英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

第72期名人戦 第4局 その3「森内の計算、そして誤算」

2014-05-26 23:27:21 | 将棋
森内名人の思惑通りに進んだ第5図


森内名人の計算
①角桂交換の駒得
 先手が切った角は、羽生三冠が命運を託した角で、5六→3四→2五→4七→3六→4七→5六→4五→2三(角切り)と何手も費やしている。その角を切るのは先手の損失が大きい。さらに、桂角交換の駒損で手に残った桂を3六に打ったが、“空振り”の感が強い
②十分な攻撃体勢
 これまでに手のやり取りで後手は効率よく指し手を進めた。
 その結果、9筋の突き捨ても入り、6六の歩の拠点も大きく、さらに6五の銀を初め、飛、桂の後押しもある。
③龍は追い返せる
 というはずだったが、おそらく、これが森内名人の誤算であろう。(次項へ)

森内名人の誤算
 時と場合に依るが、飛車を成り込むことは大きな得点である。さらに玉の近くに龍ができれば、玉にとっては相当な脅威となる。本局の第5図がそうで、近いうえ玉がむき出しである。
 しかし、玉の周囲に龍取りと駒を打ち、先手で駒を埋めて、龍と玉の接近を逆用出来る場合がある。

 本局がそれであるはずだった。
 第5図以下、△3二銀▲2二龍△3三角(森内思惑図)と。


 しかし、△3二銀には▲3三金という強烈な勝負手があった。以下△3三同銀▲2五桂(森内誤算図)。

 金の犠牲は大きいはずだが、それを桂の活用で補い、玉飛の接近状態を維持する。これがほどけず、相当厄介だ。

 厳密に言えば、第5図は後手が良いはずだ。しかし、その差が相当小さくなった。
 やはり、先手の飛車を抑え込むか、捌かせない指し方のほうが良かったのではないだろうか。堂々と指し過ぎたのだ。


 森内名人は3筋で受けても食いつかれると見て、△5四歩と玉の中央への脱出を図って、先手の攻めをいなそうとした。
 しかし、それを阻止したのが▲6四歩(第6図)。

 この2手の交換はどちらが得をしたのだろうか。
 玉の安全度で言えば、5三に逃げる余地ができた分だけ後手の得。
 しかし、攻めの足掛かりができ、しかも挟撃体制を作れたのは先手の得。
 微妙な損得計算で、「この後の指し手次第」と言うしかないのかもしれない。

 観戦中は、第5図より△3二銀以下思惑図で、先手が厳しいとみていたが、△3二銀と指さず(指せず)に△5四歩▲6四歩と進み、俄然、観戦に力が入ってきた。(続く

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2 コメント

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前回のその2の時 (kazutoyo0626)
2014-05-29 20:18:08
最終の第5図で私も自分なりに形勢を考えてみたんです。
先手は龍を作ってますが、角金交換の駒損ですし、
6筋に楔を打ち込まれてますから、ちょっと先手が厳しい感じかなと思いました。
具体的には、後手は端に龍取りに角を打ち、
龍が逃げたら、角を切った後銀を打ち込めば、
ほぼ飛車成が受からないし、角の王手には銀が効いているからOKと考えたのですが、
冷静になってみると、王手で龍に入られると、
手順に香車と角が抜けちゃうことに気が付きました^^;
それで3筋に銀・角と打って王手を防いでも、
後で桂跳ねが角に当ってくるので、
思っている程後手のリードは大きくないのかしら?
と思って、その3を楽しみにしていました^^
そしたら森内さんは5筋の歩突きなんですね。
それなら次は端に角を打つ筋が受からないから、
羽生さんは何か受けるのかしらと思ったら、
6筋に歩を垂らすなんて、もう全然さっぱり分かりません(笑)
返信する
意外と難しい局面でした ()
2014-05-29 20:55:05
kazutoyo0626さん、こんばんは。
じっくり読んでくださって、うれしいです。

>先手は龍を作ってますが、角金交換の駒損ですし、
6筋に楔を打ち込まれてますから、ちょっと先手が厳しい感じかなと思いました。

 ええ、その通りだと思うのですが、龍の存在が思った以上に大きくて、意外と難しい局面でした。

>王手で龍に入られると、手順に香車と角が抜けちゃうことに気が付きました^^;

 でも、△5四歩と▲6四歩の交換はありましたが、実戦はおっしゃるように進みましたね。
 そして、△5四歩と▲6四歩の交換の損得は微妙なのですが、今日現在の私の感触は、後手が得したような気がしています。(理由は「その5」で)
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