あきならで あふことかたき をみなへし あまのかはらに おひぬものゆゑ
秋ならで あふことかたき 女郎花 天の河原に 生ひぬものゆゑ
藤原定方
秋でないと逢うことが難しい女郎花よ。織姫と彦星が年に一度しか逢えないという天の川に生えているわけでもないのに。
さらっと読むと「生ひぬ」の「ぬ」が完了の助動詞のように見え、さらに「ものゆゑ」が現代語の感覚だと順接にしか見えないことが、この歌の歌意を一読で理解することを難しくしています。正しくは「ぬ」は否定の助動詞「ず」の連体形であり、また、「ものゆゑ」は古語では順接・逆接の両方の意味があるところ、ここでは逆接として使われていて、従って上記のような歌意となります。 ムズカシィ~
作者の藤原定方(ふじわらのさだかた)は平安時代前期から中期にかけて生きた貴族にして歌人。官位は右大臣で、三条に邸宅があったことから、三条右大臣と号しました。勅撰集に全部で十三首が入集していますが、古今和歌集にはこの一首のみ。後撰集採録の次の歌は、三条右大臣の名で百人一首にも採られていますね。(第25番)
なにしおはば あふさかやまの さねかずら ひとにしられで くるよしもがな
名にしおはば 逢坂山の さねかずら 人にしられで くるよしもがな