・上京(高知から東京へ)した日のことは、今でもよく覚えている。見送りにきたのは、あの頃つきあっていた彼氏で「別れたくない」って泣いてくれた。「あたしも」って言ったけど、頭の中はこれから東京で始まる新しい生活のことでいっぱいで、優しくて、かっこよくて、おまけに地方公務員という、この先、二度とめぐりあえないハイスペックな彼氏とさよならすることに何のためらいもなかった。美大に進学して、絵を描いて食べていく人になる。高知にはもう戻らない。そう決めて、ただ、前だけを見ていた。
・私の田舎はとても貧しくて、子どもの頃、私の友だちは大人たちから本気で殴られていた。貧しさからくるどうしようもない怒りや悲しみは、暴力になって、一番弱い者にいく。
・カワイイ子ほど、ろくでもない男につかまって、人生決まっちゃうのが早い。離婚率も高くって、シングルマザーになっても、養育費をもらえないどころか、逆に借金だらけ。男に頼るような生き方をしていたら、確実に路頭に迷う。みんなひどくイライラしていた。それはすぐに暴力になって、男は女を殴り、最後は子どもにいく。そういう生き方を山ほど見てきた。
・自分も、将来はあんなふうに男に殴られて、子どもを殴る親になるのかと思ったら、大人になるのが、すっごく怖かった。
・私が大学を受験するはずの日に、父親が首を吊って死んだ。お葬式に呼び戻された私を待っていたのは、借金まみれの父親に、私の進学のためのお金を「出せ」と迫られて、ボッコボコに殴られた母親で、母親が死守したわが家の全財産140万円のうち、100万円が、私が東京に行って、予備校に通うための軍資金になった。
・夢や希望があって、ここまで歩いてこられたわけじゃなかった。働こう。自分でお金を稼げるようになれば、あんなつらい場所には戻らないで済む。もう二度と、あの場所には戻らない。そう心に決めていたからこそ、どんな時だって前を向くことができた。
・だから今、逆風の中にいて、どうしたらいいかわからずにいる女の子たちに、言っておきたい。そこから一歩踏み出すことを、どうか諦めないで。
・20歳までは、困れば誰か助けてくれるかもしれない。でもそこから先は、自分で道を切り開いていくしかない。
・若さや美貌は、あっという間に資産価値ゼロになってしまう。仕事のスキルや人としての優しさ、正しい経済観念。ゼロになる前にやっておかなければならないことはたくさんあります。自立するって、簡単なことじゃないからね。
・結婚したからって、そこがゴールじゃない。相手が病気になることもあれば、リストラされちゃうことだってある。どんなに立派な人だって、壊れてしまうことがある。つぶれない会社、病気にならない夫はこの世に存在しません。そうなってから「やだ。私、なんにも悪くないのに」じゃ、通らない。だから娘に言っています。「王子様を待たないで。社長の奥さんになるより、社長になろう」
・これから世の中に出ていく女の子に、覚えておいてほしいことがある。立派な言葉なら世の中に溢れてるけど、私が言いたいことは、そういうことじゃない。本当に覚えておかなきゃいけないのは、たぶん、転んだ時の立ち上がり方。長い人生、人は何回も転ぶ。その時腐らずに立ち上がる方法。どうか、覚えておいて。
・「5分間ルール」
つい感情的になっちゃう。5分間だけ別の部屋に行って、お互い冷静になる。たった5分、でも、その5分が、つい手をあげたり、声を荒げたりしないための防御壁になる。
・やりたいことができると、人は、コンプレックスと向き合うことになる。
・(美術予備校でデッサンが)最下位の自分にできることは、何なのか、そこで考えた。予備校時代の一年間で、最下位からスタートしたおかげで、自分と相手にどのくらい実力の差があるのか、それがわかるくらいの知識と技術は、身についていた。それで、私はエロ本に行ったんです。「自分には才能がある」と思っている人たちが、絶対に行かないところにこそ、自分の座れる椅子があるんじゃないか。そこからは売り込み1000本ノックですよ。下手な鉄砲も、数撃ちゃ当たる。「何でも描きます。よろしくお願いします!」
・連載コラムの挿絵を描くことになったときも、絵が下手だから文章で、って思い切りツッコミを入れるようにしたら、そのコラムを書いているライターの人が、わざわざ電話をくれたんですよ。
「毎回よく読んで描いてくれて、ありがとう。面白いよ。君はカット描きとして、きっと、食べていけると思うよ」って。自分のやった仕事を、人が「面白いよ」って褒めてくれた。あれは本当に嬉しかった。
・私は、美大に入った瞬間にまわりの人間の超上手なデッサンを見て「芸術はやめ!」って決めましたから。道はひとつじゃない。人生には抜け道、けもの道があるんですよ。地図には載っていない道が。自分が進むべき道を曲げる。このプライドのない切り替えが、大事なんだと思う。
・毎晩、酔っぱらいでぎゅうぎゅう詰めの終電に乗って、帰ってくると、ぐっちゃぐっちゃに散らかされた部屋でずっとテレビを見ていた無職の彼氏から「ねえ、靴下どこ?」って言われちゃう、そんな生活。今、あの頃のあの彼氏をぶん殴るじゃなくて、そんな男を捨てられないあの頃の私をぶん殴りたい。とにかく一人が怖かった、情けなさすぎる自分。
・絵の仕事だけで月収30万円を達成したのはその5年後のこと。嬉しくって、いつも行く定食屋で上エビフライ定職、頼んじゃった。エビフライが5本もついている、贅沢すぎて、普段は絶対に頼まないヤツ。この際だから、ビールもつけて、ひとりでカンパイ。あの嬉しさは、今でも覚えている。
・貧乏も、苦学も、若いうちなら笑ってできますから。資格をとるんなら、早いうちの方がいい。若い娘さんたちにもお願い。追い込まれて、次の一手が打てなくなる前に、生き抜くための戦略を必ず立ててください。
・誰かを好きになって、でもうまくいかないこともある。だからって、もう誰のことも好きになれないと思ったことは一度もなかった。傷ついたからこそ、それを分かり合える新しい出会いもあるんだなって。生きて生きて、今がいちばん幸せ。そう言える場所まで、ようやくたどりついた。ここまで私、よく頑張った。自分、お疲れ! みたいな。
・高須先生が、前に言ってくれたことがある。
鴨ちゃんとのつらい経験、それは若い頃の耕す時期だからです。人生の耕す時期は、台風や日照り、害虫など、それはもう理不尽なことがあとからあとからたくさんやってくる。それが生きていくということ。「そしてごらんなさい。今、目の前にある豊かな畑は、あなたがいろんな嵐から何度も何度も家族を守って、実らせた実ですよ」って。その畑の前に立ってる私は、ちょうど秋の夕暮れのいちばんまぶしい時期で、何を言われても、ただ嬉しくて涙がぽろぽろと出てくる。
・いい子にならなくていいんですよ。
いい子は幸せを人に譲っちゃうから。
いい嫁なんかになっちゃダメ。
いい嫁っていい女中。
あなたが笑うとあなたの大切な人が笑うよ。
・大事なのは、自分の幸せを人任せにしないこと。
そのためには、ちゃんと自分で稼げるようになること。
食いぱぐれないためには、最低限の学歴は確保する。できれば、資格もとって、スキルアップしておくこと。少しでもちゃんと稼げるように、早いうちから自分に出来ることをさがして下さい。
・人格を否定されたり、お金をわざともらえなかったり、見えないところで、ちくちくひどいことを言われたりしたら、殴られていなくても、それは「暴力」です。女の子たちに、まず知識として知っておいてほしい。あなたの人格を否定してはいけないということ。誰もそんなことをしていい人なんていない。覚えておいて。もしそういうことがあったら、世間体を何も気にする必要はない。行政には当日に入れるシェルターがあることや、いざというときの生活保護のうけ方。先に必ず知識として入れておいて下さい。とにかく逃げて。我慢しないで、頑張ろうと思わなくっていいから、一刻も早くそこから逃げて下さい。
・今から30年前、田舎のフィリッピンパブで皿洗いのバイトをしてて、そこの日本人ママに、こんな話を聞いた。
あの頃、パブで働くフィリピーナたちは、とういうわけか、みんな、遠距離交際中の白人の彼がいた。なぜって、白人の男と子どもをつくると、とびきりきれいな子が生まれるから。昔のフィリピンという国は、貧しいとこはとことん貧しくて、出稼ぎが主な産業で、風俗系のは特に多かった。
・どんな時でも、次の一手は、自分で考えて、自分が選ぶ。王子様を待たないで。幸せは、自分で取りに行ってください。
感想;
著者が何度も強調されていることは下記のようです。
”自分の人生人任せにせずに、自分が責任を持つ。そのためには自分で稼ぐことが必須で、幸せを自分で掴む”
多くのダメ男を好きになってきた体験からの言葉だけに重みがありました。
でも、つい寂しいので、ダメ男の温もりにすがってしまうのでしょう。
ダメ男もそこにつけ込むのが上手いのかもしれません。
ロゴセラピー注)では下記の言葉があります。
”二度目の人生を生きるように今を生きる”
人生を二度体験することはできません。
今を二度目を生きるように生きるということです。
二度目だと一度目の失敗をしない生き方を選択することができます。
西原さんが、”過去のあの時の私をぶん殴りたい”と言われています。
二度目ならぶん殴らなくても自分でよりよい選択ができます。
そのためには、先達の生き様からヒントを貰って生きることなのでしょう。
それには本から、歴史から学び、今に生かすことなのだと思います。
注)
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