・日本においてM&Aの目利き力のある経営者の筆頭は、間違いなく日本電産の永守重信氏だろう。同氏は日本の経営者には珍しく、多くの企業買収を次々と実現して日本電産の価値を高め、成功して来た。しかし、そのアプローチは「変わっている」と言われることも多い。なぜなら永守氏は、あえて規模が小さく、業績の悪い会社を狙って長い間買収を続けてきたことで有名だからだ。
しかし、ここまでの議論を踏まえれば、永守氏の戦略は
カプロン=シェンのロジックと極めて整合的なことがおわかりだろう。通常、小さくて業績の悪い会社は、私的情報を多く持っている可能性が高く、普通の会社は買ってはいけない案件だ。しかし、同社はモーター製造関連業での企業買収を繰り返しているから、業界内の目利き力が圧倒的に高い。そして、永守氏自身が必ず買収対象企業の現場に行って、外から見えない社風など私的情報をつかむ
プロセスを繰り返し、その経験値を上げている。永守氏は、その力を持って私的情報を持つ企業の「本当の価値」を見抜き、他社を出し抜いているのだ。
①大胆な戦略がとれない経営者
②利益より企業規模を重視する経営陣
③経営者の報酬
④企業スキャンダル
・これからの時代こそ、「野中(郁次郎)理論が圧倒的に必要になる。
・暗黙知、形式知
①個性の理論 リーダーの持つ個性に注目
②行動の理論 リーダーの部下への行動スタイルに注目
③コンティンジェンシー理論 1や2が成立する条件に注目
④リーダー・メンバー・エクスチェンジ 同じリーダーでも部下との心理的な変換・契約が異なることに注目
⑤TSLとTFL
部下をよく見て管理するリーダーとビジョンを示し、部下を啓蒙し、変革するリーダー
・マッキンゼーのリーダーシップ『採用基準』伊賀泰代著
マッキンゼーでのOJTによるリーダーシップの訓練方法は(中略)「リーダーシップは今すぐ発揮してください。できない部分については、次回からどう改善すればいいかを学びましょう」というやり方なのです。
静岡県の温泉旅館いづみ荘を再生した際には、単純に「顧客を増やせ」「リピーターを増やせ」という目標を立てるのではなく、同旅館のコアなファンが年配の女性客であることを前提に「熟年女性のマルチオケージョン温泉旅館」というコンセプトを導き出し、この層の満足度を徹底的に高めるという、具体的な目標を設定した。
さらに星野氏は、コンセプトまでは提示するものの、「そのために必要なオペレーション上の取り組みは何か」を考えることは、大幅に現場に権限移譲した。これは現場にとって当然チャレンジングなことだが、だからこそ現場のモチベーションが高まったのだ。
加えて、星野氏はフィードバックも重視する。例えば、星野リゾートが軽井沢町で運営するホテルプレストンコートでは、「ミス撲滅委員会」という、現場でのみすについてのフィードバック機能を立ち上げ、以下の3つのルールを設定した。
①ミスを報告する人は、「実際にミスをした人」「他の人がしたミスについて知っている人」のどちらでもよい。
②ミスをした人を絶対に叱らない
③ミスを報告してくれたことについてしっかり褒める
ミスは、誰もが隠したがるものだ。そこで星野氏は、あえて「叱らない」「報告を褒める」といったルールをつくることで、ミスについて正確なフィードバックが多く出るような仕掛けをつくっていったのだ。
・不確実性の高い世界では、直観は熟慮に勝る
・感情は3種類ある
①分離感情一般的我々が感情と呼ぶもの
②帰属感情 比較的安定的に一人ひとりが持つ特質
③ムード 明確な原因がなく「なんとなく、そこに漂っている感情」/日本語での「雰囲気」にあたる。
機内サービスに不満だった乗客が怒って文句を言った時に、対応したCAが「その乗客が初めて飛行機に乗る人」であったことに気づいて、相手の立場に立った視点を取れたことで、感情を「とまどい」から「同情」に変化させられた。おそらくこのCAは、日頃から相手の立場の認知視点を取れる準備をしていたはずだ。確かに感情は自然発生する部分が多く、感情そのものを抑制するのは難しい。仮に無理に抑制しても、心理的な負担が大きくなる。
しかし、感情そのものの抑制が難しくても、「相手の立場に立つ」「多角的な角度で見る」といったように視点・認知を広げることなら、日頃から意識したり準備していれば可能なはずだ。それが結果として、感情をうまくマネジメントすることにつながり得るのである。
・「未来はつくり出せる」は、けっして妄信ではない
ある時、ハンガリー軍の偵察部隊がアルプス山脈の雪山で、猛吹雪に見舞われ遭難した。彼らは吹雪の中でなす術もなく、テントの中で死の恐怖におののいていた。その時偶然にも、隊員の人がポケットから地図を見つけた。彼らは地図を見て落ち着きを取り戻し、「これで帰れるはずだ」と下山を決意する。彼らはテントを飛び出し、猛吹雪の中、地図を手におおまかの方向を見極めながら進んだ。そしてついに、無事に雪山を下りることに成功したのだ。しかし、持ってきた隊員が握りしめていた地図を取り上げた上官は、驚いた。彼らの見ていた地図はアルプス山脈の地図ではなく、ピレネー山脈の地図だったのである。
1感知 ⇒ 2解釈・意味付け ⇒ 3行動・行為 ⇒ 情報を感知する
様々な解釈 多様性を減らして行動する(環境に働きかける)
・ユダヤ商人の「ダイヤモンド取引」
取引時にダイヤモンドの質を鑑定するため、取引相手からダイヤを一時的に預かる習慣がある。ダイヤを預ける側にとって、これは一見大きなリスクである。見えないところでダイヤをすり替えられる可能性があるからだ。
しかし、この商人コミュニティですり替えが起こることはない。それは、このコミュニティが高密度で閉じられた関係にあり、商人同士が互いに監視しながら密に交流し、信頼関係が築かれているからだ。「ダイヤを他人から預かっても、けっしてすり替えな」というノームが醸成されているのだ。だからこそ、通常なら実現しえないような形での、ダイヤの鑑定と取引が実現する。
・人は「合理性」よりも、「正当性」で行動する。
・ロジックの賢人ほど、「人とは何か」を突き詰める
・著名経営者がメディアで発言されたもの
①業績が悪い時だからこそ、攻め続けることが重要(中本晃氏、島津製作所会長)
②よい経営理念を、社員に毎日使わせることです。経営理念に沿って、社員は自主的に判断して仕事をしてもらう。経営理念に基づく決断ならば、結果が悪くても責任を問わない。これを繰り返せば、浸透します。(松本晃氏、カルビー会長)
③問屋に任せてリスクを取らないところからクリエイティブな仕事は生まれない。(堤清二氏 元セゾングループ会長)
④小さなものの改善に効果がある。会社は常に変化があにといけない。(永守重信氏 日本電産会長兼社長)
感想;
60万字の802頁の大作です。
読むのも大変ですが、書くのはもっと大変です。
書くことが正しいかどうかの確認も必要になります。
心理学が経営に関わっていることがとても興味深かかったです。
確かに組織は人で構成されているので、心理学が大きくかかわっているのは当然ですね。
野中郁次郎先生の”知の創造”も紹介されていました。
この本は経営の百科事典のように思いました。