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Brugge Style
「無意識の世界を可視化する」
ロンドン、ナショナル・ギャラリーの小展覧会、今は16世紀に描かれたマニエリスムの重要人物パルミジャニーノの『聖ヒエロニムスの幻視』とその習作。
わたしはマニエリスムが好きである。
マニエリスムは「マンネリ」の語源で、もとは「洗練された様式」という意味に過ぎなかったのに、時代とともに「型にはまった、退屈なもの」として使われるようになった。
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マニエリスムの前段階、16世紀初頭、ミケランジェロ、レオナルド、ラファエロの登場で、芸術は至高を極め、完成したとみなされた。
その後、それら完成型の芸術をコピーする流れができたのもむべなるかな。
やがて、単に真似るのではなく、「完璧な美」をさらに推し進める形で、技巧的で人工的、優雅でかつ不安定で幻想的な表現が誕生した。
ヴァザーリはマニエリスムを「自然を凌駕する行動の芸術的手法」と述べている。
マニエリスム作品には、少し触れたならすべてが崩壊してしまいそうな、明け方の夢のような危ういバランスがあり、わたしはそれをとても好む。ポントルモとか、ブロンツィーノとか、いいですなあ。
後世のシュールレアリスムのムーブメントは、「無意識の世界を可視化する」(日本語のシュールとは多少意味が違う)のに務めたが、「現実を歪め、超越することで新たな美や意味を生み出そうとする」という点でマニエリスムと共通しているのでは...
いずれにせよ、時代の世相を反映している。
はっ、そういえば日本文化にも「無意識の世界を可視化する」芸術に大変優れたものがある。
例えば能。
浮世絵の奇想派。歌川国芳のガイコツや、葛飾北斎の『百物語』とか...
でもこちらにはなぜか少し触れたなら崩れ落ちるような不安定さはないなあ...
と、シロウト意見でした。