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Brugge Style
emerging dancer 2018

イングリッシュ・ナショナル・バレエが、若手ダンサーの中から新しい才能を祝福し見出す趣旨で毎年開催しているEmerging Dancerを見て来た。
今年で開催9回目なんだそうだ。わたしは見に行くようになってまだ3年目。
去年は金原里奈さん、一昨年はセザー・コラレス(Cesar Corrales)が出ていたため見る気満々だったのだが、今年はわたしは「若きカリスマ!」みたいな人物を早々見つけられず、行く気になったのは2、3日前のことだった。
でも、やっぱり見に行ってよかった。
彼らは若く、そしてとてつもなく美しい。
特に男性が女性をリフトするときの軽々しさよ!
若いだけでも誰でもまあまあ美しいが、彼らの精神的な強さ、努力ができる才能、何よりダンスを愛する気持ちが会場にあふれていて、観客は魔法の栄養ドリンクを飲んだかのように即席で幸せになれる。
スピードと力のみなぎりはスポーツも同じだが、福田恆存が「藝術とは何か」で書いているように、スポーツは直線運動でなまの現実に即しているのに対し、ダンスは動と反動で織り成される円環、「創造と破壊」であり、ダンス独特の制御力、コントロールが美しい。
「外部から内部へ、すなわち根源から切り離されたものが根源的に復帰しようとする執拗な努力においてのみ、リズムのくりかえしがおこなわれる」(147頁)
「現代のスポーツは記録をめざしているがゆえに、進歩の概念と同様、往きがあって復がない運動であります。動があって反動がない。このことが、舞踏とスポーツを区別するーあるいは芸術とその他の人間活動、たとえば科学とか日常生活とかいうものを分けるー根本的な要因ではないかとおもいます。芸術には動があっても、それはかならず反動をともないます。いや、むしろ反動のために動を起こすといってさしつかえない。静止と完成とを獲得するために、わざわざ乱れた動きをやってみる」(113頁)
優勝したのは「海賊」を踊った男性ダンサーダニエル・マッコーミック(Daniel McCormick)で、「海賊」は振り付けと音楽そのものがものすごくアッピールするのを差し引いてもすばらしい踊りだった。
英国に住んでいる限り、毎年見に行こうと思う。
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