いまこむと いひてわかれし あしたより おもひくらしの ねをのみぞなく
今来むと 言ひて別れし 朝より 思ひくらしの 音をのみぞなく
僧正遍昭
すぐにまた来るとあの人が言って別れた朝から、私はあの人のことを一日中思い続けて、まるで蜩が鳴くように泣いてばかりいます。
「思ひくらし」の「ひくらし」が「日暮らし」と「蜩」、第五句の「なく」が「鳴く」と「泣く」の掛詞になっています。出だしが共通の 0691 の歌と、内容も似ていますね。0691 の作者素性法師と僧正遍昭は親子ですので、たまたま似ているのではなく、直接関係のある歌なのかもしれません。
いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな
今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
素性法師