ダンスカップルがそれぞれパートナーを庇い、それに真犯人の犯行が交錯。しかも3人の行為が独立して行われたため、結果的に複雑な多重構造の犯行となった。
『相棒』や絶好調期の『警視庁捜査一課9係』に良くあるエピソード……ペアが庇いあった結果、複雑に絡み合う事件……と言えるが、よく練られていて、見せ方も巧妙で面白かった。
須永と礼夏がパートナーを庇うための細工や嘘をつくのであるが、当然、右京は人為的な作為による矛盾を見つけ出す。ただ、どちらを犯人と仮定しても、両者の言動に不合理な点が出てしまう。いったいどういうことなのか……
それを、右京が明晰な頭脳で解き明かいていった。面白かったが、どうもこの前の数学事件の影響を受けてしまったようで、「どちらを犯人と仮定しても、矛盾が生じてしまう。ということは、「“ふたりの中に犯人がいる”という仮定が間違っている」という台詞を聞きたかったと思ってしまった。
事件の構造を複雑にしたのが、須永・礼夏ペアが転倒するというアクシデント(これがなければ、礼夏が須永を庇う行為を行わなかった)
偶発的な転倒と考えられたが、右京は「起こるべきでないことが起きた時、そこには必ず理由があります」という考えから、熟練ペアが他のペアと接触することのないデモンストレーションで転倒するという起こるべきでないことが起きた理由を検証する。
実際の現場で、須永たちのステップを再現して、転倒の原因を解明し、事件の真相に辿り着いた。
しかも、このダンスを有望若手ペア(女性が真犯人)に再現させて、自白めいたものをさせてしまう。普通は倒れているトロフィを目撃してもダンスを中断しないが、彼女(真犯人)にとっては「トロフィ=凶器」であったため、それを見て思わず足が止まってしまったのだった。
事件を複雑にした転倒が、犯人追求の決定打となった。見事な展開だった。
★ボールルームダンスの真髄を示す言葉が印象的だった
「向き合って、ホールドした瞬間、相手の気持ちが分かる」(須永)
「彼(須永)がしたことに私が気付いたのは、このフロアに立って立って彼と組んだ時だ。彼がとても傷ついて、苦しんでいる、それがわかったわ」(礼夏)
お互い、同じような言葉を言ったが、礼夏の方がより自分を理解していて、自分はそんな礼夏の気持ちを分かっていなかったと須永は嘆く。
パートナーの心の闇を悟れなかった芳川君も未熟だぞ。
「ボールルームダンスでは、リードは常に男性で、どんな方向に行くのか、どんなステップを踏むのか、男が決めなければ、女は一歩も踏み出すことはできません」
欧米文化の「レディーファースト」とは対照的な精神であり、意外な気もする。私は経験がないので何とも言えないが、こういう一種の「一心同体」でダンスを踊るというのは陶酔の境地になるのかもしれない。
実際にダンスをする女性の気持ちはどうなのだろうか?
右京はこの言葉を継いで、「ひょっとすると、カップルの解消が決まった時、礼夏さんはあなたに引き留めてもらいたかったじゃあありませんかねえ」……深いなあ
それはともかく、悦子ペアは思いっきりセオリーを無視していた……
☆煌びやかなダンス姿
真飛聖さんや陽月華さんたちの姿がとても素敵で、もっとダンスシーンを観たかった。
それにしても、「ナチュラルターン」「真っ直ぐ、笑ってぇ!」とリードする悦子は微笑ましかった(6点を獲得していたのは、悦子に見惚れた審査員がいたからであろう)。また、予選落ちも自分の未熟さであると落胆。
美人でプロポーションも抜群で、しかも知的。それを鼻に掛けることもなく、優しい(ミーハーな面もチャーミング)……素晴らしい!
☆悦子に比べて、享は…
「キミ、最近、解りが早くなってきましたねえ」と評価されるほど、右京の有能な助手となった享であるが、単に右京の言葉を引き継いで語らせられているだけの存在。
明智小五郎の名助手・小林少年ならいいのだが、刑事である国家権力と、類まれなる明晰な頭脳の右京をバックに、≪よ~く知っているんだから、知っていることは白状しろよ、オラオラ!≫的な態度が鼻についてしまう(毎回、くどくて済みません)。
とにかく、話をテンポ良く進めるための存在になっている。この際、助手として価値を高めるのなら、いっそ小林少年みたいに、狙われた女性に変装して捉えられ、密封された空間に閉じ込められ、酸欠で鼻血を出して窒息寸前になるような痛めつけられキャラになっていただきたいものだ。
【その他の感想】
・陽月華さんが、時折、説明的台詞で語尾を引っ張るのは「宝塚」のクセか?
・芳川ペアに聴取する際、遥子がノートパソコンを閉じるのが場面としてあまりにも不自然だった
・湯沢社長を演じた佐々木勝彦さんは、地位は高いが、高慢な悪人を演じることが多い(悪人ではあるが、真犯人であることは少ない)が、今回はまともな人物だった。
今回、遺体発見時の言動が白々しかったので、もしかしたら犯人かと思ったが、右京たちを事件に絡ませるためだった。
・「34番!」……右京が声援の見本を示したが、「警告」や「指導」の号令や注意のようにしか聞こえなかった。
【ストーリー】番組サイトより
悦子(真飛聖)が出場するボールルームダンス競技会の会場で、大会のスポンサーの社員・茂手木(若林久弥)の他殺体が発見された。悦子の応援に来ていた右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)は、偶然第一発見者となり捜査に協力することに。
茂手木は殺害される直前まで役員控室で仕事をしていたらしい。当日は国際大会で輝かしい成績を収めていた須永(大澄賢也)と礼夏(陽月華)がデモンストレーションも行っていたが、被害者は午後5時10分ごろ、大会終了後に話があると礼夏に電話をかけていた。米沢(六角精児)によると死亡推定時刻は午後3時半から5時半の間。犯行は5時10分から30分までの20分間ということになる。
一方、須永と礼夏のカップルが最近の大会で成績が伸び悩んでいたことが判明。さらに被害者が勤務していたスポンサーは、須永と礼夏のカップルを解消させ、礼夏を新進気鋭のダンサー・芳川(廣瀬大介)と組ませようとしていたことがわかった。ダンサー間にトラブルなどなかったのだろうか…?
華やかなボールルームダンスの舞台裏から浮かび上がる愛憎劇。二転三転する捜査の末に明らかになる意外な犯人と動機とは?
ゲスト:大澄賢也、陽月華
脚本:戸田山雅司
監督:東伸児
『相棒』や絶好調期の『警視庁捜査一課9係』に良くあるエピソード……ペアが庇いあった結果、複雑に絡み合う事件……と言えるが、よく練られていて、見せ方も巧妙で面白かった。
須永と礼夏がパートナーを庇うための細工や嘘をつくのであるが、当然、右京は人為的な作為による矛盾を見つけ出す。ただ、どちらを犯人と仮定しても、両者の言動に不合理な点が出てしまう。いったいどういうことなのか……
それを、右京が明晰な頭脳で解き明かいていった。面白かったが、どうもこの前の数学事件の影響を受けてしまったようで、「どちらを犯人と仮定しても、矛盾が生じてしまう。ということは、「“ふたりの中に犯人がいる”という仮定が間違っている」という台詞を聞きたかったと思ってしまった。
事件の構造を複雑にしたのが、須永・礼夏ペアが転倒するというアクシデント(これがなければ、礼夏が須永を庇う行為を行わなかった)
偶発的な転倒と考えられたが、右京は「起こるべきでないことが起きた時、そこには必ず理由があります」という考えから、熟練ペアが他のペアと接触することのないデモンストレーションで転倒するという起こるべきでないことが起きた理由を検証する。
実際の現場で、須永たちのステップを再現して、転倒の原因を解明し、事件の真相に辿り着いた。
しかも、このダンスを有望若手ペア(女性が真犯人)に再現させて、自白めいたものをさせてしまう。普通は倒れているトロフィを目撃してもダンスを中断しないが、彼女(真犯人)にとっては「トロフィ=凶器」であったため、それを見て思わず足が止まってしまったのだった。
事件を複雑にした転倒が、犯人追求の決定打となった。見事な展開だった。
★ボールルームダンスの真髄を示す言葉が印象的だった
「向き合って、ホールドした瞬間、相手の気持ちが分かる」(須永)
「彼(須永)がしたことに私が気付いたのは、このフロアに立って立って彼と組んだ時だ。彼がとても傷ついて、苦しんでいる、それがわかったわ」(礼夏)
お互い、同じような言葉を言ったが、礼夏の方がより自分を理解していて、自分はそんな礼夏の気持ちを分かっていなかったと須永は嘆く。
パートナーの心の闇を悟れなかった芳川君も未熟だぞ。
「ボールルームダンスでは、リードは常に男性で、どんな方向に行くのか、どんなステップを踏むのか、男が決めなければ、女は一歩も踏み出すことはできません」
欧米文化の「レディーファースト」とは対照的な精神であり、意外な気もする。私は経験がないので何とも言えないが、こういう一種の「一心同体」でダンスを踊るというのは陶酔の境地になるのかもしれない。
実際にダンスをする女性の気持ちはどうなのだろうか?
右京はこの言葉を継いで、「ひょっとすると、カップルの解消が決まった時、礼夏さんはあなたに引き留めてもらいたかったじゃあありませんかねえ」……深いなあ
それはともかく、悦子ペアは思いっきりセオリーを無視していた……
☆煌びやかなダンス姿
真飛聖さんや陽月華さんたちの姿がとても素敵で、もっとダンスシーンを観たかった。
それにしても、「ナチュラルターン」「真っ直ぐ、笑ってぇ!」とリードする悦子は微笑ましかった(6点を獲得していたのは、悦子に見惚れた審査員がいたからであろう)。また、予選落ちも自分の未熟さであると落胆。
美人でプロポーションも抜群で、しかも知的。それを鼻に掛けることもなく、優しい(ミーハーな面もチャーミング)……素晴らしい!
☆悦子に比べて、享は…
「キミ、最近、解りが早くなってきましたねえ」と評価されるほど、右京の有能な助手となった享であるが、単に右京の言葉を引き継いで語らせられているだけの存在。
明智小五郎の名助手・小林少年ならいいのだが、刑事である国家権力と、類まれなる明晰な頭脳の右京をバックに、≪よ~く知っているんだから、知っていることは白状しろよ、オラオラ!≫的な態度が鼻についてしまう(毎回、くどくて済みません)。
とにかく、話をテンポ良く進めるための存在になっている。この際、助手として価値を高めるのなら、いっそ小林少年みたいに、狙われた女性に変装して捉えられ、密封された空間に閉じ込められ、酸欠で鼻血を出して窒息寸前になるような痛めつけられキャラになっていただきたいものだ。
【その他の感想】
・陽月華さんが、時折、説明的台詞で語尾を引っ張るのは「宝塚」のクセか?
・芳川ペアに聴取する際、遥子がノートパソコンを閉じるのが場面としてあまりにも不自然だった
・湯沢社長を演じた佐々木勝彦さんは、地位は高いが、高慢な悪人を演じることが多い(悪人ではあるが、真犯人であることは少ない)が、今回はまともな人物だった。
今回、遺体発見時の言動が白々しかったので、もしかしたら犯人かと思ったが、右京たちを事件に絡ませるためだった。
・「34番!」……右京が声援の見本を示したが、「警告」や「指導」の号令や注意のようにしか聞こえなかった。
【ストーリー】番組サイトより
悦子(真飛聖)が出場するボールルームダンス競技会の会場で、大会のスポンサーの社員・茂手木(若林久弥)の他殺体が発見された。悦子の応援に来ていた右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)は、偶然第一発見者となり捜査に協力することに。
茂手木は殺害される直前まで役員控室で仕事をしていたらしい。当日は国際大会で輝かしい成績を収めていた須永(大澄賢也)と礼夏(陽月華)がデモンストレーションも行っていたが、被害者は午後5時10分ごろ、大会終了後に話があると礼夏に電話をかけていた。米沢(六角精児)によると死亡推定時刻は午後3時半から5時半の間。犯行は5時10分から30分までの20分間ということになる。
一方、須永と礼夏のカップルが最近の大会で成績が伸び悩んでいたことが判明。さらに被害者が勤務していたスポンサーは、須永と礼夏のカップルを解消させ、礼夏を新進気鋭のダンサー・芳川(廣瀬大介)と組ませようとしていたことがわかった。ダンサー間にトラブルなどなかったのだろうか…?
華やかなボールルームダンスの舞台裏から浮かび上がる愛憎劇。二転三転する捜査の末に明らかになる意外な犯人と動機とは?
ゲスト:大澄賢也、陽月華
脚本:戸田山雅司
監督:東伸児