チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

沖縄環境ネットワーク総会での基調講演---辺野古新基地建設、和解の前提が崩れ、国はますます苦境に

2016年06月26日 | 沖縄日記・辺野古

 6月25日(土)、沖縄大学で沖縄環境ネットワークの総会が開催された。桜井国俊さんの挨拶に続き、辺野古から安次富浩さん、高江の伊佐真次さん、泡瀬について桑江直哉さん、米軍用地汚染問題について河村雅美さん、女性の人権について宮城恵美子さんらが報告されるという盛り沢山な内容だった。

 私は冒頭に「今後の裁判結果がどうあれ、防衛局は埋立工事に入ることはできない」と題して基調講演をさせていただいた。直前に国地方係争処理委員会が想定外の結論を出したため、当初予定していた内容から少し外れ、今回の係争処理委員会の審査結果についての説明と、今後、辺野古はどうなっていくのかについて話をした。結論は、国はますます苦境に陥っている、辺野古新基地建設はさらに困難になってきたということである。

 

 以下、昨日の講演の概要を説明する(講演の後半は、工事再開を阻止するための知事権限について話をしたが、その部分は省略する)。

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  辺野古新基地建設事業は、国と県との和解(3月4日)により翁長知事の昨年10月13日の埋立承認取消処分が効力を回復し、国は工事を全面的に中止せざるを得なくなっている。その後、国は県に対して、埋立承認取消処分の「是正の指示」を行い、県はただちに国地方係争処理委員会に「是正の指示」の取消を求める審査を申し出た。

 ここまでの経過は、和解条項の通りに進んできた。国のもくろみは「急がば回れ」、すなわち和解条項に基づく迅速な裁判手続きでこの問題に決着をつけようというものであった。和解条項では、国地方係争委員会が「是正の指示」を違法、又は適法と判断しても、いずれの場合も県が高裁に「是正の指示」の取消訴訟を提起するとされている。そして和解条項第9項は、「国と県は、是正の指示の取消訴訟判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文及びそれを導く理由の趣旨に沿った手続きを実施するとともに、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する」と結ばれている。政府は、この第9項をたてに、「今後の裁判で県が敗訴すれば、県は埋立に協力しなければならない」と強調してきたのである。

 この国地方係争処理委員会の審査結果が6月21日に通知された。係争処理委員会は、「国と県が真摯に協議し努力することが問題解決への最善の道」として、「埋立承認取消しに対する国の是正指示の適否は判断しない」と結論したのである。

 和解条項では、「国地方係争処理委員会が是正の指示を違法でないと判断した場合、県に不服があれば1週間以内に是正の指示の取消訴訟を提起する」とされていた。国は、係争処理委員会は是正の指示を違法とは判断しなかったのであるから、県は和解条項に基づき高裁に提訴すべきだと強調した。

 しかし県としては、今回の係争処理委員会の結論は、「是正の指示」についての判断を避け、真摯な協議を求めたものであるから、何の「不服」もない。県は6月24日、国に早期の協議開催を求める文書を送り、県からは提訴しないと表明した。

 国が狙っていた、和解条項に基づき県に提訴させ早期の司法決着を図って工事を再開するという思惑は根本から崩れてしまったのである。県は、このままの状態で様子を見ておればいいのだ。翁長知事の埋立承認取消処分はそのまま生きており、国は工事を再開することはできない。

 国の「是正の指示」もそのまま残っているが、それだけでは何の意味もない。国が工事を再開するためには、国の方から裁判を起こさなければならない。地方自治法では係争委の結論が出た後も県が是正指示に従わない場合は、国が県を相手に違法確認訴訟を起こすことができるとされている、しかし、違法確認訴訟が確定してもそれだけでは執行力はなく、工事再開のためには国はさらに代執行訴訟を提訴しなければならないのだ。

 ただ、国はこうした手続きを取らずに、再度、なりふりかまわずに行政不服審査法に基づいて埋立承認取消の効力の停止を求める執行停止と審査請求を申し出る可能性もある。また、違法確認訴訟を経ずに代執行訴訟に踏み切るかもしれないとも言われている(2016.6.22 沖縄タイムス)。しかし、これらの手法はいずれも今回の和解で取り下げざるを得なくなったものであり、和解条項、国地方係争処理委員会結論で繰り返し指摘された「円満解決に向けた協議」「真摯な協議」を行わないまま強行手段を繰り返せばますます強い批判を受けることは必至である。

 いずれにしろ、当初、国が狙っていた年末までに「是正の指示」取消訴訟の決着をつけ、来年1月には工事を再開するというスケジュールは大幅に遅れることとなる。国が違法確認訴訟や代執行訴訟を提訴しても、それらの訴訟の判決が確定するまでには相当の時間が必要であり、それまで工事には着手できない。

 今回の国地方係争処理委員会の判断により、和解の前提が崩れ、国はますます苦境に陥っていると言えよう。辺野古新基地建設事業は必ず頓挫する。 

 

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