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one way




ポスト・カードを買うということ。

ケンジントン・ガーデンズのサーペンタイン・ギャラリーは、ミュージアム・ショップである本屋が非常に充実している。
先日訪れたときも展示を見るよりも先に本屋をうろうろうろうろしていたのだが、突然ポストカードを買いたくなった。

ポストカードを買うのは何年ぶりだろう!


むかしむかし、神戸のトア・ウエストにワン・ウェイというポストカード屋さんがあった。
トア・ウェストという概念ができた頃なので、80年代初頭の話だ。

店は黒と白とグレー、しかしモダンデザインではなく、木製の窓枠の黒、壁の薄いグレー、天井の白...壁にぎっしりポストカードが並ぶ、そんな感じだったと思う。もしかしたら全くの記憶違いかもしれないが。

アンリ・カルティエ=ブレッソンやアンドレ・ケルテス、ロスコーやラファエロ前派、ディートリッヒやアルレッティ、ヴィクトリア時代のレプリカ、広告のレプリカなど、時間をかけて選び、吟味しては買い、相当なコレクションになった。その後、実用品として使ったり、処分したりもして今は靴の空箱3つ分に残っている。


少女らしい夢と憧れを買いに行っていたのだと思う(今ならタンブラーで代用?)。
何と言えばいいのかなあ、子供が大人の現実世界にあるものの雛形である「おもちゃ」を欲しがるのとはちょっとだけ違う。
少女にとって、人生は「お話の中にだけあるもの」なのだ。ポストカードはその「お話」。
あるいは、カードは、指の隙間や、頭の中からふっと消えてなくなってしまいそうなものがなんとなく形になっていて、しかも箱の中にためておき、時々出しては眺めることができる。
なんと素敵な媒体なのか。

クオ・ヴァデスやロディアのしぶい手帳、ノート類を始めて手にしたのもあそこだったし、中間色のインク壷や、シールやしゃれた包装紙など、使うあてもなく買い集め、憧れの「神戸の大人」めざしてワン・ウェイ。



(写真はサーペンタインで買ったもの。頭蓋骨好きです)
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