を作りましょう。秋葉原・蔵前・浅草橋. サブカルチャーの街がソーホーやイーストヴィレッジのようになるのでしょうか。ハンドメードマーケットの集合のようで、まだまだエネルギーの爆発が足りない。もっとバスキアがうごめく街をつくれないものか。お金が無くても、自分を表現する場がなければ、それを見に来る人がいなければ、きっとできますよ。

以上、この長かったこのレポートを終了します。


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