THE TEST DRIVE!! クルマ好きによる試乗記&動画 (旧クルマ本を斬る!)

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ヴィッツ1.3ユーロスポーツに試乗! 名前に反するエンジンレスポンス

2020-08-19 19:08:40 | トヨタ Toyota

※インプレは新車試乗当時の内容です。

○概要
 トヨタの大ヒットコンパクトカー。それまでマーチの独壇場であったコンパクトカークラス市場を一気に席巻し、月間販売台数で何十年も王座に君臨していたカローラすら凌駕した。低価格、コンパクトなボディーながら広い居住性、プリウスなみの低燃費等々、ナンバーワンになる理由は数々あるが、特筆すべき点は、なんといってもその日本車ばなれしたデザインにある。一目でVitzと分かるその独創的なデザインは、従来の日本車的、保守的で野暮ったいデザインとは一線をかくし、欧州車なみのセンスを感じさせる。Vitzだけではなく、同じシャシーを利用したプラッツ、ファンカーゴ、bB、WillVIもそれぞれヒットし、まさにトヨタに敵なし、といった状況。

○居住性★★★★
 まず乗車して驚くのが、そのヒップポイントの高さ。座面が想像以上に高いのだ。実は、乗車する前は、Vitzの斬新なデザインを構成する要素のひとつである、ワイドラインの高さが視界不良に結びつくのでは、と懸念していたが、なるほどこのアイポイントの高さなら不満のない視界の広さが確保できる。インパネも、さすがに高級感はないが、エクステリア同様斬新なデザインで新鮮、もちろん操作性に不満はない。後部座席にも座ってみたが、見た目以上に空間が広く、大人4人でも過不足なく乗車可能。ただ、さすがに後部座席では、そのウエストラインの高さが災いして開放感には欠けるが、頭上空間が広いので、それほど閉塞感は感じないだろう。このサイズでこの空間、見事というしかないパッケージングである。

○動力性能★★
 結論から言うと、非常に残念だ。私が試乗したのは排気量の大きい1.3Lだったので、さすがにパワー的には街乗りではそれなりのレベルだった。しかし、そのフィーリングは最悪。電気モーターのように、アクセルオンかオフ、この2つしかない。パーシャルスロットというものがないのである。つまり、走り味とか、ドライビングプレジャーなんてものは皆無で、ただ走るだけの箱、といった感じ。ちなみに静粛性については、さすがにこのクラスなり、といったところ。あと、エアコンを欠けると結構パワー不足を感じさせる。
 ボディはさすがに新型だけあって、このクラスにしては剛性感がある。足回りも、安定指向だが、それなりだ。逆に、このしっかりしたボディ周りが、エンジンの味気なさをさらに増幅させているのかもしれない。かえすがえすも残念だ。

○結論
 MR-Sの時と同様、非常に残念な思いでいっぱいだ。マーチと比較すれば、安全性、デザイン、居住性、燃費、ほぼすべての面でVitzは勝っている。しかし、私なら”走る楽しさ”というただ一点のため、マーチを選ぶだろう。トヨタはこのクルマを、アルテッツァと並んで欧州戦略の一つとしているが、このエンジンは致命的だろう。なにしろ欧州はコンパクトカー王国で、しかも誰でもMTで走りを楽しむ傾向にある。このエンジンでは、市場を開拓するのは困難なのではないだろうか。確かに燃費や低公害性は今後も重要なファクターだが、車としての楽しさを放棄する理由にはならないだろう。まあ、逆にいえば、クルマに走る楽しさを求めない人には、ベストチョイスといっていいクルマと言える。情報誌によれば、この秋にもトヨタはVitzに1.5Lのスポーティバージョンを出すそうで、こちらは期待したい。しかし、最初1Lだったスポーツ仕様が、1.3Lになり、また今度は1.5Lになるなんて、少々消費者を馬鹿にしてないか?それなら最初から出せばいいのに・・・