「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

あとがき(2)

2006年01月19日 15時45分56秒 | 「境界に生きた心子」
 
 心子をはじめ、表面的には解しにくい境界例の人の内面を思いなしていただけるよう、境界例について解説の章を巻末に設けた。

 しかし境界例全般に渡る説明は素人である僕の領分ではないので、必要限度内の記載に留めた。

 境界例や人格障害を詳述した本は、一般向け,専門書とも多数出ている。

 拙著を読まれた方が境界例に関心を持たれ、それらで理解を深めていただけるとありがたい。


 拙著は心子という一人の女性が、この世に生きた証を残すことが第一の役割だと思う。

 心子の足取りを書き記すことによって、彼女の生と死をより意義あるものにしていきたい。

 僕自身は彼女の真の苦しみを知ることはできず、傍らの立場から語らせてもらうだけだが、それが僕にできることだと愚考する。

 ご意見,ご感想をいただければ幸いだ。もし某かでも胸に感じていただけるものがあったら、望外の喜びである。


 人のために身を献じることをいささかも厭わなかった心子も、境界例の人たちが受け入れられる一里塚となることができれば、きっと心底から喜んでくれるに違いない。

 心子は、精神科医になって心の病に苦しむ人をたった一人でも救えたら、自分は死んでも構わないと悲願していた。

「あたしは、患者さんが心を休めていってくれる木陰になりたい。

 患者さんが癒されてそこを離れて行ったら、あたしのことなんか忘れていいの」

 それが心子の本望なのかもしれない。

(続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする