「境界に生きた心子」を読んでくださった読者の方からお手紙をいただきました。
心子と同じ心の障害を抱えて亡くなられた女性のお母さんからです。
娘さんはわずか18歳で自らの人生の幕を引かれましたが、フィクションが自分を凌駕すると謳って小説を書いていました。
お母さんはその遺稿をまとめ、1冊の本として新風舎から出版をされました。
「トランス・トランス・フォーエバー」(櫻井まゆ)。
娘さんご本人によると、「自発性トランス」というものに半分該当するそうで、意識的ないし無意識的にトランス状態に入るそうです。
本書は、未完成ながら鋭敏な筆致に彩られ、随所に目を見張るような描写が感じられます。
平凡な日常の中のアブノーマルを描き出す感性と、心の障害ゆえの過敏さとの関わりは何とも言えませんが、
華咲く前の才能の夭折は、ことさら名残り惜しい想いに駆られるものです。