みよしのの やまのあなたに やどもがな よのうきときの かくれがにせむ
み吉野の 山のあなたに 宿もがな 世の憂きときの かくれがにせむ
よみ人知らず
吉野の山の奥に宿がほしいものだ。世の中がつらい時の隠れ家にしよう。
「あなた」は「過去」「将来」両方の意味を持つ面白い(?)語ですが、ここでは「あちら」「むこうの方」の意。過去や未来は時間的に、あちらは空間的に、どちらも「遠くの方」を表すということですね。吉野はそもそも隠遁の地で、世がつらい時にはそのさらに奥(あなた)の宿に行きたい、という詠歌です。