・歴史の反復に気づくために
アナロジカルに歴史を見るとは、いま自分が置かれている状況を、別の時代、別の場所に生じた別の状況との類比にもとづいて理解するということです。
・知識人が「大きな物語」をつくることを怠ってきたせいで、日本の視座から組み立てた世界史の影は薄くなってしまった。そこで自覚的に日本の「大きな物語」を再構築する必要を感じました。
・第一章;「多極化する世界を読み解く極意」
第二章;「民族問題を読み解く極意」
第三章;「宗教紛争を読み解く極意」
・帝国主義化した資本主義体制の国々は、戦後、社会主義革命を阻止するために、福祉政策や失業対策など、資本の純粋な利潤追求にブレーキをかけるような政策をあえてとるようになりました。利潤は多少減少しても、資本主義を守るためにはやむをえないというわけです。
・帝国主義国は、相手国の立場を考えずに最大限の要求をつきつけます。それに対して、相手が怯み、国際社会が沈黙するならば、帝国主義国は強引に自国の権益を拡大します。これに対して相手国が抵抗し、国際社会からの非難も強まると、帝国主義国は譲歩し、国際協調に転じるのです。
・日本の潜水艦は、ディーゼル潜水艦のなかでは世界でもっとも高性能です。では現在、潜水艦を買いたがっている国はどこか。オーストラリアです。オーストラリアでは兵器体系が古い。というのも、オーストラリアが直接、他国から攻められた脅威というのは、第二次世界大戦中に、日本が空爆したときだけだからです。・・・
しかしいま、中国が海軍力を増強しているため、オーストラリアも海軍強化の必要に迫られている。とくに中国が太平洋艦隊を強化して航空母艦を持つということになると、潜水艦が必要になります。ところがオーストラリアはアメリカから潜水艦を買うことはできません。アメリカはもう原子力潜水艦した造っていない。ディーゼル潜水艦を造っていないわけです。オーストラリアは非核化政策をとっています。そのため、原子力潜水艦を購入することは国策としてできません。では、どうすればよいか。通常の潜水艦を売っているのは、世界では、ドイツ、オランダ、それからスウェーデンですが、サイズや性能の面で、中国の対策にはなりえない。太平洋を股にかけて動けるディーゼル潜水艦を造っているのは、ロシアと日本しかないのです。でも、安全保障上の理由から、ロシアの潜水艦を買うわけにはいかない。そうすると、必然的にの日本しか選択肢はありません。だからこそ日本は、武器輸出三原則を緩和することによって、オーストリアに潜水艦を売ることにした。これが新・帝国主義の時代の外交なのです。このようにして新・帝国主義は、経済の軍事化と結びつくことになります。
・労働の商品化には、二重の自由がないといけません。
1)身分的な制約や土地への拘束から離れて自由に移動できる
2)自分の土地と生産手段を持っていないこと「生産手段からの自由」
・労働力の賃金
1)労働者が次の一か月働けるだけの体力を維持するに足るお金
2)労働者階級を再生産するお金。つまり家族を持ち、子どもを育てて労働者として働けるようにするためのお金が賃金に入っていいないといけません。
3)資本主義社会の科学技術はどんどん進歩していきますから、それにあわせて自分を教育していかなければいけない。そのためのお金。
この考え方はマルクスの最大の貢献でした。
・アメリカで第二次世界大戦後、本格的な恐慌が起きていないのはなぜか。それはアメリカの公共事業に戦争が組み入れられているからです。
・自由貿易という普遍的なシステムのなかで、アジア太平洋地域という限定された領域にTPPという特別のゲームのルールを適用させるという発想自体が、広域を単位とする保護主義だと考えたほうがいいでしょう。
・グローバル経済では、企業も金融も巨大化していきますから、組織も人も、少数の勝者だけしか豊かになれません。アベノミクスによる円安株高の恩恵を受けられるのは、巨大な輸出企業と金融資産を持っている富裕者層に限られるのと同じことです。そうなると、労働者階級の再生産もできなくなる。つまり、貧乏人は結婚も出産もできない。貧困の連鎖が続き、中産階級が育たないので、国力も低下する。
・金融資本主義に対する三つの処方箋
1)外部から収奪する帝国主義
イギリスが植民地主義の拡大に踏み切ったのは、不況に見舞われ、国内に貧困問題や社会不安を抱え込んでいたからです。
2)共産主義
3)ファシズム
人々を動員することで、みんなで分けるパイを増やしていく運動
・ゲシヒテとヒストリーの二つの概念
ゲシヒテ;歴史上の出来事の連鎖にはかならず意味があるというスタンスで記述がなされます。たとえば、歴史とは啓蒙によって高みへと発展していくプロセスであるという視点で記述されるのです。
ヒストリー;年代順に出来事を客観的に記述する編年体のこと。
・日本もまた帝国主義国です。なぜなら、19世紀の終わりまで、独立した政治体制を持っていた琉球王国を沖縄県として編入した歴史を持つからです。歴史的に、本土と沖縄は天皇信仰を共有していません。沖縄のメディアと本土もメディアの報道内容もまったく異なります。・・・ 自覚がないために、米軍基地をめぐって、本土の人間が沖縄に強いていることにもまったく気づくことができません。これでは、品格のある帝国主義とは言えません。
・・・ いくらなんでも、国土面積の0.6%に74%の米軍基地があり、そのうえに追加して新基地を造るのはやりすぎだろう。
・民族問題に効率的にアプローチするためには、・・・。一つはオーストリア・ハプスブルグ帝国を中心とした中東欧であり、もう一つはロシア帝国の民族問題です。
・ナショナリズム論の三銃士-アンダーソン、ゲルナー、スミス
・「原初主義」と「道具主義」
「原初主義」;日本民族は2600年続いているとか、中国民族は5000年続いているといったような、民族には根拠となる源が具体的にあるという実体主義的な考え方です。
言語、血筋、地域、経済生活、宗教、文化的共通性といったもの。
「道具主義」;民族はエリートたちによって創られるという考え方。つまり、国家のエリートの統治目的のために、道具としてナショナリズムを利用する。
・どうしたら同じ民族だというイメージが共有されるのでしょうか。
アンダーソンが強調するのは、標準語の使用です。
・「エトニ」という新たな視点
共通の祖先・歴史をもち、ある特定の領域との結びつきをもち、内部での連帯感をもつ、名前をもった人間集団
・スターリンとレーニンは見事な方向転換をします。「バンコクのプロレタリアート、団結せよ」といスローガンに加えて、「バンコクの被抑圧民族、団結せよ」を並べるのです。本来、この二つは矛盾します。・・・ それを同居させてしまうところが、スターリンとレーニンの手腕です。
・・・・次々とムスリム系の自治共和国が生まれていったのです。このままでは、マルクス・レーニン主義まで危うくなってしまう。中央アジアに単一のイスラム国家が生まれてしまう。イスラム原理主義革命の拡大に危機感を募らせたのがスターリンでした。そこで、1920年代から1930年代にかけて、複数の民族をつくっていきます。すなわち、トルキスタンをタジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタン、カザフスタンという五つの民族共和国に分割したのです。しかし、これらは上か人為的につくられた民族であるため、さまざまな矛盾が生じます。
・イギリスの教科書
ひとつの島にふたつの異なる態度があったのです。すなわち、フランスでイギリス国王と帝国のために戦い、死をも辞さないアイルランド人がいる一方で、ダブリンで国王と帝国に対して死ぬ気で戦いを挑んだアイルランド人がいたのでした。
・沖縄人にとっては、スコットランドの住民投票は他人ごととは思えない。本土の人間と沖縄人とでは、同じ出来事が違う意味を持って受け取られている。つまり、イングランド人とスコットランド人と同様に、この両者でもカイロスが異なるのです。
・シリアから始まる「イスラム国」問題
シリア情勢を読み解くキーワードとしては「アラウィ派」が重要です。
アラウィ派は、キリスト教や土着の山岳宗教など、さまざまな要素がまじっている特殊な土着宗教です。シリアでも国民の7割はスンニ派で、アラウィ派は1割程度しかいません。なぜそのアラウィ派が、シリアを支配しているのか。これは、フランスの委任統治時代の影響です。第一次世界大戦後、シリアはフランスの委任統治領となりました。そして、フランスはシリアの支配にあたってアラウィ派を重用し、現地の行政、警察、秘密警察にアラウィ派を登用したのです。植民地の支配では、少数派を優遇するのは常套手段です。多数派の民族や宗教集団を優遇すれば、独立運動につながってしまう。
・バチカンの世界戦略の第一段階は、ヨハネ・パウロ二世のとき、共産主義を崩壊させることでした。この戦略は、1991年のソ連崩壊で実現します。
第二段階は、イスラムに対しての戦略です。キリスト教が巻き返すには、自分より若くて健康な教皇中心となって戦略を立て、実行していかなければなりません。そのため、異例の生前退位となった。私はそう見ています。では、どうやってバチカンはイスラム原理主義を封じ込めるのか。その手段は「対話」です。「対話」といっても、ヨハネス二三世の「対話路線」とは異なることに注意してください。異文化対話を通じてイスラム穏健派を味方につける。そして、味方についたイスラム教徒が「テロ行為をする過激派がいると、私たちのイスラム教が世界から敵視されてしまう。そうならないためにも、過激派には退場願おう」と考えるように誘導していく。このようなシナリオを描いているのです。
・サウロは、ユダヤ人共同体内部でイエスの教えを広めることに限界を感じ、共同体の外部にキリスト教を広めることを決心します。パウロと名をあらため、小アジア(現在のトルコ・アナトリア一帯)、ギリシャ、ローマへと電動の旅を続け、各地に教会を設けました。
キリスト教を信じる人々を迫害していたパウロがキリスト教徒に転向し、伝道者となった意義は、キリスト教を世界宗教へと変貌させた点にあります。パウロが伝道旅行をおこなった地域こそ、当時「世界」と認識されていたからです。イエスの死後、二、三か月では、信者数は多く見積もっても数百人程度でした。『使徒言行録』には、その後、パウロの説教で3000人が洗礼を受けたと書かれています。
・あわやロシア正教対カトリックの大戦争が起こるか、という危機的な状況になりました。というのも、正教とカトリックは1054年に相互破門しており、お互いに悪魔の手先だと罵り合っていたからです。・・・ ロシア正教が自らの習慣を残そうと抵抗を続けたため、ローマ教皇庁は妥協案として特別の宗派を創設します。・・・ こうして誕生したのが「東方典礼カトリック教会」「東方帰一教会」あるいは「ユニエイト教会」などと呼ばれる教会です。
・アッラーへの絶対服従という信仰は、日常的な会話にも現れます。たとえば、ムスリム(イスラム教徒)が約束をしていた時間に遅刻すると、「ごめんなさい」とは言いません。「アッラーを恨むな」と言います。「私が遅れてきたのはアッラーの神様が遅れるようにしたからで、だから文句を言うんじゃない」。そういう発想になるわけです。
・キリスト教において、イエス・キリストという媒介項を必要とする理由は、人間には原罪があるからです。それに対して、イスラムには原罪という観念はありません。この楽観的人間論が最大の問題です。だから神が命じれば、聖戦の名のもとに、あらゆるものを破壊しても構わないと考える。
・シーア派とスンニ派が対立するのは、イスラム教のなかで分節化がおこなわれる場合です。対キリスト教ということになると、シーア派とスンニ派は団結するのです。
・戦争が始まると、イギリスは中東でトルコと戦火をまじえますが、このとき、戦争を有利に進めるために、三枚舌を展開します。
第一に、戦後のアラブ人の独立と引き換えに、アラブ人にオスマントルコに対して反乱を起こさせます。つまり、トルコの支配に憤るアラブ人のナショナリズムを利用したわけです。
第二に、フランス、ロシアとの間で、トルコ領を分割する秘密協定を結びます。
第三に、パレスチナへの帰還を切望するユダヤ人に、「民族的郷土(ナショナル・ホーム)」の建設を約束します(バルフォア宣言)。
相互に矛盾しています。
・共産主義国が崩壊し再配分の必要がなくなった。その結果、富が上位の何パーセントかに集中する著しい格差が資本主義国を覆っています。
・こうした戦争や紛争を解決するには、たった一つしかありません。それは、ヨーロッパがそうだったように、もうこれ以上殺し合いをしたくないと双方が思うことです。・・・
そのためには、どうすればいいでしょうか。私は、二つの可能性があると考えます。一つはもう一度、啓蒙に回帰することです。人権、生命の尊厳、愛、信頼といった手垢のついた芸年に対して、不可能だと知りながらも、語っていく。それは、バルトの言う「不可能の可能性」を求めていくことです。
もう一つはプレモダンの精神、言い換えれば「見えない世界」へのセンスを磨くことです。
・・・ だからこそ、私たちは「見えない世界」へのセンスを磨き、国際社会の水面下で起こっていることを見極めなければならないのです。
感想;
今起きている紛争や対立の源を理解すると少しわかってきたように思えました。
そして人が歴史を創ってきたこと、その中には対立も人が作ってきたことがわかりました。
アナロジカルに歴史を見るとは、いま自分が置かれている状況を、別の時代、別の場所に生じた別の状況との類比にもとづいて理解するということです。
・知識人が「大きな物語」をつくることを怠ってきたせいで、日本の視座から組み立てた世界史の影は薄くなってしまった。そこで自覚的に日本の「大きな物語」を再構築する必要を感じました。
・第一章;「多極化する世界を読み解く極意」
第二章;「民族問題を読み解く極意」
第三章;「宗教紛争を読み解く極意」
・帝国主義化した資本主義体制の国々は、戦後、社会主義革命を阻止するために、福祉政策や失業対策など、資本の純粋な利潤追求にブレーキをかけるような政策をあえてとるようになりました。利潤は多少減少しても、資本主義を守るためにはやむをえないというわけです。
・帝国主義国は、相手国の立場を考えずに最大限の要求をつきつけます。それに対して、相手が怯み、国際社会が沈黙するならば、帝国主義国は強引に自国の権益を拡大します。これに対して相手国が抵抗し、国際社会からの非難も強まると、帝国主義国は譲歩し、国際協調に転じるのです。
・日本の潜水艦は、ディーゼル潜水艦のなかでは世界でもっとも高性能です。では現在、潜水艦を買いたがっている国はどこか。オーストラリアです。オーストラリアでは兵器体系が古い。というのも、オーストラリアが直接、他国から攻められた脅威というのは、第二次世界大戦中に、日本が空爆したときだけだからです。・・・
しかしいま、中国が海軍力を増強しているため、オーストラリアも海軍強化の必要に迫られている。とくに中国が太平洋艦隊を強化して航空母艦を持つということになると、潜水艦が必要になります。ところがオーストラリアはアメリカから潜水艦を買うことはできません。アメリカはもう原子力潜水艦した造っていない。ディーゼル潜水艦を造っていないわけです。オーストラリアは非核化政策をとっています。そのため、原子力潜水艦を購入することは国策としてできません。では、どうすればよいか。通常の潜水艦を売っているのは、世界では、ドイツ、オランダ、それからスウェーデンですが、サイズや性能の面で、中国の対策にはなりえない。太平洋を股にかけて動けるディーゼル潜水艦を造っているのは、ロシアと日本しかないのです。でも、安全保障上の理由から、ロシアの潜水艦を買うわけにはいかない。そうすると、必然的にの日本しか選択肢はありません。だからこそ日本は、武器輸出三原則を緩和することによって、オーストリアに潜水艦を売ることにした。これが新・帝国主義の時代の外交なのです。このようにして新・帝国主義は、経済の軍事化と結びつくことになります。
・労働の商品化には、二重の自由がないといけません。
1)身分的な制約や土地への拘束から離れて自由に移動できる
2)自分の土地と生産手段を持っていないこと「生産手段からの自由」
・労働力の賃金
1)労働者が次の一か月働けるだけの体力を維持するに足るお金
2)労働者階級を再生産するお金。つまり家族を持ち、子どもを育てて労働者として働けるようにするためのお金が賃金に入っていいないといけません。
3)資本主義社会の科学技術はどんどん進歩していきますから、それにあわせて自分を教育していかなければいけない。そのためのお金。
この考え方はマルクスの最大の貢献でした。
・アメリカで第二次世界大戦後、本格的な恐慌が起きていないのはなぜか。それはアメリカの公共事業に戦争が組み入れられているからです。
・自由貿易という普遍的なシステムのなかで、アジア太平洋地域という限定された領域にTPPという特別のゲームのルールを適用させるという発想自体が、広域を単位とする保護主義だと考えたほうがいいでしょう。
・グローバル経済では、企業も金融も巨大化していきますから、組織も人も、少数の勝者だけしか豊かになれません。アベノミクスによる円安株高の恩恵を受けられるのは、巨大な輸出企業と金融資産を持っている富裕者層に限られるのと同じことです。そうなると、労働者階級の再生産もできなくなる。つまり、貧乏人は結婚も出産もできない。貧困の連鎖が続き、中産階級が育たないので、国力も低下する。
・金融資本主義に対する三つの処方箋
1)外部から収奪する帝国主義
イギリスが植民地主義の拡大に踏み切ったのは、不況に見舞われ、国内に貧困問題や社会不安を抱え込んでいたからです。
2)共産主義
3)ファシズム
人々を動員することで、みんなで分けるパイを増やしていく運動
・ゲシヒテとヒストリーの二つの概念
ゲシヒテ;歴史上の出来事の連鎖にはかならず意味があるというスタンスで記述がなされます。たとえば、歴史とは啓蒙によって高みへと発展していくプロセスであるという視点で記述されるのです。
ヒストリー;年代順に出来事を客観的に記述する編年体のこと。
・日本もまた帝国主義国です。なぜなら、19世紀の終わりまで、独立した政治体制を持っていた琉球王国を沖縄県として編入した歴史を持つからです。歴史的に、本土と沖縄は天皇信仰を共有していません。沖縄のメディアと本土もメディアの報道内容もまったく異なります。・・・ 自覚がないために、米軍基地をめぐって、本土の人間が沖縄に強いていることにもまったく気づくことができません。これでは、品格のある帝国主義とは言えません。
・・・ いくらなんでも、国土面積の0.6%に74%の米軍基地があり、そのうえに追加して新基地を造るのはやりすぎだろう。
・民族問題に効率的にアプローチするためには、・・・。一つはオーストリア・ハプスブルグ帝国を中心とした中東欧であり、もう一つはロシア帝国の民族問題です。
・ナショナリズム論の三銃士-アンダーソン、ゲルナー、スミス
・「原初主義」と「道具主義」
「原初主義」;日本民族は2600年続いているとか、中国民族は5000年続いているといったような、民族には根拠となる源が具体的にあるという実体主義的な考え方です。
言語、血筋、地域、経済生活、宗教、文化的共通性といったもの。
「道具主義」;民族はエリートたちによって創られるという考え方。つまり、国家のエリートの統治目的のために、道具としてナショナリズムを利用する。
・どうしたら同じ民族だというイメージが共有されるのでしょうか。
アンダーソンが強調するのは、標準語の使用です。
・「エトニ」という新たな視点
共通の祖先・歴史をもち、ある特定の領域との結びつきをもち、内部での連帯感をもつ、名前をもった人間集団
・スターリンとレーニンは見事な方向転換をします。「バンコクのプロレタリアート、団結せよ」といスローガンに加えて、「バンコクの被抑圧民族、団結せよ」を並べるのです。本来、この二つは矛盾します。・・・ それを同居させてしまうところが、スターリンとレーニンの手腕です。
・・・・次々とムスリム系の自治共和国が生まれていったのです。このままでは、マルクス・レーニン主義まで危うくなってしまう。中央アジアに単一のイスラム国家が生まれてしまう。イスラム原理主義革命の拡大に危機感を募らせたのがスターリンでした。そこで、1920年代から1930年代にかけて、複数の民族をつくっていきます。すなわち、トルキスタンをタジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタン、カザフスタンという五つの民族共和国に分割したのです。しかし、これらは上か人為的につくられた民族であるため、さまざまな矛盾が生じます。
・イギリスの教科書
ひとつの島にふたつの異なる態度があったのです。すなわち、フランスでイギリス国王と帝国のために戦い、死をも辞さないアイルランド人がいる一方で、ダブリンで国王と帝国に対して死ぬ気で戦いを挑んだアイルランド人がいたのでした。
・沖縄人にとっては、スコットランドの住民投票は他人ごととは思えない。本土の人間と沖縄人とでは、同じ出来事が違う意味を持って受け取られている。つまり、イングランド人とスコットランド人と同様に、この両者でもカイロスが異なるのです。
・シリアから始まる「イスラム国」問題
シリア情勢を読み解くキーワードとしては「アラウィ派」が重要です。
アラウィ派は、キリスト教や土着の山岳宗教など、さまざまな要素がまじっている特殊な土着宗教です。シリアでも国民の7割はスンニ派で、アラウィ派は1割程度しかいません。なぜそのアラウィ派が、シリアを支配しているのか。これは、フランスの委任統治時代の影響です。第一次世界大戦後、シリアはフランスの委任統治領となりました。そして、フランスはシリアの支配にあたってアラウィ派を重用し、現地の行政、警察、秘密警察にアラウィ派を登用したのです。植民地の支配では、少数派を優遇するのは常套手段です。多数派の民族や宗教集団を優遇すれば、独立運動につながってしまう。
・バチカンの世界戦略の第一段階は、ヨハネ・パウロ二世のとき、共産主義を崩壊させることでした。この戦略は、1991年のソ連崩壊で実現します。
第二段階は、イスラムに対しての戦略です。キリスト教が巻き返すには、自分より若くて健康な教皇中心となって戦略を立て、実行していかなければなりません。そのため、異例の生前退位となった。私はそう見ています。では、どうやってバチカンはイスラム原理主義を封じ込めるのか。その手段は「対話」です。「対話」といっても、ヨハネス二三世の「対話路線」とは異なることに注意してください。異文化対話を通じてイスラム穏健派を味方につける。そして、味方についたイスラム教徒が「テロ行為をする過激派がいると、私たちのイスラム教が世界から敵視されてしまう。そうならないためにも、過激派には退場願おう」と考えるように誘導していく。このようなシナリオを描いているのです。
・サウロは、ユダヤ人共同体内部でイエスの教えを広めることに限界を感じ、共同体の外部にキリスト教を広めることを決心します。パウロと名をあらため、小アジア(現在のトルコ・アナトリア一帯)、ギリシャ、ローマへと電動の旅を続け、各地に教会を設けました。
キリスト教を信じる人々を迫害していたパウロがキリスト教徒に転向し、伝道者となった意義は、キリスト教を世界宗教へと変貌させた点にあります。パウロが伝道旅行をおこなった地域こそ、当時「世界」と認識されていたからです。イエスの死後、二、三か月では、信者数は多く見積もっても数百人程度でした。『使徒言行録』には、その後、パウロの説教で3000人が洗礼を受けたと書かれています。
・あわやロシア正教対カトリックの大戦争が起こるか、という危機的な状況になりました。というのも、正教とカトリックは1054年に相互破門しており、お互いに悪魔の手先だと罵り合っていたからです。・・・ ロシア正教が自らの習慣を残そうと抵抗を続けたため、ローマ教皇庁は妥協案として特別の宗派を創設します。・・・ こうして誕生したのが「東方典礼カトリック教会」「東方帰一教会」あるいは「ユニエイト教会」などと呼ばれる教会です。
・アッラーへの絶対服従という信仰は、日常的な会話にも現れます。たとえば、ムスリム(イスラム教徒)が約束をしていた時間に遅刻すると、「ごめんなさい」とは言いません。「アッラーを恨むな」と言います。「私が遅れてきたのはアッラーの神様が遅れるようにしたからで、だから文句を言うんじゃない」。そういう発想になるわけです。
・キリスト教において、イエス・キリストという媒介項を必要とする理由は、人間には原罪があるからです。それに対して、イスラムには原罪という観念はありません。この楽観的人間論が最大の問題です。だから神が命じれば、聖戦の名のもとに、あらゆるものを破壊しても構わないと考える。
・シーア派とスンニ派が対立するのは、イスラム教のなかで分節化がおこなわれる場合です。対キリスト教ということになると、シーア派とスンニ派は団結するのです。
・戦争が始まると、イギリスは中東でトルコと戦火をまじえますが、このとき、戦争を有利に進めるために、三枚舌を展開します。
第一に、戦後のアラブ人の独立と引き換えに、アラブ人にオスマントルコに対して反乱を起こさせます。つまり、トルコの支配に憤るアラブ人のナショナリズムを利用したわけです。
第二に、フランス、ロシアとの間で、トルコ領を分割する秘密協定を結びます。
第三に、パレスチナへの帰還を切望するユダヤ人に、「民族的郷土(ナショナル・ホーム)」の建設を約束します(バルフォア宣言)。
相互に矛盾しています。
・共産主義国が崩壊し再配分の必要がなくなった。その結果、富が上位の何パーセントかに集中する著しい格差が資本主義国を覆っています。
・こうした戦争や紛争を解決するには、たった一つしかありません。それは、ヨーロッパがそうだったように、もうこれ以上殺し合いをしたくないと双方が思うことです。・・・
そのためには、どうすればいいでしょうか。私は、二つの可能性があると考えます。一つはもう一度、啓蒙に回帰することです。人権、生命の尊厳、愛、信頼といった手垢のついた芸年に対して、不可能だと知りながらも、語っていく。それは、バルトの言う「不可能の可能性」を求めていくことです。
もう一つはプレモダンの精神、言い換えれば「見えない世界」へのセンスを磨くことです。
・・・ だからこそ、私たちは「見えない世界」へのセンスを磨き、国際社会の水面下で起こっていることを見極めなければならないのです。
感想;
今起きている紛争や対立の源を理解すると少しわかってきたように思えました。
そして人が歴史を創ってきたこと、その中には対立も人が作ってきたことがわかりました。