のとならば うづらとなきて としはへむ かりにだにやは きみがこざらむ
野とならば 鶉と鳴きて 年は経む かりにだにやは 君が来ざらむ
よみ人知らず
ここが野となったならば、私は鶉(うずら)となって悲しいと鳴きながら長い年月を過ごすことでしょう。仮そめにでもあなたが狩りにやってこないなどということはないでしょうから。
0971 への返しで、両歌は伊勢物語第123段に採録されています。「鶉(うずら)」の「う」には「憂」が掛かり、「かり」は「仮」と「狩り」の掛詞ですね。また、この歌を本歌取りした藤原俊成の歌はつとに有名です。
ゆふされば のべのあきかぜ みにしみて うづらなくなり ふかくさのさと
夕されば 野辺の秋風 身にしみて 鶉鳴くなり 深草の里
(千載和歌集 巻第五「秋上」 第259番)