沖縄平和市民連絡会は、6月21日、公有水面埋立事業における県外土砂持込みに際して、特定外来生物の侵入を防止するための土砂条例の改正を求める陳情書を県議会に提出した。6月29日、土木環境委員会でこの陳情が審議されるというので、傍聴した。
辺野古新基地建設事業もいよいよ8月中旬には土砂投入が始まるが、最初の埋立土砂は本部・国頭から運ばれるので、県外からの土砂搬入はもう少し先になる。
しかし、沖縄県の土砂条例が最初に適用された那覇空港第2滑走路埋立事業(当初の予定を変更し、12.5万㎥の石材が奄美大島から持ち込まれた)の経験からも、この土砂条例の限界が明かになっている。辺野古埋立では、最大1700万㎥もの大量の土砂が県外から持ち込まれる。また、防衛局は2014年以後、埋立承認の際の留意事項も無視し、県の再三の行政指導にも従わずに事業を強行してきた。このような防衛局の事業の進め方からも、現在のままの土砂条例ではとても対応できないのではないかと問題になっている。
そのため、土砂条例を強化し、辺野古新基地建設事業に十分対応できるよう、3点にわたって条例を改正するよう陳情したのだ。
下の表が、この条例改正の陳情に対して沖縄県が示した「処理方針」である。
県は、陳情内容に対して誠実な「処理方針」を全く示していない。我々は、辺野古の場合は、土砂の量がきわめて大量であるために審査期間の延長を求めたのだが、県は、「アセスの審査期間は90日」などと他の条例を持ち出してきた。届出に係る審査期間は、それぞれの条例によって異なるものだ。
また、「冬季は特定外来生物の発見は困難となるから審査期間の特例を求めること」、「審査期間を延長できないのであれば、1回の届け出の土量を制限すること」という陳情に対しては、全くのピント外れの回答に終っている。
特に我々が問題としているのは、条例に罰則規定がなく、知事が持込み中止勧告をしても拘束力がないことだ。条例には、「知事は、事業者が勧告に応じないときはその旨を公表することができる」という規定しかない。そのため、土砂条例が制定された際、防衛省幹部は、「土砂条例には罰則がない。ダメだと言われても埋立承認を得ているから土砂投入にためらいはない」と言い切っているのである(沖縄タイムス 2015.7.8)。
この点について県は、「氏名等の公表は社会的責任を果たさない事業者への社会的な制裁ととらえ、罰則と同等の効果がある」と答えているが、辺野古での防衛局の今までの違法・違反な事業の進め方を黙認したあまりに楽観的な回答と言わざるを得ない。
また県は、外来生物法では、特定外来生物の運搬が禁止され、処罰の対象となっているから大丈夫だという。しかし、埋立土砂の中にアリやクモが混ざっていることをもって、外来生物法の罰則規定が適用されるとはとても考えられない。適用するためには、搬入されたアリやクモを具体的に特定して示す必要があるが、それは不可能に近い。
今日の委員会では十分議論が深まらなかったが、今後、条例改正に向けた運動を強化していきたい。特に罰則規定が追加されれば、辺野古新基地事業を止める大きな手段となる。
我々だけではなく、辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会も、条例改正に向けた取組みを始めている。7月2日(月)には、役員さんら3名が来沖され、与党県議団との意見交換が予定されている。