札幌中心部にある大きなビル。
道路が直角に交差していますが、歩道の線は直角ではなく斜めになっていて、ビルの外観も、斜めの線に沿うように形作られています。
下から見るとこんな感じ。
上空から見るとはっきり分かります。
都市部では決して珍しくはない光景かと思いますが、直角に交わる二つの道路に面した角地の頂点部分を切り取って道路状に整備することを「隅切り」といい、例えば、曲がり角において、見通しをよくして安全を確保するという役割を果たしています。
市町村の条例または指導によって実施されることが多く、角地の頂点部分を道路として扱い、建築制限が課せられることから、「角敷地の建築制限」とも言われています。
正式に道路敷地として買収されている場もが多いですが、都市計画上の規定がある場合は、正式に道路敷地として買収されていなくても、実際には隅切り部分も含めて個人の土地でありながら、隅切りに相当する部分には建築制限が課せられ、自由使用ができなくなっているという実態もあります。
自治体の条例で細かく規定されていることも多く、例えば札幌市の場合は、市道認定に当たり、道路が交差する箇所においては、幅員に応じた寸法で隅切りの設置が条件とされています。
隅切りの形は直角二等辺三角形であることが多く、斜辺の寸法は、その場所によって、例えば2mだったり3mだったりと、一律には決められていません。
また、隅切り部分に建築制限が課せられていることから、写真のように土地の有効活用のため、斜辺ギリギリの形で建物を設計し、建築していることが多いです。
と、それを踏まえての話。
こちらの建物なのですが、これまで紹介してきた場所に比べて、斜辺の長さが段違いで、建物が随分大胆にカットされているように見えます。
実際の寸法がどのくらいあるのか分かりませんが、これは明らかに他の箇所よりも隅切り部分の面積が広くなっていると思います。
私も先日知ったのですが、この場所の隅切りがここまで大きくなっていたのは、かつてこの場所が札幌市電のルートになっていて、大きな回転半径を描いて曲がるように路線が敷かれていたことの名残なのだそうです。
かつてと言っても、開業したのは大正12年(1923年)の話であり、どこまで精密に計算、測量して線を引いたかは定かではありませんが、当時なりに、想定される最大回転半径を考慮に入れて、それに耐えられるように道路の形を決めたということなのでしょうね。
職場の近くでもあり、何気なく通っていた場所ですが、このようないわれがあると知り、興味深く感じました。
この場所は↑の地図のとおり。
交差点を左折した経路で、かつて市電が走っていました。
中央分離帯があるのは、かつての軌道敷地の名残なのかもしれません。
ここで行き止まりになりますが、この先は北海道神宮。
現在はこの下に地下鉄東西線が走っていますが、かつてはこの経路で市電が走っていたということなんですね。
反対側へ向かって一枚。
ここには中央分離帯はありませんが、道路の幅員は一定になっていますね。
最後に、これは札幌市郊外の住宅街ですが、札幌市では、このように狭い道路が交差する場所においても、条例により、隅切りの制限が義務付けられています。
確かに、こうすることで見通しも確保され、安全も保たれる気がしますね。