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頭髪に神通力やどる





イングランドのロックダウンのため、この一年間美容室に一度も行けず、昨日は背中まで伸びた髪を自分で15センチ切った...


世界中の多くの文化で、頭髪は、単に頭部を守る機能以外に、記号化され、神聖化され、特別な意味を与えられている。

真っ先に思いつくのは、西洋絵画のテーマにしばしば取り上げられる、サムソンとデリラの話である。

旧約聖書の『士師記』には、イスラエルの怪力の士師サムソンとその恋人デリラの話がある。
サムソンを取り除こうとするペリシテ人は、美しいデリラをスパイに仕立て、サムソンの強さの秘密を探らせる。
サムソンは彼女にさえ、なかなかその力の秘密を教えなかったが、ある夜とうとう恋しいデリラに打ち明けてしまう。
強さの秘密は頭髪にある、と。
デリラはサムソンが眠っている間に彼の頭髪を切り落とし(剃り落とし)、そこへペリシテ人が乱入...

頭髪には神通力が宿っているのである。

スサノオは、クシナダヒメを櫛に変えて自分の髪にさしてヤマタノオロチを退治する。
ギリシャ神話のベレニケ二世は、夫がシリア遠征から無事帰還したならば、自分の髪を美神アフロディテに捧げると約束して祈願した。

身体の中で頭髪は成長が目に見える部分である。そこには再生力、生命力が宿っていると考えられたのだろう。

わたしたちは今でも感情の昂りとともに「髪をかきむしったり」「髪を振り乱す」。

成人しては結髪し、何かをやめたり、出直す時には断髪する。俗世を離れる時にも、謝罪し反省する時にも、失恋した時にも。

分身として髪の束を贈ったり、呪いをかけるのに使われたりもする。


さて、もし日本一時帰国が叶うならば、生まれて初めてショートカットにしようと思っているのだが、どんなヘアスタイルにしようかなあ。

昔は、娘の幼い友達に「もえさんはオーロラ姫のようね...髪型が」「髪型だけかいっ!」(笑)
と言われたのだったが、さて。
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