monologue
夜明けに向けて
 



「おや、なんだね、六さん。また来たのかい。まだあれからひと月も経たないじゃないか。あの道楽劇団はもうつぶれたかい。」

「あれから、『アオウエイ』順で声出し稽古を始めたらなんだかみんな力がみなぎるというかやる気が出て活性化してきて希望が出てきました。ご隠居さんのおかげです。」
「なんだ、まだつぶれてなかったのか。それは残念、無念。それではわたしが劇団存続の戦犯ということになるじゃないか。これからおまえさんたちの舞台を見ることになる不幸な観客たちに恨まれる。ひっそりとだれにも知られないうちに消滅してほしかった。」
「好きなように言ってください。今度の舞台は今までと違うんですから。馴染みのない西洋の演劇の真似はやめて日本人のアイデンティに基づいた『ヒミコ』を採り上げようということになったんです。」
fumio

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