2月13日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、フン・セン首相の中国訪問に関連し、カンボジアも人民元国際決済システムへ(CIPS)の参加を検討していると発表しました。人民元国際決済システムは、中国の人民元建での外国送金と貿易清算、決済手段を提供する決済網で、2021年時点において103カ国・地域の1280の金融機関が接続しているとのことです。
NBCでは、カンボジアも2015年の人民元国際決済システムの設立以来、参加を検討してきたとしています。今般のフン・セン首相訪中時の首脳会談で原則合意がなされたことから、参加手続きが促進されると期待しています。
中国はカンボジアの貿易にとって重要な相手先となっており、2022年は、輸出で第3位、輸入で第1位の相手先となっています。こうした中で、人民元国際決済システムに参加することにより、貿易通貨として人民元をより便利に利用できる効果が期待されています。また、人民元建てでの貿易が増える場合には、外貨準備としても人民元の比率が高まる可能性があります。
人民元国際決済システムの利用は、世界的に拡大している模様です。大和総研によりますと、人民元国際決済システムを使った一日当たりの平均の決済件数は先月、ウクライナ侵攻前の1.5倍の2万1000件に上りました。また、2022年12月までの1年間で100を超える金融機関が、新たにネットワークに参加しました。その背景として、欧米等によるロシア制裁があります。国際的な決済システムとしては、約200の国・地域の金融機関が利用するSWIFTが主流ですが、欧米や日本は、ロシア経済に打撃を与えるため、SWIFTからロシアの特定の金融機関を締め出しています。このため、人民元国際決済システムをロシアに加えて欧米の制裁を警戒する国々が利用していると見られます。カンボジアが人民元国際決済システムへの参加を検討しているのも、万一の際に備えるという意味もあるものと見られます。
他方、カンボジアは高度にドル化された経済であり、市中通貨・預金通貨の8割以上がドルであると見られます。また、貿易決済通貨もほとんどがドル建てであり、カンボジア国内での大口取引や給与もほとんどがドル建てとなっているのが実情です。このため、通貨当局としての中央銀行は、現地通貨リエルの対ドル為替レートの安定に努めてきました。こうした中で、人民元の使用が増えた場合、為替市場のかく乱要因となる可能性が高く、万一にもリエルの対ドルレートが不安定化した場合、通貨・金融市場に対し大きな影響が及ぶ可能性があります。中央銀行の慎重な検討と漸進的な対応が必要なものと見られます。
(写真は、NBCのチア・スレイ副総裁。プノンペンポスト紙より)
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NBCでは、カンボジアも2015年の人民元国際決済システムの設立以来、参加を検討してきたとしています。今般のフン・セン首相訪中時の首脳会談で原則合意がなされたことから、参加手続きが促進されると期待しています。
中国はカンボジアの貿易にとって重要な相手先となっており、2022年は、輸出で第3位、輸入で第1位の相手先となっています。こうした中で、人民元国際決済システムに参加することにより、貿易通貨として人民元をより便利に利用できる効果が期待されています。また、人民元建てでの貿易が増える場合には、外貨準備としても人民元の比率が高まる可能性があります。
人民元国際決済システムの利用は、世界的に拡大している模様です。大和総研によりますと、人民元国際決済システムを使った一日当たりの平均の決済件数は先月、ウクライナ侵攻前の1.5倍の2万1000件に上りました。また、2022年12月までの1年間で100を超える金融機関が、新たにネットワークに参加しました。その背景として、欧米等によるロシア制裁があります。国際的な決済システムとしては、約200の国・地域の金融機関が利用するSWIFTが主流ですが、欧米や日本は、ロシア経済に打撃を与えるため、SWIFTからロシアの特定の金融機関を締め出しています。このため、人民元国際決済システムをロシアに加えて欧米の制裁を警戒する国々が利用していると見られます。カンボジアが人民元国際決済システムへの参加を検討しているのも、万一の際に備えるという意味もあるものと見られます。
他方、カンボジアは高度にドル化された経済であり、市中通貨・預金通貨の8割以上がドルであると見られます。また、貿易決済通貨もほとんどがドル建てであり、カンボジア国内での大口取引や給与もほとんどがドル建てとなっているのが実情です。このため、通貨当局としての中央銀行は、現地通貨リエルの対ドル為替レートの安定に努めてきました。こうした中で、人民元の使用が増えた場合、為替市場のかく乱要因となる可能性が高く、万一にもリエルの対ドルレートが不安定化した場合、通貨・金融市場に対し大きな影響が及ぶ可能性があります。中央銀行の慎重な検討と漸進的な対応が必要なものと見られます。
(写真は、NBCのチア・スレイ副総裁。プノンペンポスト紙より)
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