「トラブルのデパート」と揶揄されているマイナンバーカード。保険証としても利用できる「マイナ保険証」は、高齢者の助けとなるどころか、思わぬトラブルを起こしていた──。
これまでマイナ問題はどこか対岸の火事だったという国民も多いが、今回ばかりはそうも言ってはいられない。 マイナ保険証の利用者が、医療機関の窓口で本来の支払額よりも多く「誤請求」されるトラブルが全国各地で続出しているのだ。
全国保険医団体連合会(保団連)が8月23日に発表した医療機関への聞き取り調査(期間は7月27日~8月8日)によれば、「本来の負担割合と、マイナ保険証に登録された負担割合が食い違う」など“誤表示されたケース”が、32都道府県の693の医療機関で報告された。こうした事例はとりわけ70歳以上の患者で相次いでいるという。
保団連副会長で竹田クリニック院長の竹田智雄氏が語る。 「神奈川県のとある医療機関からは、本来は1割負担の患者さんが窓口で2割や3割負担の計算で請求され、実際に誤徴収してしまった例が複数あったという回答がありました」 金額は不明だが、仮に1割負担なら1000円で済むところを3割なら3倍の3000円になる。これが毎月の診療で続けば、1年間で2万円以上も余計な出費をさせられる。
患者にとって深刻な問題であるが、病院側も大きな苦労を抱えている。 「本来は保険資格が有効なのに、医療機関窓口で機械の不備によってマイナ保険証の顔認証エラーなどが生じて資格確認ができず、国の規則通り『いったん10割負担になります』と告げなければならなかったケースもかなりの数にのぼります。そうした患者さんのなかには、『手持ちがないので今日は帰ります』と言って診療を受けずに引き返す方もいらっしゃる。こんな嫌な思いをさせてしまうと、病院への不信感につながって患者さんの足が遠のく可能性があります」(竹田氏)
6月、全国に先駆けて誤表示問題が発覚した千葉市では、市民による“マイナ不信”が深刻化している。5月は5件しかなかったマイナカードの自主返納件数が、6月は53件、7月は34件と急増した。 「理由として『制度を信用できない』『不安がある』といったものがありました。相談事例のなかにはマイナ保険証での紐付け情報に誤りがないかを心配する声もありました」(千葉市区政推進課)
厚労省は「調査中」
発覚している事例は氷山の一角にすぎない。『マイナ保険証の罠』(文藝春秋刊)の著者で経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。 「高齢者の本人負担は所得に応じているため、現役並みなら3割負担、住民税非課税世帯なら1割といった線引きのどこに位置付けられるかは毎年変わるし、制度も複雑です。高齢者自身が細かい金額にまで意識を働かせるのは難しく、窓口で言われるがまま支払っているのが実状でしょう。誤請求が発覚した事例では医療機関側が気づいたケースもありますが、すべてを見つけるのは無理がある。誤った金額を支払っている人の数は、もっと多いと考えられます」 厄介なのは、原因がはっきりと特定できていないことだ。前述の千葉市の例では、市職員が加入者情報を打ち間違えたことが理由だった。
だが、厚労省に取材すると「現在、原因を調査中」と歯切れが悪い。 「負担割合の相違の背景には、事務処理関係による入力ミスもあれば、診療報酬請求を行なうシステムに問題があるなど、いろんなパターンがあるであろうと思っています。今後、対策を検討していく方針です」(保険局高齢者医療課)
政府による対策が進まない以上、自力でトラブルを防ぐ必要があるが、リスクをどう回避したらよいか。荻原氏が言う。 「身も蓋もない話ですが、紙の保険証を使いましょう。負担割合の誤表示もなくなるし、医療機関窓口での顔認証エラーや本人の暗証番号忘れで資格確認できないといった問題も防ぐことができます。どうしてもマイナ保険証を利用したい場合は、面倒ですがマイナポータル(政府が運営するオンラインサービス)にログインして、表示される負担割合と紙の券面に印字されている負担割合が一致しているか、照らし合わせることです」 過去に過払いをしていなかったか気になる人は、健康保険組合や市区町村の健康保険担当課に問い合わせてみれば対応してくれる可能性がある。 マイナカードを信じていては“損をする”かもしれない。自己防衛の意識が重要だ。 ※週刊ポスト2023年9月8日号
感想;
問題はミスも大きいですが、そのミスを開示しないことです。
知られなければそのままにしようとの考えが姑息です。
だから信用できないのです。
次の問題はミスの原因がはっきりしていないので、対策が打てないのです。
高齢者の負担は年収によって変わります。
きちんとしたシステムで行っていただきたいです。
それにしてもトラブル続出で酷いです。
政府が悪いのか、システムを開発した富士通が悪いのか、それともそれを許してきた国民がよくないのか。
言えてることは、きちんと問題を先ずは開示していただきたいです。