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舞台裏の神々




お誘い頂き、ロイヤル・オペラ・ハウスのバックステージツアーに参加した。

近年、わたし以上のバレエファンに成長した娘が、練習中のダンサーが見られるかもしれないと空騒ぎする隣りで、わたしは、そんなに都合のいいものでもなかろうし、衣装部でチュチュを目撃できたらラッキーかなあ程度の期待を抱いていた。


実際は...十数倍よかったです。

しかもツアー施行中、娘に、「ママ、恥ずかしい」(<ティーンエイジャー独特の、あの)と繰り返しささやかれた興奮の数分間があったと告白しよう。

自分で自分の瞳孔が全開なのが分かった...全身が目になったような、あるいは「ベルサイユのばら」の登場人物のような目をしていたかもしれない。娘が恥ずかしがるのも無理はない。まあ彼女自身も人のことを言えた義理ではなかったが。


さて、何があったのか語らせて下さい。


英国政府公認ガイド氏の案内により、20人ほどのグループで、コヴェント・ガーデンに建つ英国のバレエとオペラの殿堂ロイヤル・オペラ・ハウスの内外を見学する。
ツアー内容は当日の事情や時間帯によって多少変動があるらしい。

以下ツアーの内容ネタバレを多少含むのでご注意下さい。


正面ロビーにて、17世紀にチャールズ2世の特許状を元に基礎ができ、ヴィクトリア時代にほば今の姿を形成し、20世紀最後に現在の完成形になった当劇場の簡単な歴史の説明をうける。
その後、ロイヤル・ボックスや、最も高額な客席からの眺めを体験。
オーケストラが、ちょうど当夜のオペラ「アンドレア・セニエ」のリハーサル前ウォーミングアップ中で、妙なる調べを聞きながらの見学だった。

フォワイエでは、その貸し切りに15000ポンド必要だとか(例えばBAFTAセレモニーはここで開催される)、ネリー・メルバ等オペラ歌手に関するエキセントリックな伝説に耳を傾けた後、いよいよバックステージへ。

まずは衣装部で準備中の「白鳥の湖」(2月10日から)の群舞の衣装を見せてもらい、気分も盛り上がる。

さらに奥に進むと「オシポヴァ」「オシポヴァ古」「コジョカル」と札の下がったチュチュが無造作に山積みに!!! もうすでにここで来た甲斐があったと思い始める。


そして次はいよいよお目当てのダンススタジオだ。

スタジオ入り口ドアの窓部分から一番に目に入ったのはYuhui Choeの後ろ姿。後ろ姿で彼女と分かった自分がすごいんじゃない? と思う...
のもつかの間、同じくバレエファンだとおっしゃる英国人のカップルに手招きされてガラス張りの通路側に移ると!

なんとラッキーなのだろう、英国バレエのプリンシパルが勢揃いで1月24日から始まる「オネーギン」のリハーサル中だったのだ!
おお、彼らは幻のオペラ座の怪人ではなく、実在していたのだね!

確認できたダンサーでけでもプリンシパルのFederico Bonelli, Matthew Golding, Sarah Lamb, Nehemiah Kish, Vadim Muntagirov, Marianela Nuñez, Natalia Osipova, Thiago Soares、
ファースト・ソリストのYuhui Choe, Nicol Edmonds, Bennet Gartside, Ryoichi Hirano, Valeri Hristov, Akane Takada, Valentino Zucchetti...


オシポヴァは回復したんだ! よかった!(年末「ドン・キホーテ」の舞台上で負傷した瞬間を目撃。2幕目からは高田茜さんに交代した。時間の関係だろうか、はしょられたバリエーションが複数あった不満を差し引いても、急きょ登場した高田茜さんはとても美しかった。そして舞台裏の茜さんも明日から映画女優になれるんじゃない? というくらい美しかった)

この間、ガイド氏のお話は全く記憶にない。

ただただ、神々のように麗しいダンサーの姿を目で追い続け、ティエゴ・ソアレスが1メートル先でにっこり笑って手を振ってくれたりして(彼の株急上昇。実物はもうめちゃくちゃ男前だった)、アイドルに夢中になる方々の気持ちがちょっとだけ理解できたぞ。

女性ダンサーが美しいのは百も二百も承知だったが、男性のダンサーってほんとうにほんとうにほんとーに麗しいのですな...まずやっぱり男は(男も)姿勢ですよ姿勢! これが美しければ3割、いや、間違いなく10割で男前度アップだ。
ああ、絵に描いたような王子様がわらわらと右に左に...天国か、ここは。

失礼しました。


好印象だったのは、スタジオ内にもちろん緊張感や真剣さはありつつも、どちらかというと和気あいあいとした和やかで楽しそうな雰囲気が漂っていて、それが非常によかった。ギスギスして意地悪し合っているような舞台裏(TVドラマ「赤い靴」覚えていますか)なんか見たらがっかりするもんね。
神々には余裕があり、かつ楽しそうでなくては!

娘は「頭の中では、スタジオの中に走って入って一人づつハグしてたの!」と。


ここですでに2015年1年間の運を使い果たしたような気がする。


後ろ髪を強烈に引かれながら、舞台裏手へ。

なぜロイヤルオペラで例えば、マチネでオペラを上演、夜は別のオペラ、翌日はバレエ...というのが可能なのかという話を伺い、その洗練度に驚く。ここにも神業を持ったプロの方々が。

上演中の「ドン・キホーテ」や「不思議の国のアリス」の舞台装置が魂を抜かれたように佇んでいたのがとても印象的だった...


このような流れで1時間半のツアーはあっという間に終わった。
終わってからもあれやこれや話が尽きず、帰宅して夫に報告してまた盛り上がり、娘に至ってはダンス友達とラインでさらに盛り上がっていた。


このツアー、こちらで簡単に予約でき、大人一人12ポンド(日本円で約2000円)、16歳以下8.5ポンド。

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