つくばねの このもとごとに たちぞよる はるのみやまの かげをこひつつ
筑波嶺の 木のもとごとに 立ちぞよる 春のみ山の かげをこひつつ
宮道潔興
筑波山の木ひとつひとつに立ち寄っています。春の山の蔭を恋しく思うように、東宮のご加護を願いながら。
詞書には「親王の宮の帯刀にはべりけるを、宮仕へつかうまつらずとて、解けてはべりける時によめる」とあります。「親王の宮の帯刀(たちはき)」は親王の身辺の警護にあたる役職、「春のみ山」は「春の宮」、すなわち東宮(皇太子)を指しており、その「かげ」=「加護」ですね。怠慢により役職を解任されたときに詠んだということで、反省して主の許しを願う歌というところでしょうか。
作者の 宮道潔興(みやじ の きよき)は詳細不明ですが平安時代前期の官人。勅撰集への入集は古今集のこの一首のみです。