もはや延期論まで出始めた大阪・関西万博で、それをテコにきな臭い動きをしている人物―現役の阪大教授の周囲を探ると、「わるいやつら」が次々と顔を出す。このセンセイ、いったい何者か。
突然の新薬認可に唖然
大阪府市のパビリオン総合プロデューサーとして「2025大阪・関西万博」を取り仕切る森下竜一大阪大学教授(61歳)は、医学部助教授だった1999年12月、創薬ベンチャー「アンジェス」を立ち上げた。
慢性動脈閉塞症向けのコラテジェンなる遺伝子治療薬の開発を打ち出し、'02年9月、東証マザーズ市場にアンジェスの株式上場を果たす。
ところが、一夜にして億万長者となった森下に対し、アンジェス未公開株のばら撒きが発覚し、薬の有効性にも疑問の声が上がる。 そのせいで、森下やアンジェスはしばらくなりを潜めたが、第二次安倍晋三政権が発足したあたりから、再び脚光を浴びるようになる。
大阪医学界の重鎮の一人が指摘する。
「アンジェスを救ったのが第二次安倍政権でしょう。2012年12月に政権ができると、森下さんはすぐに内閣府の規制改革会議のメンバーに抜擢され、さらに官邸が設置した健康・医療戦略室の顧問(参与)になって、アンジェスを売り込んでいく。
結果、それまで何度申請しても厚労省から認可されなかった遺伝子治療薬のコラテジェンの認可を得るわけです。もともと再生医療分野などの先端治療薬のために新たに設けられた厚労省の2段階承認制度を使ってね。 コラテジェンはあくまで第1段階の条件付き承認です。しかしそれでも薬を市販できる。おかげで創薬ベンチャーの株価も吊り上がりました」
森下さんの政治力のおかげ
厚労省医薬・生活衛生局再生医療等製品・生物由来技術部会の「審議結果報告書」によれば、コラテジェンの製造販売申請は'18年1月22日だ。明くる'19年2月20日付で、5年の期限付きで販売が承認された。大阪大学の関係者が打ち明ける。
「過去10年以上、申請を繰り返しても承認されなかった薬ですから、阪大でも驚きの声があがりました。森下さんの政治力のおかげではないか、と。
実際、森下さんは、首相官邸で健康・医療戦略室長を務めてきた和泉(洋人)さんと親しい。ある医学部の教授は森下さんから『政府の認可関係の話ならこの人が頼りになりますよ』と和泉さんを紹介されたことがあったと聞いています」 繰り返すまでもなく、和泉は菅義偉元内閣官房長官の懐刀として有名な元官邸官僚である。 安倍政権下の加計学園問題では、首相補佐官として「総理の口からは言えないから私が言う」と獣医学部の新設を巡り、文部科学官僚を脅した「実績」もある。健康・医療戦略室の次長に愛人関係を囁かれた医系技官の大坪寛子を抜擢し、コロナ対策まで任せた。 森下は安倍・菅政権下のトップとのパイプを自負し、それを吹聴してきた。
先の大阪医学界の重鎮はこう憤慨する。
「だからでしょう。安倍・菅政権のあいだは、いくら森下さんに問題が見え隠れしても、疑惑が封印されてきました。それどころか、コロナワクチンを開発するとぶち上げ、国から100億円近い補助金を分捕ろうとしたのですから」
森下はアンジェスによる国産初のワクチン開発を謳って政府から75億円の補助金を交付されたものの、結局断念したと報じられてきた。 75億円ではなく、100億円近い補助金とはどういうことか。厚労省にワクチン開発の補助金に関する情報公開請求をすると、2020年7月27日に開催された「第1回ワクチン生産体制等緊急整備事業評価委員会」の議事録や8月7日付の「採択結果について」という文書が届いた。 ワクチン開発にあたって補助金の申請をした製薬各社に対する厚労省の審査内容が記されている。例によって議事録は肝心な部分が黒塗りになって中身が不明だが、第一次公募の申請者は記されている。
株価が上下した理由
「アストラゼネカ」「KMバイオロジクス」「塩野義製薬」「武田薬品工業」「第一三共」、それに「アンジェス」の6社だ。アンジェス以外は聞き慣れた製薬会社ばかりだ。 が、補助金の金額は会社の規模に比例するわけではない。たとえば東大医科学研究所と共同研究していた大手の第一三共の交付基準額は60億3000万円。それに対しベンチャーのアンジェスは93億8030万円と1・5倍以上になっている。 これが、大阪医学界の重鎮の言う「100億円近い補助金」の根拠なのだろう。国の助成についてある厚労省の官僚に聞くとこう説明してくれた。 「先端医療に関する補助金としては、官邸の健康・医療戦略室がAMED(日本医療研究開発機構)を通じて出す基礎研究分野と、整備事業に対するそれがあり、コロナワクチンの場合は、基礎研究ではなく、創薬事業を実用化しようという趣旨で提供されたものです。 いわばワクチンが産業化でき、事業に花開く目途が立ったものとして、国の予算で大量生産できる体制に持っていきましょう、という予算の建て付けです」 つまり、実用化に向けた基準交付金額のトータルが93億円であり、実際に交付された75億円は途中経過といえそうだ。 だが、結局のところ、アンジェスはワクチン開発を断念している。再び厚労官僚が指摘する。
森下の腹はいっこうに痛まない
「補助金はある意味の融資のようなもので、薬が実用化できたら返済する義務が生じます。しかし、実用化できなかったら、返さなくていい。 便利な補助金ではありますが、難しい薬の開発ですからやむを得ない部分はあります。ただし、補助金の75億円は、どこにどう使ったのか、交付された側には説明責任があります。本来、会計検査院が乗り出して追及すべき話でもあります。けれどそういう気配はありませんね」 森下の腹はいっこうに痛まない。それどころか、こうした創薬計画を打ち出すたび、アンジェスは潤ってきた。 遺伝子治療薬コラテジェンの製造販売承認と同じく、アンジェスのワクチン開発には、株式市場が大きく反応してきた。参考までに過去のアンジェス株の動向に触れると、株式上場日の'02年9月25日の東証マザーズの終値が1483円で、第一次安倍政権下の'07年1月に株価がいったんピークを迎える。 6月15日にはコラテジェンを初めて承認申請すると新聞発表し、株価の終値は上場時の2倍の3107円となる。が、その後は鳴かず飛ばず。2012年5月17日に株価はついに118円にまで値を下げた。
そしてアンジェスはコロナワクチンの開発という新たなネタを投資家向けに発表し、復活する。'20年春、500円前後だった株価が、そこから一挙に上がり、ワクチンの治験開始を発表した翌日の7月1日には2044円の終値で市場を閉じる。
この間、国産初のワクチンに政府が補助金の交付というお墨付きを与えたのは繰り返すまでもない。そのうえ、大阪府知事の吉村洋文や前大阪市長の松井一郎がワクチン開発を煽ってきたのは、これまで書いてきた通りだ。
後編記事『「逮捕状も出ているガーシーのスポンサーも参加」「一時は株価は10倍以上に」…大阪万博を取り仕切る教授が「万博をエサに」投資を募っていた「万博コイン」事業がヤバすぎる』につづく。 「週刊現代」2023年7月29・8月5日合併号
---------- 森・功/'61年、福岡県生まれ。『週刊新潮』編集部などを経て、'03年に独立。『悪だくみ「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で'18年に大宅賞を受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』『国商 最後のフィクサー葛西敬之』など著書多数 ----------
感想;
科学ではなく、ごまかしなのでしょう。
騙した森下竜一大阪大学教授が一番悪いですが、税金を簡単に与えた安倍元首相にも責任があるのではないでしょうか?
阪大の恥さらしです。
阪大の教授はこういう人が多いと思われます。
真面目にやっている人がえらい迷惑です。
いかに政権と結託するか、金儲けには必須のようです。
そう言えば電通がオリンピックで結託していました。
税金がアベノマスクに534億円つかわれたように、このような無駄遣いがいっぱいあるのでしょう。
何と言っても無駄なのが米国では使われなくなった兵器を米国の言い値で平気に買う政権でしょう。
そして海外諸国に税金をばら撒いています。
その結果日本は貧困国に。
最低賃金が1,000円をようやく上回ったのですが、それすら低いです。