ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

第204回国会に政府から提出された法律案および関連資料にミスが多発

2021年03月24日 12時00分00秒 | 国際・政治

 仕事の関係で、私も国会に提出された法律案およびその関連資料を目にすることが多いのですが、誤字などのミスはどの程度あるのでしょうか。

 このように書くのは、現在開かれている第204回国会に政府から提出されている法律案およびその関連資料にミスが多いと報じられているからです。今日(2021年3月24日)付の朝日新聞朝刊4面14版に「また法案ミス、21カ所 野党抗議『前代未聞』」という記事が掲載されています。

 今回は、内閣提出法律案第23号の「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」です(記事では産業競争力強化法改正案と記されています)。名称からして経済産業省所管であることがわかります。衆議院が議案として受理したのは2021年2月5日のことですが「すでに条文案に3カ所の誤りが見つかっていた」そうで、さらに「改正で削除する条文の指定に1カ所誤りがあった」、法案とともに提出される参考資料にも20箇所の誤りがあったということです。

 この法律案は衆議院のサイトにも掲載されています。ミスが修正されているのか否かは不明です。

 立憲民主党の安住国対委員長は「前代未聞」で「閣議決定をやり直すよう求めた」そうです。政府提出法律案なので、内閣法制局のチェックが入っているのではないかと思われますが、不十分だったということなのでしょう。少なくとも、地方自治研究所の地方自治立法動向研究会に参加させていただくようになってから、ここまで政府提出法律案にミスが多いという話は聞いたことがありません。

 今月10日の朝日新聞朝刊4面14版には「法案 政府に緩み? 誤字・取り下げ・提出期限超え」という記事が掲載されています。その記事に書かれているのは、デジタル改革関連法案(おそらく、内閣提出法律案第26号「デジタル社会形成基本法案」、同第27号「デジタル庁設置法案」、同第28号「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」のことでしょう)の要綱などに45箇所の誤りがあったこと、地域的包括的経済連携協定承認案について日本語訳が欠落していたこと、土地規制強化法案について調整不足のために期限を超過し、提出できなかったこと、などです。

 国会には、法律案そのものの他、要綱などの関連資料が提出されます。また、衆議院調査局により作成された資料も付されます(国会図書館で閲覧することも可能です)。誤記などがあった場合には審議に影響が出ることがあります。たとえば、「改正で削除する条文の指定に1カ所誤りがあった」ことがわからないまま法律案が可決されると、削除すべきでない条文が削除されてしまうこととなります。これでは実務に影響が出かねませんし、法律の改正の趣旨も歪みます。

 様々な政治問題があり、国会でも質疑応答がなされていますが、法律案と予算の審議が国会の最も重要な任務と言えます。あまりに訂正箇所が多いと、審議に差し支えが生じます。「国会軽視ここに極まれり」でなければよいのですが……。


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