なんとなくクラシテル

獣医という仕事をしている人間の生活の例の一。
ほとんどが(多分)しょーもない話。

農水省

2020年06月11日 | 

の今回の法改正について、「可愛い可哀そう」を抜いた、反論をするとすればこうなる。

1)そもそも、農水省は、今まで放牧を推奨してたじゃないですか、という事。それは、こちらのページからもはっきりしてます。だから、そんなら、ってことで導入している農家さんも多かろうと思う。それをいきなり部分的とはいえ撤回して、しかも速攻畜舎つくってくれったって。振り回される側になってほしいと。

2)今まで豚熱にせよ、鳥インフルにせよ、きちんと感染経路というか、そもそもどういう風に感染が広がったのか、という追跡をしたことありましたっけ?初発拡散終息について、調査がきちんとできている感じがしないんですよ。あと、畜舎飼いの場合、一旦ウイルスが侵入してしまえば、大増殖しちゃう条件がむしろ揃い過ぎてて、畜舎隔離したら感染拡大が収まった、なーんて試しはない、のも事実。

 放牧だと動物が頑健だから大丈夫、という理屈は屁理屈です。ただ、どういう管理をしてるのかを、きちんと調査しないで(しかも推奨しておいて)いきなりの方針転換じゃ、反発食って当然じゃないかと思うのね。

 ウイルスを一番持ち込む可能性が高いのは、結局「人間」。以前大流行した馬インフルは、初発からあっという間に全国に広がってしまったが、あれはもう、複数の乗馬クラブだの競馬場だのを行き来している人間が広げちゃったこと間違いないんですよね。そういう業者は山ほどいて、装蹄師や獣医もそうだし、飼料業者とかクラブの客もそう。しかも、そういう人間はほぼ、衛生管理の何たるかについて無知。馬の獣医がなんも知らんのだから。

 ウイルス感染の初発は、どうも「運」みたいなんですけどね。どう飼っても危険性は同じじゃないかとも思う。

3)今現在、コロナ関連で酪農業が受けてる打撃は相当なものがある。簡単に言うと資金ショートすれすれ、そこで、更に設備投資してくれって、無茶ぶりもいいとこじゃないですか。自殺する農家さんが出ちゃいますよ。

 以前鳥インフルを出して、自殺しちゃった養鶏農家さんがいましたけど、あの時のマスコミのつるし上げときたら凄かったもんねえ。同じことを放牧農家さんにやる気なのか?と思ってさ。

 自分がいた研究室は、豚熱の検査法を開発した方が教授だったので、豚熱については、それなりに関心を常に持っている。教授の最終講義でも「ワクチンか?殺処分か?」というのがテーマになりました。原則殺処分でないとダメだ、というのが結論だったと思うけど。

 ちなみに、豚熱より更に恐ろしいアフリカ豚熱に関しては、ワクチンもできていない。従って、これが入り込んだら(今のところ日本には入っていないが)もう、殺処分&放牧全面禁止になりかねない危険性はある。本当に、危険はすぐそばにある。そんな薄氷状態で養豚をやる、というのは大変だ・・・・。

 とにかく、この件については可愛い可哀そうを論点から外して物を言うべきじゃないかと思います。自分が農水省の役人または政治家だったら、まずはとことん調べるな。ミシュラン調査員みたいに身分を隠してさ。その上で色々やります。どうも、自分で調べてない人たちが机上でこしらえた案に思えてならないんですよ。

コメント
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