ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

長電バス、日曜日は当面運休へ

2023年12月19日 15時40分00秒 | 社会・経済

 今朝(2023年12月19日)、Yahoo! Japan Newsに掲載されたニュースを見て知りました。長野放送、信越放送などが報じており、長電バスの公式サイトを見ると、2023年12月18日付で「長野市内路線バスの『日曜日運休』について」という文書が掲載されています。

 この文書によると、北陸信越運輸局長野運輸支局に届出がなされたのは12月15日のことです。2024年1月21日から、長野市内のバス路線について日曜日の便を運休とすると書かれています(詳細は「長電バス『日曜日運休』バス路線一覧」をお読みください)。

 やはり2024年問題が原因でした。それほど長くない文書なので全文引用に近くなってしまい、長電バス関係者の皆様には大変申し訳ないのですが、県庁所在地の公共交通機関の実情がわかるものですので、紹介させていただきます。

 相当に深刻な事態に陥っていることは、次の部分からよくわかります。

 「慢性化する運転士不足の中、生活交通路線バスを維持するため、貸切バスや高速バスの運転士を生活交通路線に充当させ、路線バスの不足分を埋めているのが現状です。こうした状況が続きますと、利益の出る貸切バス・高速バス事業で路線バスの赤字分を補っていた内部補助による生活交通路線バスの維持が成立しなくなります。」

 「運転士確保については、大型バスの運転体験や沿線市町村に対する運転士確保依頼など手を尽くしておりますが、新規採用が予定どおり進まず改善には至っておりません。」

 最近、田園都市線を走る電車でもバス運転士募集の広告を見かけます。東急の電車なら東急バス、東武の電車なら東武バスという訳ですが、とくに東武の広告は派手です。今まで、電車の中でバス運転士募集の広告がなかった訳ではないのですが、ここまで他の広告を圧倒するほど目立つものは見たことがないというほどに派手なものです。余程のことなのだろうと推察されます。

 その東武バスの広告を超えていると思われるのが長電バスの上記文書です。内部補助は、多少とも公共交通に関心を有する者にとっては周知の事実ですが、ここまでストレートに表に出した文書はあまりないでしょう。一般向けというか一般の乗客向けの文書であるから、事情を説明しなければ理解を得ることはできないと考えられたことによるのでしょう。

 内部補助も限界に近づいているということでしょう、「そのような状況下、繁忙期(冬山シーズンやインバウンド輸送)を迎え、さらには積雪・ 凍結による運行時分の遅延も予想される中、運転士の労働時間がこれまで以上にひっ迫す る恐れがあります」とも書かれています。

 人員配置に苦心していることがよくわかります。その上で、次のように述べられています。

 「公共交通を担う弊社は、お客様を安全・安心に輸送することが使命であり、そのためには運転士の良好な労働環境を担保する必要があることから、苦渋の選択として、通学・通勤・通院に比較的影響が少ない日曜日を運休の対象とすることとしました。ご利用の皆様には、多大なご迷惑をお掛け致し、不本意ではありますが、何卒、ご理解を頂きますよう、よろしくお願い致します。」

 気になるのは、いつまで続くかということです。長電バスが示したのは条件付きの将来です。同社が想定する水準まで運転士が増えれば日曜日の運行が再開されます。これに対し、さらに運転士不足が進んだ場合には、日曜日の運行休止に留まらなくなる旨も書かれています。

 ちなみに、2024年1月1日には、長電バスの路線のうち、市街地循環バス「ぐるりん号」、須坂地区の仙仁線および米子線、中野・湯田中地区の上林線、飯山地区の野沢線および木島平村シャトル便のみが運行され、その他の路線は全て運休となります。また、1月1日に運行される路線でも他の日に運休になるとのことです。

 今年に入ってから、路線バスの減便を発表する会社が多くなりました。現在のところ、大阪府の金剛バス以外は事業を全面的に廃止する会社は現れていませんが、動向次第では再編が見られるかもしれません。

 なお、金剛自動車のサイトによると、12月15日の18時30分をもって喜志営業所が閉鎖されたとのことです。同日から12月20日までは富田林営業所に業務が集約され、全面廃止を迎えることとなります。今日は12月19日ですから、明日が金剛バスの最終営業日ということです。

 


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2 コメント

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ジリ貧 (ボッケニャンドリ)
2023-12-19 20:33:19
地元ニュースで知りました。

運転士を育てようって発想が無いなという印象が残ったけどどうなんでしょ。
返信する
育てようにも成り手がいないということでは? (川崎高津公法研究所長)
2023-12-20 00:18:34
長電バスに運転士を育てようという発想がないのかもしれませんが、あるとしても成り手がいないというのが本当のところではないか、と思います。
東急バスは、大型自動車運転免許(おそらく二種免許のことであろうと思われます)の取得の費用を出すというようなことを広告で示していますし、他のバス会社では運転士候補者として入社した人には祝い金のようなものを出すという宣伝をしているところもあります。
しかし、バスの運転士になるには、大前提として普通自動車運転免許を持っていることが必要ですし、小前提として大型自動車運転免許を持っていることが必要です。しかも、一種免許では路線バスを運転することが許されませんから二種免許となります。
道路交通法を参照すると、大型自動車運転免許を取得するためには、21歳以上であること、普通自動車運転免許など一定の免許を取得してから3年以上が経過していることなどが要件となります。加えて、二種の場合、技能試験の合格率もかなり低くなるそうです。
ここ10年か20年ほど、若者の車離れと言われています。何処まで本当かはわかりませんが、学部生と話をしていると、たしかに私の学部生時代よりは自動車運転免許の取得率が低くなっているような気もします(私の経験上、首都圏だけの話でもありません)。
また、地方によっては、高齢の運転士に代わるべき20代の人があまり多くないのではないでしょうか。あとは、非常に大事な労働条件(給与水準を含めて)でしょう。私のように普通自動車しか運転しないものであっても、自動車の運転は神経を使うのですから、大型自動車であればなおさらです。コストパフォーマンスが優先的に考えられるような世の中では運転士の成り手がいなくなるのも理解できるかな、と感じています。
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