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Brugge Style
maria alexandrova@english national ballet

ボリショイの、この世のものではありえないほど美しいが、感情や内面表現には少々欠けると批判されることもあるダンサーの中で、マリア・アレクサンドワは表現の豊かさと気持ちの良い大胆さが確かな技術力に裏打ちされたダンサーで、観客をぐいと引き込み、また実際大柄なこともあり、舞台上に大らかな大輪の花が咲くような存在感があった。
昨夜はイングリッシュ・ナショナル・バレエの「眠れる森の美女」にオーロラ姫役でゲスト出演する彼女を見た。
以下、ファンを怒らせるかもしれない。
しかし世の中にはあのスベトラーナ・ザハロワを嫌いな人もいるわけで(「ダンボールの切れ端」とか!)、いろいろな意見があってこそクラシック・バレエは今後何百年と存続していくのだとシロウト意見も大目に見てほしい。
アーティストの年齢のことは決して言いたくない。実年齢がいくつであれ、舞台上では16歳になり、60歳になるのがアーティストだと思うからだ。
しかし、昨夜のマリア・アレクサンドロワのオーロラ姫には確実に無理があった。
彼女の個性であり強みであった、姫役には不可欠の大らかさや大胆さ無邪気さが、そのコインの裏側にあるドタバタな厚かましさ、雑さに負けてしまっていて、とてもとても16歳の、空にかかるオーロラのように軽やかに光輝く姫には見えなかったのだ。
デジレ王子役のAaron Robisonはとても良かったのだが、彼との練習時間が短かったのだろうか、全く息が合っておらず、動きと動きの間の時間の不細工なあまり方にはハラハラさせられた。
また彼女をリフトするのは男性が気の毒だと思わせるほどどっしりしていて、実際彼女の体を支えきれずに、ああっ落とす! と思ったシーンもあった。

「眠れる森の美女」のオーロラ姫役は古典であり、鉄板の技術やコンディションが要求され、ごまかしや適当さや流しが全く通用しない役柄だと思う。
彼女はまだまだ踊れるし、観客もそれを望んでいるが、客観性は失わない方がいい。もっと別の役、今の彼女にふさわしい役をやればいいと思う。
スターをゲストに迎えるにあたって配役の政治もあるのだろうが、例えばの話、オーロラ姫ではなく、リラの精の役だったらもっと合っていたのではないか。
彼女に期待する観客をあのように悲しませてはいけない。
(写真はexpress.co.uk より " Bolshoi star Maria Alexandrova joins English National Ballet's Sleeping Beauty in June"記事中の「白鳥の湖」を踊るマリア・アレクサンドロワ)
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