英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2018アジア大会雑感 その4「男女混合種目の問題点」

2018-09-10 17:53:24 | スポーツ
 テニス、卓球、バドミントンなどでは、従来よりミックスダブルスとして男女混合競技が設けられているが、今回のアジア大会で男女混合種目が新たに設けられた競技が見られた(競泳でメドレーリレー、陸上競技で4×400mリレー、柔道で混合団体)。
 競技の盛り上がりとしてはプラス面が大きいが、問題点も感じた。


1.出場する種目や階級に偏りが生じる
 柔道の体重別の階級は、男子が100kg超級、100kg級、90kg級、81kg級、73kg級、66kg級、60kg級。女子は78kg超級、78kg級、70kg級、63kg級、57kg級、52kg級、48kg級があるが、混合団体は男女各3人のチーム構成となり、階級をまとめることになる。つまり、男子は90kg超級、90kg級、73kg級、女子は70kg超級、70kg級、57kg級に分けられる。
 例えば男子の81kg級の選手は90kg級のクラスに入る。日常生活では9kgの差はそれほど大きいモノとは感じられないが、柔道やボクシングなどの格闘技ではその差は大きい。よって、よほどの実力者がいない限り、重い級の選手が選出されることが多い。

 競泳のメドレーリレーでは、別の理由で参加選手の偏りが生じる。
 男女2名なら種目(泳法)での制限はない。しかし、物理(数学)的に考えると、女子は背泳ぎと平泳ぎ、男子はバタフライと自由形がベストの組み合わせであるようだ。
 100mの日本記録を見ると、男子は背泳ぎ52秒24、平泳ぎ58秒78、バタフライ51秒00、自由形(クロール)47秒87、女子は背泳ぎ58秒70、平泳ぎ65秒88、バタフライ56秒08、自由形(クロール)53秒03。
 男女差は背泳ぎ6.46秒、平泳ぎ7.10秒、バタフライ5.18秒、自由形、5.16秒。日本記録の中には高速水着時代のものも含まれていたり、種目による日本選手のレベルも違う(女子バタフライは池江選手が記録のレベルを上げた)ので、検証の精密さに欠けるが、「女子選手が背泳ぎと平泳ぎ、男子選手がバタフライと自由形」の組み合わせと「女子選手がバタフライと自由形、男子選手が背泳ぎと平泳ぎ」組み合わせとでは、前者の方が3.22秒遅い。(泳速の遅い泳法の方が差が付く)
 実際にも後者の組み合わせを選択する国がほとんどだった。

 このように、現状の仕組みだと、階級や種目によって出場のチャンスに差が生じてしまう。

2.女子選手の負担が大きい
 競泳の場合は、上述したように女子選手がバタフライと自由形に出るのが得策なので、男女が同時に泳ぐというシーンは少ない。しかし、参加国の選手事情によって、他の組み合わせで臨む場合もある。例えば、女子バタフライに速い選手がいなくて女子背泳ぎにメダリストがいる場合、女子選手の参加種目に背泳ぎと自由形を選択することになる。この場合、女子の背泳ぎの選手は男子選手に混じって泳ぐことになるが、当然、男子選手のペースが速いのでそれにつられてオーバーペースになりがちである。また、隣のレーンを男子選手が泳ぐので、いつもより大きな波をかぶることになってしまう。

 陸上競技の混合リレーは男女の走順は自由。競泳と違って、計算上の走順による差は出ないが、女子選手が男子選手と同走する場合、男子選手に釣られてオーバーペースになりやすい。また、男子選手に抜き去られたり、引き離されたりするので、心理的にも辛い。

 従来から実施されている球技の混合ペア戦も、男子選手の強い球を受けなければならない女子選手は大変である(バドミントンの場合は男子選手のコートカバーの割合が大きいが)。特に顕著なのが、卓球のミックスダブルス。卓球のダブルスの場合(混合に限らず)、必ず交互に打たなければならない。なので、混合の場合、(仮にAチームBチームとする)A男→B男→A女→B女という順になる(ゲームによってこの順は変わる)。
 この場合、このゲームではAチームの女子選手がBチームの男子選手の球を受け続けることになる。


3.出場選手の負担が大きい
 競泳何種目も兼ねる選手も多い。特に自由形は50m、100m、200m、4×100mリレー、4×200mリレー、メドレーリレーと種目が多い。さらに混合リレーが増えるとなると、さらに負担が大きくなる
 また、陸上競技の混合リレーは400m走で、男子4×400mリレーや女子4×400mリレーを走る選手が出場することになる。この400m走は非常に苛酷な種目で、これを予選、決勝と4レース走るのは相当負荷が大きい。予選を補欠の選手が出場することが可能ならいいのだが、予選通過ギリギリのチーム力ならベストメンバーを組まなければならない。また、400m走を走れる選手は限られているので、実力が遜色ない補欠選手を用意するのも大変である。


 男女が協力してプレーをすることは素晴らしいが、もう少し練って実施してほしいものである。

その1「至極残念な中継 ①温度差がありすぎる中継」
その2「至極残念な中継 ②浅いインタビュー」
その3「至極残念な中継 ③勝手に大会終了」
その4「男女混合種目の問題点」
その5「甘い“技あり”判定」
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