9月11日投開票の沖縄県知事選に下地幹郎氏が立候補を表明し、7月26日、その政策を発表した。辺野古新基地建設事業については、次のように述べている(2022.7.27 沖縄タイムス)。
1.大浦湾の軟弱地盤は埋立させない。すでに埋立てられたエリアはオスプレイの格納庫用地にする。
2.普天間飛行場の訓練を馬毛島へ移転する。その後の普天間飛行場は軍民共用化する。高台の普天間飛行場は津波などの災害時に有用で、2800メートルの滑走路を活用すべき。民間活用によって宜野湾市の経済効果につなげる。台湾有事などの危機で、辺野古の滑走路がない以上、普天間飛行場を使用できるようにする。
佐喜真淳氏が「辺野古容認」を打ち出す中で、下地幹郎氏は「辺野古移設を止める。大浦湾の軟弱地盤は埋立てさせない」、「今回の選挙は保守の分裂ではなく、辺野古を終わらせるのか、終わらせないのかを問うことが最大の争点だ」と強調している。明らかに、玉城デニー支持層からの票を念頭においているのだ。
馬毛島への訓練移転、普天間飛行場の存続等、下地氏の訴えは論外としかいえないが、工事を中止させた後、すでに埋立られてしまった辺野古側の土地の利用法に言及した点は注目される。
この点については本ブログでも、米軍岩国基地の埋立承認処分取消請求訴訟の広島高裁判決(2013年11月13日)について触れてきた。この訴訟は、岩国市の市民らが米軍岩国基地拡張の埋立承認の取消しを求めて提訴したもので、判決主文では「 出訴期間を過ぎている」として却下されたが、注目すべき内容の判決文となっている。
一審の広島地裁判決では、「埋立工事は既に終了しており、埋立地を海面に回復して原状回復を図ることは社会通念に照らして法律上、不可能。また、国が行う埋立の場合、埋立承認の効力が消滅しても、国は原状回復義務は負わない」と住民の訴えを退けたが、二審の広島高裁は、「知事の埋立承認の効力が消滅したときは、---国は原状回復義務を負うものと解すべきこととなる。埋立工事の竣工後に埋立承認の効力が消滅した場合も、国は原状回復義務を負うと解するのが相当である」と判示した。この部分は、最高裁でも取消されておらず、そのまま確定している。
すなわち大浦湾の埋立を断念した場合、国は、辺野古側での広範囲な埋立地について、原状回復義務を負っているのだ。技術的にも難しい問題だが、国の責任で実施しなければならない。「オスプレイの格納庫」にすることなど論外である。