こころとて ちらむだにこそ をしからめ などかもみぢに かぜのふくらむ
心とて 散らむだにこそ 惜しからめ などか紅葉に 風の吹くらむ
紅葉が自ら勝手に散るのでさえ惜しく感じられるのに、どうしてことさらに風が吹いてさらに散らしてしまうのだろう。
桜に比べると紅葉が散るのを惜しむ歌が少ないのは、桜ほどあっという間には散ってしまわないからでしょうか。個人的には、「紅葉が散る=本格的な冬に向かう」というイメージで、散ったあとの枝ぶりが寒々と感じられてより物寂しい気持ちになります。
この歌は、拾遺和歌集(巻第三「秋」 第209番)に入集しており、そちらでは第一句が「こころもて」とされています。