カンボジア経済

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カンボジア西部の現状 その4 国道6号線を東へ

2022年12月29日 | 経済
 2022年12月に、バッタンバン、ポイペト、シェムリアップ等のカンボジア西部の主要都市とそれらを結ぶインフラの現状を視察する機会がありました。
 シェムリアップからプノンペンを目指して、国道6号線を東に向かいます。国道6号線は、プノンペンとタイ国境のポイペトを結ぶ重要路線です。プノンペン~チョロイチャンバー橋~スクン~コンポントム~シェムリアップ~シソポンまでの411kmを結び、シソポンからは国道5号線でタイ国境に至る南部経済回廊の重要な一角ともなっています。途中には、人口が最も多いコンポンチャム州、トンレサップ湖北岸で米作の主要州であるコンポントム州、アンコールワット等の観光の中心となっているシェムリアップ等があります。プノンペンから国境までほとんど平坦な道です。1990年代から、日本、世界銀行、アジア開発銀行等の支援を受けて修復が進められましたが、次第に老朽化が目立つようになっていました。2018年に中国の支援でプノンペン~シェムリアップ間の再改修が完了しました。プノンペン~スクン間は片側2車線、スクン~シェムリアップ間は片側1車線です。スクンやコンポントムのほか、中堅の街については、バイパスが整備されています。今回、実走したところ、完成してわずか数年にも関わらず、補修の跡だらけであり、中国の低品質工事の悪影響が見られました。また、実際に補修工事中の現場もありました。日本が提唱する「質の高いインフラ」の反面教師とも言えます。工事当初は、「早くできる」「安価である」等と言いますが、すぐに穴が開き、補修に追われることとなり、ライフコストで比べると高くつくことを示す実例と言えます。カンボジア政府は、こうした低品質工事を防止する対策を強化する必要があるものと見られます。
 途中で、シェムリアップ新空港の建設現場にも立ち寄ってみました。アポなしだったので、中には当然入れませんでしたが、アクセス道路(新空港~国道6号線:約24キロメートル)の工事状況等を見ることができました。シェムリアップ新空港は、シェムリアップ市街の東約60キロメートルに位置し、敷地面積約750ヘクタール、滑走路延長3600メートル、ターミナル面積8万平方メートルで、旅客処理能力年間700万人、貨物取扱能力年間1万トンの計画です。総工費は約8億8000万ドル(約1160億円)で、契約期間55年間のBOT方式で建設されています。中国の雲南省投資控股集団(雲投集団)傘下のアンコール・インターナショナル・エアポート・インベストメントが工事を請け負っています。新型コロナの影響もあり、工事は遅れている模様です。建設会社によれば、予定通り2023年3月末までに工事を完了させ、同10月に試験運用を行う予定としていますが、2022年9月末の工事進捗率は約44%であるとしており、スケジュール通りの完工はかなり厳しくなりつつあるものと見られます。
 なお、フン・セン首相は、プノンペン~シェムリアップ間に第3の高速道路を建設する構想について、事業化調査を実施すると発表しています。高速道路が完成すれば、大幅な時間短縮効果が期待されますが、他の高速道と同様にBOT方式となる場合、採算性に十分な留意が必要なものと見られます。
(写真は、中国支援で再整備された国道6号線。日本の円借款の支援で高規格・高品質で整備された国道5号線と比べると残念な感じです)

国道6号線スクン~プノンペン区間。完成後数年だというのに、穴や傷みを補修した跡だらけとなっています。


カンボジア政府による補修工事現場。中国の低品質施行の尻ぬぐいで高いコストがかかっています。


シェムリアップ新空港建設現場近くです。


新空港と国道6号線を繋ぐアクセス道路。スケジュール通りの完成は難しいものと見られています。



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