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すみれ色の「シシィ」のタルト





英国はベリーの季節である

ブルーベリーはモエの大好物である

ブルーベリーをフレッシュなまま大量に使った酸っぱ甘いお菓子が食べたい

ピエール・エルメのお菓子の本「イスパハン」に載っているような、見た目が美しく、おいしいケーキが食べたい

ロックダウンでケーキのひとつも買えないから自分で作るしかない

ブルーベリーの紫を、紫の菫(すみれ)のシロップと組み合わせてタルトが作りたい

菫は、あの奇矯な皇妃エリーザベトが好んだソルベだったとウィーンで聞いた


これが単純なわたしの頭の中である。


昨日もごろごろ大きなブルーベリーがあったので、早速先日のタルトを多少改良(まずは砂糖の分量を6割にした)し、飾り付けを多少インペリアル風味(粉砂糖の代わりに金粉にしただけ)にしたりして勝手に楽しんだ。



ヴェネツィアのコッレール博物館内には、フランツ・ヨーゼフ1世夫妻が滞在したクオーターが残っている。
彼らは1856年から翌年にかけて38日間、エリーザベト皇妃は1861年から7ヶ月間も滞在した。

たしかこちらに菫の柄の壁紙があったと記憶しているのだが、写真もなく、よく思い出せない。
イメージするだけでもかわいい、アウガルテンの菫のような美しい壁紙...

調べてみたら、彼女の好きな花である「鈴蘭と矢車菊」を意匠にした壁紙が貼ってある、と出てきた。
わたしの記憶違いらしい。

菫の花を美容と健康のために利用したことと混同してしまったのか...

エリーザベトが美容に執念を燃やしたのは、美が、宮廷内の権力そのものだったからである。



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