第3回緊急事態宣言が発せられ、東京の百貨店などで休業が相次いでいます。その初日に川崎や横浜では人通りが増えたというのですから、訳がわかりません。今週月曜日(2021年4月26日)、私は東松山校舎での講義のために東急田園都市線、JR山手線、東武東上線を乗り継ぎましたが、山手線の外回りを除いて混んでいました(8時台の山手線外回りはコロナ渦より前でもそれほど混雑していなかったと記憶していますが)。
そもそも、第2回の緊急事態宣言がどれほど意味があったのかがわかりません。その最中に変異株が猛威を振るい始めており、新規感染者数は増えていました。重症患者数も増えていたはずです。それなのに、大阪府などでは早い段階で解除されており、東京都なども3月21日に解除されました。明らかに聖火リレーのためですが、主客転倒と言うべきか筋違いと言うべきか何と言うべきか、無茶苦茶です。大阪府では医療崩壊が起こってしまいました。救急車の出動から搬送先の病院が決まるまでに47時間もかかったという話を聞いて、胸が痛みました。これでは助かる命も助からないからであり、誰にでもその可能性はあるからです。COVID-19以外の重い病気にかかっても、いや、比較的軽い病気にかかったとしても医療を受けることはできなくなりかねません。
また、4月27日の16時35分付で時事通信社が「政府、ワクチン接種に自衛隊投入 来月24日、東京に大規模会場」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042700918&g=pol)として報じており、これは末期症状の始まりのようなものではないかと思いました。国防が手薄になることは間違いありませんし、他国でワクチンの接種などに軍隊を投入するところなどないでしょう。この記事によると、菅義偉内閣総理大臣は、岸信夫防衛大臣に対して「『防衛省・自衛隊はわが国の最後のとりでだ。新型コロナウイルス感染症対策という国家の危機管理上、重大な課題にその役割を十分に果たしてもらいたい』と語った」というのですが、事実上、もう切るべきカードも手もない、少なくとも自分には思い浮かばない、ということを語ったようなものです。ワクチンの接種に軍隊を投入する国など、軍事政権下の国でもなければ皆無に近いでしょう。そもそも、ワクチンの確保はできているのでしょうか。できていなければ、自衛隊を投入する意味もありません。
その一方で、東京五輪組織委員会は日本看護協会に500人もの看護師の確保を要請しています。医療逼迫どころか崩壊も現実化している状況を理解した上でのお願い(?)とは到底思えないのですが、暴走か妄想か(「両方だろ !?」という指摘を受けるでしょう。勿論、その通りです)、ただでさえ遅れているワクチン接種は出場選手優先などとも報じられていますから、一体この国は何を目的にしているのかと嘆きたくなります。行政法や税法の講義を担当している私は、国や地方公共団体の果たすべき任務が何であり、そのために行政活動なり財政なりがあると一応は講義の場で説明するのですが、教室で話していて空しくなります。情報公開法を講義で扱う時の空しさと同じか、それ以上です。憲法学で基本的人権を扱う際にも、国家の任務は国民の権利・自由を守ることであると学ぶでしょう。近代以降の立憲主義の大前提です。この権利・自由は、勿論、生命の保護が含まれます。我々には生きる権利、生きる自由があるからです。現在の日本がどうなのかは、私が記すまでもないでしょう。今の政府や東京都が「何が何でもオリンピックを開催する」という意向を強く出すのであれば、国家や地方公共団体の果たすべき任務を放棄したということです。
これほど感染が拡がっていても、文部科学省は教室での授業・講義を行うよう、大学などに求めています。たしかに、学生の意向を考えるならば、教室での授業・講義が最適解です。多くの教員にとっても同じです。しかし、第3回緊急事態宣言が出されてから、オンライン講義への切り替えを行った大学が多くなっています。これは仕方のないことですし、従来オンライン講義が進んでこなかったということは、日本が後れを取っていたということを意味するだけです(もっとも、予備校には既に行われていた所もあったと記憶しています)。おそらく、今回の緊急事態宣言も延長されるでしょう。このブログの「中途半端な緊急事態宣言/中銀カプセルタワーの話」でも記しましたが、期間が短く、感染拡大を減少に転じさせることは非常に難しいと思われるからです。私自身は、講義の場でいつ完全オンライン講義に切り替わるかもしれないということを学生に伝えています。変異株が若年層にも重い症状をもたらしうる(変異株でなくともそうであったでしょうが、比率が高いということのようです)以上、感染の拡大が学生に多大な被害を及ぼしうると感じているからです。
多くの大学は、2021年度の講義をどのようにするかについて相当悩んだはずです。パンデミックが1年以内で収束する訳がなく、まして日本では長期化かつ重篤化する可能性、というより蓋然性が十二分にあるからです。原則は教室での講義としつつ、オンライン講義〔これはオンライン生講義とオンデマンド講義(いわば録画放送)とに分かれます〕、ハイブリッド講義(教室での講義とオンライン講義との併用。基本は同時進行)を選択できるようにしたでしょう。私の場合、本務校である大東文化大学では教室での講義を行っていますが、担当講義の3分の1で教室での講義、3分の2でハイブリッド講義を行っています。一方、中央大学経済学部ではオンライン生講義(いわば生放送のほう)、國學院大学法学部ではオンデマンド講義です。2020年度は、筑波大学法科大学院の講義を除いて自宅からのオンライン生講義でしたが、2021年度は4種類の講義をこなさなければならないのです(あくまでも前期の段階においてです)。
こういう立場にあると、日本経済新聞2021年4月27日付夕刊11面3版に掲載された「『宣言終了後は対面授業』 文科相 大学オンライン拡充巡り」という記事には憤りを感じざるをえません。或る意味で日経らしい記事ですが、大学教員は「余計な御世話!」と怒ってよいでしょう。私が特に憤りを感じたのは、萩生田文部科学大臣の「感染拡大に配慮しながら一定の対面授業をおこなうこともできる。オンラインにやすきに流れることは起きてはならない」という趣旨の発言です。
「くぎを刺した」?
「冗談じゃない! 何ならあんたがオンライン生講義でもオンデマンド講義でもやってみな!」と言いたくなります。準備などがどれだけ大変なことか。また、教室での講義と違い、オンラインでは生であっても学生たちの顔が見えない、または見えたとしても反応などが見えにくいので、どれだけやりづらいか。教室での講義は、或る意味で落語やジャズ演奏などと同じで、場の雰囲気や反応を見ながら話の方向や難易度、さらにテンポを変えたりします。しかし、オンラインではこうしたことが難しくなります。反応がわからず(または全くなく)、やりづらいという意見は、昨年度にもいくつか目にしています。オンライン講義は、学生にとっても苦になりうるとともに、教員にとっても苦になりうるものなのです。2021年度になってからオンデマンド講義を始めましたが、途中で録画を終了して最初から撮り直したこともありました。終えないで録画を続け、後で編集してもよいのかもしれませんが、私は己の姿の録画を見返して満足するような性格ではありませんし、編集となると大変な時間を要します(一度、Zoomで行おうとしたのですが、ネット回線の接続状況によっては力のあるパソコンでも長い時間がかかります)。また、Final Cut Proなどの編集用ソフトを使いこなせなければ、よいオンデマンド講義を仕上げることはできないかもしれません。編集について大袈裟なことを書いたかもしれませんが、手間がかかることはおわかりでしょう。編集を行わないとしても、Zoomの録画機能を使うと、ファイルの完成までにそれなりの時間を取られます。
他方、前の段落と矛盾するかもしれませんが、ハイブリッド講義を採用すると、オンライン講義で出席する学生も少なくありません。つまり、少なくともCOVID-19が猛威を振るう中では、教室よりもオンラインを選ぶ学生も存在するということです。私自身、その旨の質問や意見を受けたことがあります。このブログの「オンライン講義で『これはよいな』と思ったもの チャット機能」において記したように、オンライン講義であるからこそ教員に質問をしやすかったという学生もおります。講義方法の多様性はできるだけ確保したほうがよいということでしょう。
もう少し、講義について記しておきます。ハイブリッド講義が大変なものであるということは、先週、今週の経験でよくわかりました。時々、教室に備えられているLANをPC(私が普段から使用しているMacBook Pro)に接続しても、通信がつながらないこともありますし、接続はできたけれども途中で何度も切れてしまうこともあります。19日3限の講義では、教室での回線接続が不安定になって何度も通信が途切れましたし、27日5限の講義では開始の直前に通信がつながらず、開始時間が遅れてしまいました。また、教室にカメラが備えられていればよいのですが、そうでなければ私のPCに付けられているカメラを利用せざるをえませんので、PCを置く場所などによっては私が画面に映らないということもあります。だからと言ってPCの画面を見てばかりいると、教室にいる学生たちに顔を向けていないことにもなります。教室にある機材次第なのですが、さらに試行錯誤を重ねて工夫するしかないのでしょう。
そして、皆様には、生の自分の声と録音での自分の声が違って聞こえるという経験がありますでしょうか。私は常に経験していますので、マイクを使って話すことも好きではありませんし(使うとしてもワイヤレス型のピンマイクを付け、口からマイクを離して大声で話します)、録音で自分の声を聞きたくありません。何度も、RolandのVTシリーズ(ヴォイス・トランスフォーマー)を買おうかと考えています。iPad版のGarage Bandにはヴォイス・トランスフォーマーの機能が付いていますので、どうにかしてオンデマンド講義に利用できないか、などと思うこともよくあります。
最後は変な方向に進んでしまいましたが、今日はこの辺りでお開きと致します。
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