「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

あとがき(3)

2006年01月20日 20時38分49秒 | 「境界に生きた心子」
 
 苦しみのない人生は、人生の名に値しない。

 涙のない人生は、生きるに値しない。

 笑顔がなくては生きていけない。

 心子はそれらを一心に刻み込んでいったのである。

 心子は、小さいけれども、深く重い足あとを、くっきりと、いくつも残していった。

 この足あとを誓って消すことなく、いかにたどっていくか、それは僕が与っている務めだと思う。

 我々の心神のテーマを見つめ、愛情というものがどんなに大切であるかを知り、実践していくことが、心子の命に応えることになるだろう。


 僕の部屋には今、父母の遺影の隣に心子の笑顔が並んでいる。毎朝三人に手を合わせ、お祈りをするのが日課だ。

 月に一度、心子の墓前へ会いに行くのも楽しみな習慣になっている。

 今は穏やかに、平和に暮らしているだろう心子に、この本を捧げたい。


 二〇〇四年十月

                                稲本 雅之
 
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