英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2020 王将戦挑戦者決定リーグ 羽生九段-佐藤天九段 その1「飛車先交換最前線」

2020-10-19 16:13:27 | 将棋
勝ちにくそうだなあと思われる側を持って序中盤を乗り切り、終盤の入り口辺りで形勢を損ない、辛抱の手順が続き何とか持ちこたえるが、最後に押し切られてしまう………
今回も悔しさをバネに記事を書くのか……と思いながら図面を作成していた



 興味深い序盤だった。

 実は第1図の局面は、この対局の6日前に指された永瀬王座ー郷田九段(順位戦B級1組)と同一手順。まだ17手目なので、同一手順というのは珍しいことではない。ただ、この局面で目を引くのは、1筋の端歩を互いに突き合っていること。この辺りの文(あや)を棋譜速報の解説で的確に説明されているので引用します。
「角換わりの定跡では通常、▲2四歩と突けるように見えて、実際には突くと痛い目に合うようにできている。△同歩▲同飛に△3三角として、(1)▲2八飛なら△8六歩▲同歩△8八歩、(2)▲3四飛なら△2八歩が厳しいためだ。
 ただし本局の場合は勝手が違って、(2)▲3四飛△2八歩に▲1七桂と逃げる余地がある。1筋の突き合いがプラスに働いて、先手悪くないのだろう。
 ▲4八銀に代えて▲3八銀の類例が数局あり、その場合は△同歩▲同飛に(3)△1三角の展開だった。5七を守ってあれば△1三角は単なる飛車取りに過ぎない。先手が改良した点かもしれない」


 果たして、飛先交換は成立するのだろうか?
 永瀬王座ー郷田九段戦は、この局面で郷田九段が1時間35分の長考に沈み、△2四同歩を着手。
 以下▲2四同飛△3三角▲3四飛(第2図)と進む。(羽生九段ー佐藤天九段戦も同様に進む。第2図の対局者は▲羽生ー△佐藤天、▲永瀬ー△郷田の両方兼ねています)

 先の解説の通り、ここで△2八歩はうまくいかない。なので、△8六歩▲同歩△8八歩(参考図)の手段を選択。しかし、この手順は△3三角に先手が▲2八飛と引いた時の手段である。

 参考図は一見、先手が困っているようだが、先手の飛車が3四に居るので△8八歩に対して▲同銀と取ることができる。△8八同角成には▲3二飛成と金を取って先手必勝。
 因みに、参考図までの永瀬王座の考慮時間はわずか7分(郷田九段は1時間51分)。永瀬王座の研究手順に間違いない。(おそらく、図までの手順は他の棋士も研究しているだろう)
 参考図以下、△8六飛▲7七角(▲7八金だと△2三銀▲3六飛△8八角成がありそう)。

 以下、△8五飛(△2五飛の転回を視野)▲1七桂(飛車の転回を阻止)と丁々発止の指し手の後、一転、玉の整備と飛車の位置を直す手順が続く。
 気がつくと横歩取り戦に似た展開だが、横歩取り戦より後手が歩損しており、通常の横歩取りとはマイナスである1七桂型の弱点を突くべく△1五歩!

 以下進んで参考図4……とこれ以上永瀬ー郷田戦に構っていては、何の記事だかわからなくなる。
 この将棋は95手で永瀬王座が勝利。面白い将棋だったと感想を述べて、羽生ー佐藤天戦に戻らせていただきます。
 

 第2図で佐藤天九段は△4二玉。3二の金に紐をつけ、今度こそ次に△8六歩▲同歩△8八歩の筋を決行する構えだ。
 ところが、羽生九段は▲3九金。金銀の連携を良くしつつ、2八の隙をカバーした手だが、直前の▲1六歩で既に△2八歩に備えているではないか?2筋よりも△8六歩~△8八歩に備えるのが急務なのでは?

 嗚呼、(△8六歩が)来ちゃったじゃん!

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