カンボジア経済

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2022年カンボジア経済10大ニュース

2022年12月30日 | 経済
 2022年も押し詰まりました。カンボジア総合研究所チーフエコノミスト鈴木博の選ぶ「カンボジア経済2022年10大ニュース」です。(なお、日付はブログ記事掲載日です)
(写真は、カンボジア初の高速道路です)

第1位 新型コロナ対策に成功 アフターコロナに

 カンボジアの新型コロナウイルスの感染状況は、感染が始まった2020年は低レベルでしたが、2021年2月から急増しました。2021年4月15日からプノンペン等でのロックダウンが始まりました。その後、ワクチン接種の進展とともに感染は落ち着き始め、9月末から段階的に経済の再開が進められ、12月にはほぼ正常に戻っていました。2022年に入り、オミクロン変異株の登場で、感染者数は増加に転じましたが、5月には落ち着き、死者数、新規陽性者数ともに低レベルとなりました。9月以降は、陽性者数は減少し、10月~11月には新規陽性者ゼロの日もありました。12月1日のカンボジア保健省の発表によれば、11月末現在の死者は累計3056名(10月31日からゼロ名増)です。累計陽性者数は13万8106名(同114名増)となっています。死者数は、ここ7カ月間ほどはゼロが続いています。
 新型コロナ対策成功の要因となったのは、早期のワクチン接種であったと見られます。世界的に見ても早いペースで接種が進んでおり、既に、3歳以上~成人については2回接種をほぼ完了していると言ってもよい状況と見られます。
 11月1日、カンボジアが外国人観光客の受け入れと全ての社会経済活動を再開してから、1年が経過しました。フン・セン首相は、「開国」が新型コロナウイルス禍からの回復と国民生活の正常化につながったとしています。フン・セン首相は、「開国はワクチン接種、治療、感染拡大の抑制、感染防止策への国民の協力等の状況を勘案して決定した」と述べました。「結果として、2020年にマイナス3%に落ち込んだGDP成長率は、2021年に3%回復し、2022年は5.4%、2023年は6.6%に達するとみられている」としています。
 カンボジアでは、屋外でのマスク着用義務も解除され、「アフターコロナ」と言っても良い雰囲気となっています。カンボジアへの外国人観光客数は激減していましたが、最近は西洋系の観光客をちらほら見かけるようになっています。

12月5日 新型コロナ カンボジアの状況 11月30日 フン・セン首相が陽性に
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/e567031cf740a689a1d5a696f7d21496

12月18日 日本への一時帰国2022秋 カンボジアはコロナ関連の入国規制を全て撤廃
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/b74e6120c106e3c6d532b0c03ac53a71


第2位 カンボジア初の高速道路が開通

 中国企業によるプノンペン~シアヌークビル高速道路は、10月1日から試験運用が開始されました。プノンペンとシアヌークビルを結ぶ高速道路は、プノンペン近郊の環状3号線からスタートし、シアヌークビル近郊までを結ぶ片側2車線、総延長187キロメートルの高速道路です。カンボジア初の高速道路となります。プノンペン中心部からシアヌークビルまで(約230キロ)は、これまで6時間程度かかっていましたが、高速道路を使うと3時間未満で到着可能となっています。高速道路は制限速度120キロであり、2時間未満で到着します。プノンペン市内、シアヌークビル市内の走行時間を加えても3時間程度でした。

10月6日 シアヌークビル高速道路 ついに試験運用始まる
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/4afb640dd65e1d457b9965744f8faea3

10月24日 シアヌークビル高速道路を実走 大幅な時間短縮効果
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/0da7b14dde52e140405c33b5aedaa6ab


第3位 カンボジアがASEAN議長国

 2022年は、カンボジアがASEAN 議長国であり、プノンペン等で多数の関連会議が開催されました。カンボジアは、議長国としてミャンマー問題に積極的に取り組みましたが、成果は限られたものでした。10年前の議長国の際には「親中国」として動き過ぎて、共同声明が出せないという失態を犯しましたが、今回はそれを挽回するため、バランスの取れた対応を行ったと見られます。

11月30日 ASEANサミット プノンペンで開催 米中冷戦の狭間で
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/63b9477332a2c6f8867f0d38bd44b54b


第4位 地域的な包括的経済連携(RCEP)協定 発効

 地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が、2022年1月1日に発効しました。RCEPは、関税の削減などを通じて貿易の自由化を進める協定で2020年11月に15カ国(ASEAN10か国、日本・中国・韓国・オーストラリア・ニュージーランド)が署名しました。参加国の国内総生産(GDP)と人口の合計は世界の3割を占める規模となります。環太平洋経済連携協定(TPP)に比べると貿易自由化率やルール水準は低いものの、中国が参加する唯一の大型自由貿易協定となる見込みです。
 カンボジアは、今後設立される予定のRCEP事務局をプノンペンに誘致しています。

1月7日 RCEP ついに発効 カンボジアへの効果は未知数
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/68b1879ff7ca30c34dc8cc5339641b45


第5位 日本とカンボジア 緊密な首脳外交

 カンボジアは、アジアで最も親日の国と言っても良いかと思います。今年は、ASEAN議長国ということもあって、多くの首脳会談、閣僚級会談が実施されました。首脳会談だけでも、3月20日に岸田首相がカンボジアを訪問して会談したのを皮切りに、4月23日で訪日したフン・セン首相と熊本で会談、9月28日に安倍元首相の国葬儀に参列するために訪日したフン・セン首相と会談、11月12日にASEANサミット関連でカンボジアを訪問した岸田首相と会談等、親密な関係を示しました。
 なお、親日国のカンボジアは、7月10日を、暗殺された安倍晋三元首相を追悼する日とし、街中には多くの半旗が掲げられました。カンボジア政府と国民の方々に心より感謝したいと思います。

3月24日 岸田首相 カンボジアを訪問
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/fed5c885e770d3bd1728faecf372748a

4月26日 日本・カンボジア首脳会談 熊本にて
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/55862fb3fa77a05c2f100115e6a5c311

7月10日 カンボジア 7月10日を安倍元首相追悼の日に
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/071671df26615337b1be7297014a40a6

10月4日 フン・セン首相 安倍元首相の国葬儀に参列 岸田首相とも会談
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/1c23f7a355b8d2b8f28b396cf1ed662e

11月16日 日本カンボジア首脳会談 外交70周年記念ロゴも
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/784ee1d96c5f9530a9586f31b4ac3ba1


第6位 リアム海軍基地 中国支援で拡張開始 緊張高まる

 6月8日、シアヌークビル近郊のリアム海軍基地で、中国の資金援助を得て倉庫やドックを建設する工事の起工式が開催されました。他方、米国等は、カンボジアと中国がリアム海軍基地の利用に関して秘密合意を行っていると批判しており、中国軍の拠点拡大の兆候として警戒しています。 11月12日、バイデン米国大統領は、首脳会談でリアム海軍基地問題を取り上げました。米中対立激化の中で綱渡り外交を続ける小国カンボジアにとって、慎重な対応が必要な状況と見られます。

6月15日 リアム海軍基地 中国支援で拡張開始 緊張高まる
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/c801afa5a5b13bf5cd914d4350c805d6

11月22日 米国カンボジア首脳会談 リアム基地問題を提起
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/fc11d2db466905b632264089b95e3943


第7位 カンボジア 初の国債発行 金利上昇局面で入札は不調

 9月7日、カンボジア初の国債の入札が実施されました。対象となったのは、リエル建て1年債です。落札金利は2.2%でした。なお、1年債の表面利率は2.0%とのことですので、額面より安い値段で落札されたこととなります。残念ながら入札は、「未達」となったものと見られます。米国の国債(ドル建て)の1年債の金利が3.6%前後、ACLEDA銀行のリエル建て1年物定期預金の金利が7.35%であったことを勘案すると、リエル建て1年債の表面利率を2%としたのはかなり強気であったものと見られます。米国連邦準備委員会(FRB)が金利を急激に引き上げていることもあり、カンボジアの金融機関や社会保障基金等の応札側も、腰が引けた対応となったものと推測されます(債権の金利が上がることは、債券価格が下落することを意味します)。

9月6日 カンボジア初の国債 近く発行手続き開始へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/412b8cdf0b0be0ba5eb47f7e981f9399

9月20日 初の国債 9月7日に初入札 落札金利は2.2%
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/22675cd006571251d0e9d5a55503b35b


第8位 中央銀行 電子支払のための統一QRコードを主導

 7月4日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、電子支払のための統一QRコードとなる「KHQR」の導入を記念する式典を開催しました。カンボジアでは、電子支払が急速に拡大していますが、金融機関がそれぞれ別個のQRコードを加盟店に発行してきたため、レストランのレジには数多くのQRコードが並んでしまうという事態となっていました。こうした状況を改善するため、NBCでは、中央銀行デジタル通貨のバコンに加盟する金融機関37機関と協力して統一QRコードであるKHQRを開発しました。遅れた国と思われているカンボジアですが、過去のしがらみや既得権益層の反対等が少ないこともあり、フィンテック等の新たな分野では、日本ではなかなかできないような取り組みを次々に実現させています。今後も、ITやフィンテックの分野での劇的な発展が期待されます。

7月12日 中央銀行 電子支払のための統一QRコードを主導
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/abda01bf5ef904eb5e57f2f1c4e20d23


第9位 カンボジアに過去最大規模の円借款を供与 シアヌークビル港に414億円

 8月7日、フン・セン首相のご臨席を得て、過去最大規模の円借款の交換公文及び借款契約が調印されました。対象となる事業は「シハヌークビル港新コンテナターミナル拡張事業(第一期)」です。金額は413億8800万円、金利0.75%/年(コンサルタントサービス部分は0.01%)、期間30年(うち据置期間10年)という大変譲許的な条件です。本事業は、順次建設予定の3つの新コンテナターミナルのうち、第2ターミナル及び第3ターミナルの建設等を行うものです。「中国化」が進むシアヌークビルですが、この港だけは、中国の影響下に置かれることがあってはならず、この観点からも日本の継続的な協力が期待されます。

8月11日 カンボジアに過去最大規模の円借款を供与 シアヌークビル港に414億円
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/6f2aa88b26cde67fe942f9103b29472c


第10位 プノンペン南部にイオンモール3号店 12月15日に先行オープン

 12月5日、イオンとイオンモールは、カンボジア3号店となるショッピングモール「イオンモール・ミエンチェイ」を12月15日に一部先行オープンすると発表しました。グランドオープンは、2023年春の予定としています。イオンモール・ミエンチェイは、プノンペンの中心地から南へ8キロメートル、フンセン通り沿いに位置します。

12月14日 プノンペン南部にイオンモール3号店 12月15日に先行オープン
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/409fe9891e715d84023b6b5f060dea82




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