英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

将棋初級講座④ ~逃げ道封鎖の術~

2011-06-17 21:27:51 | 初心・初級将棋

 問題図は▲8二銀の「詰めろ」に対し、後手は「大丈夫、大丈夫」と受けないで他の手を指したところです。私の実戦の場合、「詰めろ」を掛けて、「勝った!」と詰ましにいったら、読み抜けがあって愕然としたことが多々あります。が、今回は大丈夫です。さあ詰ませましょう!
 まず、一番自然な、▲8一銀不成(いただきマウス図)。

この手は、王手をしながら、いただきますと桂馬も取れるので、一石二鳥で調子よく見えます。ところが……

△9三玉(さよなライオン2図)と逃げられてしまいます。桂馬が手に入ったので、あきらめずに▲8五桂と王手を掛けても、△8四玉(失敗図)で捕まりません。



 失敗してしまいました。では、もう一度問題図に戻りましょう。

 失敗の原因は9三に玉を逃がしたことです。
 こうなった理由は二つ考えられます。
①桂を取りながら王手という気持ちよさに釣られた
 もちろん、それでいい場合もあります。実際、桂馬の入手が大きいこともあります。本問の場合は、失敗図のように捕えられませんでしたが、もし、自陣の歩が7六と9六に伸びていれば、▲7五金(場合によっては図)で詰みます。

 ただ、通常は王手をして上部に逃がすのは、「さよなライオン」とぽぽぽぽ~んのあいさつをされることが多いと覚えておいてください。

 さて、▲8一銀を誘発した原因はもう一つあります。
②問題図の段階では、8二の銀が9三にも利いていた。
 「9三に玉を逃がしてはいけない」ということは分かっていて、桂馬を取るまでは、9三に利いているので逃げられないと思い桂馬を取るのですが、銀を8一に動かすと、9三への利きも消えてしまうことをうっかりしてしまうのです。
 整理すると、①「上部(9三)に追っては(逃がしては)いけない」という意識の弱さと、②「銀を動かすと9三に利きがなくなってしまう」という読みの欠如、が原因です。

 さて、ここで、読みと感覚の飛躍(一段階ステップアップ)が必要です。
「▲8一銀不成とすると9三に逃げられてしまう」
         ↓
「もし、9三に逃げられないようにしてから▲8一銀歩成とすれば詰む」
         ↓
「9三に逃げられないようにするにはどうしたらよいか?」

と、いう発想になれば、もう少しです。
 通常、9三に逃がさないためには、9三の地点に自分の駒を利かせておけばよいのです。持ち駒に桂があれば▲8五桂、角があれば▲6六角と利かせておいて、それから▲8一銀不成と指せばいいのですが、本問の場合は角も桂もありません。
 しかし、実は、たとえ持ち駒に角や桂があっても、それらの手よりももっといい手があるのです。
 それが「逃げ道封鎖の手筋」です。
 上記のように、自分の駒の利きで逃げ道を封鎖するのが通常の手段ですが、相手の駒をそこに移動させて逃げ道に栓をさせてしまうのです。
 自分の駒を栓をしたい地点に移動、或いは打って、その駒を相手に取らせることによって逃げ道を封鎖するのです。
 もう、お分かりですね。▲9三金!(一閃図)

 このテクニックを知らないと、「問題図で8一の桂がなければ、▲9三金で簡単なのに、桂いるのでせっかく打った金を取られてしまう」と▲9三金は除外してしまいますね。
 ▲9三金には△同桂

の一手です。もし、実戦でこの手を指して、相手がこの技を知らなかったら、「しめしめ、桂馬が利いてるのをうっかりしているぞ」と喜んで金を取ることでしょう。そこで、▲8一銀不成!(解決図)

 相手は飛び上がるのではないでしょうか。
 問題図より▲9三金△同桂▲8一銀不成までの3手詰です。
 よくよく考えると、もともと8一の桂は王手でタダで取れるのですが、それは失敗してしまい、逆に▲9三金と金を献上して取れる桂を逃がしてしまってから▲8一銀不成とするのが正解なのです。
 良くできたパズルだと思いませんか?


 ちなみに、問題図で持ち駒が飛車だったらどうでしょうか?



 問題図と同じですね。飛車は勿体ないですが、同じように捨てれば、同じように詰みます。
 つまり、9三に捨てる駒は前に利く駒ならなんでもいいのです。
 歩でも成立します。
 だから、有段者はこういうことを見越して、あらかじめ9筋の歩を▲9五歩△同歩と突き捨てておくのです。

 こうしておけば、持ち駒は歩で済みます。(突き捨てておかないと「二歩」になります)

 今回は「逃げ道封鎖」のテクニックでした。
 前回の「引っ張り込み(おびき出し)」のテクニックもそうですが、詰将棋だけでなく、実戦の寄せでも役に立つ痛快なテクニックです。
 ただ、「逃げ道封鎖」は主に詰将棋で活躍し、「おびき出し」は実戦でも詰将棋でも活躍、「(下段に)引っ張り込み」は実戦で忘れてはならない基本です。
コメント (4)
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