たがあきに あらぬものゆゑ をみなへし なぞいろにいでて まだきうつろふ
誰があきに あらぬものゆゑ 女郎花 なぞ色に出でて まだきうつろふ
紀貫之
秋は誰かのものというわけではなく誰にでも訪れるものであるのに、女郎花よ、どうしてそれとわかるほどにいち早く色褪せてしまうのか。
こちらもなかなかに難解です。さらっと読む限りでは、秋の訪れとともに他の草花に先駆けて色褪せてしまう女郎花に向けて、「秋はみんなのことろに等しく訪れているのに、どうしてそんなにさっさと色あせてしまうのか」と呼びかける歌ということになります。ですが、例によって女郎花は女性の象徴。「秋」は「飽き」との掛詞になっていて、女性の心変わりを嘆く男性の心情が込められてもいます。